算数オリンピック受賞者は、みんな「国語力」が高い!
――『ヒマつぶしドリル』(Gakken)シリーズには「算数と国語の力がつく」とありますが、田邉先生が2つの力を同時に伸ばすことを重視されるのはなぜですか?
田邉先生:算数も国語も重要な力ですが、算数オリンピックでメダルを取った子たちは小学校1年生の時点でとにかく漢字が読めたんです。書くことはそこまでできなくても、たくさん漢字が読めるから本が読める。図書館でいろいろな本を借りて読んでいたら、算数が面白くなって、私が運営するりんご塾に入ってきたという子も多いです。
小2で高校生程度の漢字まで読める子もいて、そういう子はどんな本でも読み放題なんですよね。どんどん自分から知識を吸収できるので、授業を受ける前に予備知識が充分にある。あとは知識を関連づけるだけなので、非常に学習効果が高く、理解のスピードも速いです。
理科、社会でも本を読めると世界が広がります。ですから、算数で計算問題をたくさんやるよりも、まずは漢字を読めるようにすることはとても重要だと思っています。

――まだあまり漢字を読めない子は、どんな本から始めるのがよいでしょうか?
田邉先生:まずはルビが振ってある本を読むことですね。子どもたちの好きな『ドラえもん』の漫画もよいと思います。あと、実は『こち亀(こちら葛飾区亀有公園前派出所)』には昭和から平成の歴史が詰まっているので、すごく勉強になるんですよ。
――算数と国語、どちらかに力の偏りがある子は、どのように勉強するのがよいでしょうか?
田邉先生:算数が好きな子には本や漫画をたくさん読んで語彙を増やし、漢字を読めるようになってほしいです。反対に、国語はできるけど算数が苦手という子は、低学年ならそろばんをおすすめしています。
算数ができないとか、計算が苦手な子は、頭の中で数を動かせていないんですよね。そろばんは玉を動かすことで、桁や繰り上がりも目に見えてはっきりしますし、数の大きさもわかります。それに、そろばん塾はスモールステップで級が上がったり、賞状をもらえたりと、達成感を得やすいのもよいところだと思います。
――算数オリンピックに入賞する子には、漢字が読めること以外にも何か共通点があると感じますか?
田邉先生:小学校に入る前くらいから、熱中するものがあった子ですね。恐竜の名前をたくさん知っている、ポケモンをたくさん覚えている、宇宙や星、電車や駅に詳しいとか、何かに熱中して知識体系を持っている子どもたち。そういう子たちが小学校1、2年生くらいで算数がブームに来ると没頭して、その結果としてメダリストになるというケースが多いと感じます。
パズルを解いて、算数と国語の力がアップ!? 『ヒマつぶしドリル』とは
――先生が執筆された『ヒマつぶしドリル』(Gakken)シリーズは子どもたちに大人気ですが、どんな特徴があるのでしょうか。
田邉先生:『ヒマつぶしドリル』(Gakken)シリーズは計算ドリルや漢字の書き取りなどではなく、パズルなどを通して楽しんで学習ができるようにしたところが最大の特徴です。国語は語彙を増やすこと、算数は計算力ではなく、思考力を鍛えることを目指しています。


田邉先生:たとえば小学校4年生くらいになると、国語の授業でいきなり四字熟語が出てきますが、子どもにとっては無味乾燥で、ただ覚えるだけのものになってしまうんです。『ヒマつぶしドリル』ではそういったものをパズルやなぞなぞで解いていくんです。
これは「体験」なんですよね。自分がパズルを解いて見つけた四字熟語は、読み方や意味を知りたくなるし、その言葉自体も自然と受け入れられるんです。それに、ゴールにたどり着くまでに何回も言葉を繰り返しているうちに、親しみが湧いて、なんだか覚えてしまうんですよね。
ドリルの全面にあるイラストも親しみやすく、ほどよいバランスになっているのもポイントです。特にセリフの部分は「子どもにこびない」ということを編集長と意識して作りました。設問はどれも手加減せず、全力で作っています。
――『ヒマつぶしドリル』のレベルの選び方や、おすすめの活用法があれば教えてください。
田邉先生:「やさしめ」は小学1・2年生ぐらいからを対象にしていますが、面白くて興味があるなら学年にとらわれずに、上の学年の語彙や算数知識をどんどん体験として取り込んでもらいたいという意図もあります。
長期休みのときなどは、このドリルを3、4ページやってから宿題や学習に入るのがおすすめです。りんご塾でも、最初にこのようなパズルのプリントをウォーミングアップとして使っています。
勉強に苦手意識を持たないためには、先取り学習も有効
――りんご塾でも実際にパズルの問題を使われているのですね。
田邉先生:80分授業の中で最初の30分くらいが、『ヒマつぶしドリル』のようなパズルの教材ですね。次の30分で算数検定などの勉強をして、最後の20分で積み木やタングラムのような具体物を使います。実際に手を動かすことですごく盛り上がりますし、「もう1回やる!」という子も多くてなかなか帰りたがりません(笑)。
りんご塾では、「算数検定」や「算数思考力検定」に加えて、塾の全国模試も受けさせています。100点を取って「全国1位」になると、今後の人生においてもすごく大きな自信になるんですよね。算数オリンピックで見たこともないような難しい問題が出てきて、誰の力にも頼らず、一人で問題を解かなくてはいけないという場面でも、自分を支えてくれるのが「全国1位」という自信だったりするんです。

