子ども3人が東大理系合格! 算数の土台作りのため、幼児期からできること。日常の中の声かけや遊び方など、コツが満載!《幼児教室代表・きよみ先生発》

幼児教室しばた代表であり、3人のお子さんを東大理系に導いたきよみ先生。算数教育のプロである先生が語るのは、特別な教材ではなく、日常の中の小さな工夫でした。積み木や絵本、お風呂や食事の場面での声かけなど、身近な遊びこそが「算数に強い子」を育てる土台になるといいます。

幼児期から時計やカレンダーを使った取り組みをしていた

ーー3人のお子さんが東大理系に進まれていますが、幼い頃から取り組まれていたことはありますか?

きよみ先生の3人のお子さんは、全員東大理系へ進学。

きよみ先生:子どもたちが小さいときから、夫と「算数を楽しめる子になったら良いよね」「算数が得意になったら良いよね」という会話をしていました。算数ができると生活の中でも役に立つことが多いですし、社会に出るときの選択肢が増える。親としてできる限りのことをやってあげたいと思っていたので、幼児期から意識していました。

算数に役立つものは身の回りにたくさんあります。わざわざ知育教材を買わなくても、例えば時計を見て「今おやつの時間、3時だよね」「9時になったらもう寝ないといけないよ」と教えられます。12時だったら「パッチンってこうやったら12時だよ」と両手を上で合わせるなどして、体を使って教えると子どもたちが楽しそうに興味を持って取り組んでくれました。

そのときに、「3時だったら90度と270度だよ」と角度についても話したりもしました。全然わからなくても、子どもは「そういうものか」と思って聞いていてくれていましたね。

ーー時計以外には何かされていたことはありましたか。

きよみ先生:カレンダーを用意して、100均などで売っている数字のパーツを並べて置いていました。数字を置いて日付を理解したり、「日月火水木金土」と歌いながら曜日を理解したり。体や声を使うと楽しくできるので、歌をうまく使うといいですよ。

カレンダーには数字がたくさんあるので便利です。例えば今日が9月12日だったら「明日は?」と聞くと「13日、土曜日」。そこから「1週間は7日ある」と教える。さらに「先週は?」と聞いたら「5日、金曜日」みたいにセットで教えていました。

カレンダーがわかると「あと〇日保育園に行ったら、パパママと遊べる!」という安心感にもつながります。「〇日にテストがあるから勉強しよう」といったことも理解できるように。カレンダーで足し算や引き算もできますしね。こういった取り組みは3歳、4歳頃からしていました。

――その頃にはお子さんたちは「算数が得意だな」という感じはありましたか?

きよみ先生:「得意」というよりは、嫌がることなく「じゃあこれは?」と質問してくるから、きっと好きだったんだと思います。楽しんで取り組んでいたので「得意になりそう」という感じはしました。

――楽しく取り組むことで、興味を持っていったということですね。

きよみ先生:そうです。お散歩や買い物のときにも、キャッシュレスではなく「200円で好きなお菓子買っていいよ」といった経験をさせました。車のナンバープレートを見て「足したらいくつ?」と聞いたりも。家の中でも外でも意識して、私自身も楽しみながらやっていました。

親が楽しそうに関わると、子どもはまた遊びたくなる

理系には積み木やブロックが大事

――そうした対応は3人のお子さんごとに変えていたのでしょうか。

きよみ先生:基本的に「考える」ということはみんな好きでしたが、好きな遊びには個性がありました。

例えば長男でしたら、ルービックキューブとか名探偵コナンのタイピングゲームなど、目標を決めてそれを達成する遊びが好きでした。タイムや点数が出ると喜んでやるので、好きなだけやらせていましたね。

次男はボードゲームが好きで、自分で戦略を立てて勝負を挑むタイプでした。人生ゲームやオセロで長男や家族と対戦するのが好きでしたので、私たちも一緒に戦ってあげました。

長女は手先が器用だったので、ビーズや編み物、おままごとや人形で遊ぶのが好きでした。

ただ、将来もし理系に進みたいなら、積み木やブロックは大事な要素だと思っていて。長男や次男は勝手に遊んでいましたが、娘には意識して一緒に遊ぶようにしていました。積み木やブロックに人形を置いてみたり、遊びのバリエーションを提示すると興味を持って遊ぶので、とにかく私は楽しそうにすることを心がけました。

子どもの性格や興味に合わせて遊びや声かけを工夫。

5分でもいい。親が楽しそうに声かけを

――「親も楽しむ」がキーワードに感じます。

きよみ先生:そうですね、自分も子どもも楽しめるように意識していました。まずは親子で一緒に楽しむ時間をたっぷり作ることが大事だと思います。

子どもたちのために積み木コーナーを作っていて、遊ぶときには声かけもしました。
「この角、硬いね」「三角2つで大きい三角になるね」とか、「このお城、積み木何個でできてる?」「直方体2つを合わせると四角になるね」とか。「同じの作ってみよう」と言って一緒に作ったり、「これどうやって作るんだったっけ?」とボケてみたり。そういう関わりをすることで楽しさは全く変わってきます。

子どもはすぐ飽きるので長時間でなくてもいいんです。5分でも10分でも十分。大事なのは親子で楽しく遊び、それを続けること。そうすると自然と子どもは自分からまた遊びたくなります。

――運営されてる幼児教室では、どのような内容を教えられているのでしょうか。

きよみ先生:3歳の子から小学校6年生まで来てくれているので年齢の幅が広いんですけど、それぞれの年齢に合わせて、最短で実力がつく方法を私なりに考えて、声かけとスキンシップを大事にしています。

例えば小さい子であれば、プリントばかりではなく、遊びの中で考える力を育てたい。小学生の子には算数の問題解決や応用力をつけてあげたい。生徒は一人ひとり違うので、その子に合っている方法を意識して教えています。

算数ができると勉強の自信につながり、日常の楽しさも広がると思うんです。「算数って面白い」と思ってもらえるように、苦手なところは丁寧に教えて、できたときには大きく褒める。成功体験を大事にしています。

きよみ先生の教室の様子。

――算数が苦手な子は「もう嫌だ」となってしまうことも多いと思いますが、どのように対応されていますか?

きよみ先生:小学生の場合は、まずはどこが苦手かを確認します。今の単元がまだ理解できていなかったら、一旦前の単元に戻っても良いです。戻ることは決して悪いことではありませんので。または問題の量を減らしたり、簡単な問題をスラスラ解けるようにしたりして、できることを多くさせてあげると、苦手が克服できるようになります。

小さい子の場合は苦手というより、嫌いなものがあると思います。でもこの時期は、嫌いなものは無理にさせなくても良いです。でもその嫌いなものも、お子さまは楽しさを知らないだけの場合が多いので、私や教室の子たちと一緒に楽しみ方を教えます。

教室の子どもだけでなく、親御さんとの時間も大切にしています。会話が多いことが大事だと思うので、親御さんには「ここができるようになったから褒めてあげて」と伝えたり、「この辺が苦手だからプリントを入れておいたのでやってください」とお渡ししたりします。勉強のことだけでなく、人間関係や先生との関係などの悩み事もフォローできる場所でありたいなと思っています。

積み木、トミカを数える…遊びのなかで勉強につながることを積み重ねる

生徒一人ひとりに合わせて楽しく学べるよう工夫されているそう。

――算数に強い子に育てたいと思う親御さんもたくさんいらっしゃると思うのですが、幼児期から何を意識したらいいのでしょうか。

きよみ先生:がっつり勉強というのは、小学校に入ったらやらなければいけないことなので、幼児期は本当に“遊び”でいいと思うんです。

たくさん遊んでほしいなと思いますが、その中でも「この遊びが、ゆくゆくは勉強につながっていたんだ」と思えるようなものがいいと思います。遊びと勉強が分かれてしまうと困るので、境界線を感じさせないように。

例えば積み木でもそうです。積み木のプリントをするなら、まずは積み木で十分に遊んでいないと難しいですよね。後ろに隠れているものを想像することなども、積み木の遊びから入っていけます。いきなり数字にして点数をつけると嫌になってしまうかもしれない。だから、たくさん積み木で遊んだり、数字のマグネットで遊んだり、トミカを数えて「1台、2台」とやってみたり。遊びの中で学ぶことは本当にたくさんあると思います。幼児期には、そういう経験をたくさんしてほしいと思います。

お料理もそうですよね。一緒に台所に立って野菜を半分に切ったり、家族の人数分お皿を分けてもらったり。「一人ミニトマトを2個ずつ分けてあげて」「ケーキを6等分して配ってあげて」とか、そんな声かけの中で数に触れられる。難しい言葉を使わなくても、日常の中で自然に算数に関わる言葉を交わすことが大事だと思います。

遊びの中で数字の概念を身につけていく。

――では小学校前にやっておいた方がいいことはありますか?

きよみ先生:小学校に入学するときに、その学習範囲がある程度理解できることは大切だと思います。

自分の名前は書けること。数字なら1から10まで読めて書けること。繰り上がりまでできなくてもいいけれど、指を使ってでも足し算が少しできるようになっていると安心です。

多くの子はそのくらいできていると思いますが、中学受験を考えていたり「もっと賢くなってほしい」と思ったりする親御さんも多いと思います。そういう場合は少し先取り学習をして、100までの数字の読み書きや、数の合成・分解を理解できるといいですね。100玉そろばんを使って「10は1と9、2と8」というように学ぶこともできます。

時計も読めるといいと思います。例えば「3時半は、4時まであと30分」と考えられるように。それから繰り上がりの計算もできるようになるといいですね。

そういう力をつけるには、やっぱり遊びの中で積み重ねていくことが大事です。時々やるのではなく、習慣化すること。例えば時計を教えるときに「角度」を一緒に教えてあげる、そんなプラスアルファを積み重ねると自然に覚えていきます。

数と図形に強くなる遊びはこれ!

――数に強くなる遊びや図形に強くなる遊びを具体的に教えていただけますか?