――子どもが勉強に苦手意識を持たないようにできることはありますか?
田邉先生:反則といわれるかもしれませんが、1年でも2年でも前倒しで勉強してしまうことですね。どうしても、少なくとも平均より上にいなければ劣等感のようなものを植え付けられてしまうんです。反対に自分は他の人よりできると思うと、期待に応えるためにも頑張るので、それがいい循環になっていくんです。
厳しいですが学校のシステム上、40人のクラスで、20人は劣等感を植え付けられ、上の20人は得意だと自覚する仕組みになってしまっています。ですから、理科でも社会でも、音楽、体育でも、何か1つだけでも人より秀でているものがあれば、その自信を持ちながら生活することができると思います。
中学受験でも無理やり偏差値の高い学校に行くよりも、自分が活躍できそうな学校を選んだ子が伸びていきます。少し偏差値が低くても理数系クラスや特進クラスのようなところに入ると、6年後の大学受験には非常に有利に働くと、経験則では思っています。
――『ヒマつぶしドリル』の「はじめに」では、「どんな子どもにも天才性が備わっている」と書かれています。子どもの持っている天才性を見つけ、それを伸ばすために親はどんなことができるのでしょうか?
田邉先生:僕もいつも考えるのですが、天才性って何でも受け入れて吸収する力なのかなと思っています。赤ちゃんはどんな言語でも、周りの環境から自然に話せるようになりますよね。ですから、親は強制しないことと、子どもの自信を潰さないことと、期待しすぎたり、がっかりしたりしないことが大切だと思います。家庭内が安心安全な場所であり、親が上司や監督ではなく、裏方、マネージャーのような存在であってほしいです。
『ヒマつぶしドリル』(Gakken)シリーズをチェック!

累計40万部突破したという『ヒマつぶしドリル』(Gakken)シリーズ。遊びのような感覚でどんどん取り組めるのが魅力です。気になる方はぜひ手にとってみてください。
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お話を伺ったのは

1968年、滋賀県生まれ。モーツァルトとサンバが好きで声楽家を志し、名古屋音楽大学に入学するも中退。その後、ニューヨーク市立大学とペンシルバニア州立大学で学ぶ。2000年に塾講師の仕事に就くと、教えることの面白さに開眼。その3か月後には、滋賀県彦根市に自身の塾、りんご塾を開校する。
りんご塾では「算数オリンピック」「そろばん検定」「思考力」を重視した指導を行い、毎年のように算数オリンピックのメダリストを輩出するという快挙を遂げている。①独自のパズル教材、②授業、③立体パズル教材の3つを組み合わせたそのメソッドは、子どもが夢中で取り組み学力も上がると、保護者からの支持を集め、2025年3月現在では約290教室が開校されている。
また、2022年4月に発売された著書『天才!!ヒマつぶしドリル』(Gakken)シリーズは、累計発行部数が40万部を突破し、業界空前の大ヒットとなっている(25年6月現在)。
「難しいことを易しく、易しいことを深く、深いことを面白く」を教育信条に独自の教材を日々創り出す、高い人間性と実績を兼ね備えた、いま塾業界・教育業界でいちばん熱い先生の一人である。
りんご塾 HP
Instagram @ringo_juku
取材・文/平丸真梨子