3歳くらいまで:パズル、折り紙、こむぎねんど

きよみ先生:おすすめはパズルです。ピースをはめるときに「あと〇個で完成するね」「〇個はまったね」と数を数える声かけをする。マグネットの数字をボードに置くときも、数えたり、偶数と奇数を分けたりすることもできます。100玉そろばんを指で動かしながら、1対1対応を体感するのもいいですね。「1は1つ」「2は2つ」と、数の感覚を身につけることができます。

図形に強くなる遊びなら折り紙です。四角い折り紙を三角に折るだけでもいい。「ピーッとまっすぐに折ろう」と言うと、子どもは楽しんで取り組みますよ。折ったあとに広げると「三角が4つできたね」と数や形の理解にもつながりますし、線を書き足してみるともっとわかりやすい。折り紙を通して三角や四角を覚えることができるんです。

あとは、こむぎねんどもいいと思います。丸を作って縁を作ったり、棒を作ったり、ちょきんと切って半分にしたり、こんにゃくや豆腐を見て四角を作ってみたり。立体感覚につながります。

3歳〜未就学児:トランプ、プリント、すごろく、箱など

きよみ先生:「数に強くなる」ために、うちの子の場合はトランプをたくさんしました。特に、1から10までのトランプを順番に足していく「足して10ゲーム」という遊びは親子で対戦しました。遊びながら計算が速くなれるのでオススメです。
他に「スピード」というゲームもよくやりました。これは、2人で向かい合ってトランプを出し合い、場のカードより 1つ大きい or 1つ小さい数字 をすばやく出していくゲームです。

もちろんプリント学習も大事です。ただ、ひらがなや計算のプリントだけでなく、迷路、点つなぎ、仲間分けなどの右脳系のプリントと組み合わせると、楽しみながら学びにつながります。手先を使い、鉛筆に少しずつ慣れることも大切です。

すごろくもおすすめです。市販のものでもいいですが、自分で作るともっと楽しい。「ここで休憩」「ここで踊る」「好きな食べものを言う」など、マス目を工夫できます。コマを進める中で順番や足し算、戻るときは引き算にもつながります。サイコロも展開図から自分で作ると勉強になりますよ。展開図は11種類ありますからね。

そして図形に強くなるには、やっぱり折り紙です。対称や辺、頂点の感覚を学べる。切ったらどうなるかもわかる。折り紙は本当にいい遊びです。

折り紙は幼児期から児童期まで遊べる万能アイテム。

我が家は、廃材の箱でもよく遊びました。ロボットやピタゴラスイッチのようなものを作ったり、家を作ったりして、面や辺や頂点を教えていました。面積についても自然に触れられますし、図形に近い遊びになりますね。

大事にしていたのは「算数につながる声かけ」です。「すごいね」「かっこいいね」だけではなく、「頂点」「辺」「面積」など、具体的な言葉を日常で使うようにしていました。子どもはわかっていなくてもいいんです。「お母さんがよく言っているな」と片隅に残れば、小学校で習ったときに「これ知ってる」となる。私はそういうスタンスでした。

日常生活のなかのちょっとした声かけで十分

――忙しくても声かけをできるコツはありますか?

きよみ先生:働いているお母さんは時間が限られているので、日常生活の中でできるだけ算数につながる声かけをしていくと良いと思います。
でももしかしたら、「算数につながる声かけ」と考えると、ちょっと難しいイメージがあるかもしれません。であれば、そこまで難しく考えず、まずは「実況中継」のような気持ちで声かけすると良いと思います。

例えば、エアコンのリモコンで「何℃にしてみて」とか、ご飯を食べているときでも「半分こだね」「2分の1だね」とか。
お風呂の中でもできますよね。計量カップを使って「どれくらい入れたらいっぱいになるかな?」と試したり、お風呂を上がるときに数えたり。普通は「1から10まで数える」かもしれないけど、うちは逆に「10からカウントダウンして0で上がろう」とかやっていました。

こんな感じで、普段の生活の中で目につく数字を、そのまま会話に入れて実況中継するだけでよいです。最初はお子さまが理解できなくても構いません。 お母さんが楽しく声をかけているうちに、自然と算数の感覚が身についていきます。

忙しい毎日の中でも、生活そのものを学びに変えられます。それが「実況中継スタイル」の声かけの良さです。

こうやって何気ない日常を学びの時間にすることができたら、忙しい中でも時間を有効活用できるようになります。無理して勉強時間を増やそうとしなくても大丈夫です。

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お話しを伺ったのは

きよみ先生 幼児教室しばた代表

胎教から子育てをスタートし、家庭での関わりを大切にしながら、3人のお子さん全員東京大学理系へと導いた算数教育のプロ。長男は灘中・灘高校を経て東大理系に進学し、算数オリンピック金メダルを獲得。次男・長女もそれぞれ難関中学を経て東大理系に合格するなど、家庭教育の実践が実を結んできた。

Instagramでは算数に強い子を育てるための、手作りの知育ゲームや算数の勉強法、中学受験情報など発信、子育ての相談にも乗っている。

取材・文/酒井千佳

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