「女子校」のデメリットって?【洗足学園中学校・高等学校】に直撃!ユニークな学外活動“他流試合”や企業・大学との提携プログラムなどから育む人材育成の考え方

2024年に創立100周年を迎えた女子校「洗足学園中学校・高等学校」。
高校3年生まで全員数学必修体制をとっていたり、答えのない問いを生徒同士で考える時間があったりと、社会に出てから活躍するためのユニークな教育を行っています。
前編では、同校の校長・宮阪元子先生に教育理念や具体的なカリキュラム、そして、女子校としてのメリットについてお話を伺いました。
後編では、女子校のデメリットについてどのように捉えているのか。また、学校生活の中で育まれている同校の生徒たちの気質について教えていただきました。

前編では校風や女子校であるメリットなどについてお伺いしました

【洗足学園中学校・高等学校】東大、医学部などへの圧倒的進学率!高3まで全員数学を履修、女子の発達特性を活かした教育など“女子校”ならではのカリキュラムとは?
目指すは、激変する未来社会にも輝き続けられる人材育成 ――「洗足学園中学校・高等学校」は創立以来、それぞれの時代で、女性が生きていく上で必...

女子校で形成された価値観は社会へ出てからさらに輝く。自立心旺盛で物怖じしない気質が育つ

――――前半では、中高6年間を通して女子だけで学校生活を送ることで得られるメリットについて伺いました。では、デメリットはどのように捉えていらっしゃいますか?

宮阪先生(以下、宮阪):女子だけで過ごすので、ある一定の同じ価値観に偏りがちな部分は否めません。しかし、女子だけで培われた価値観が、学園の外へ出て男子とコラボレーションを行った際に、とてもよい化学反応を起こします。異なる価値観に出会い、それを分かち合うことで、お互いを高め合うことができるのです。

それと、これはよく言われることなのですが、女子校出身者は、男性に頼らず生きる志があって自立心が旺盛。そして、大学や社会へ出た際に、物怖じせずに自分の意見をしっかり述べる女性が多いと言われます(笑)。

6年間、男子に頼らず何もかも女子だけで課題をクリアするのが生徒たちにとっては通常ですので、自然にそうした精神を育んでいくのだと思います。しかし、このような精神は、性別に限らず、人生を生きていくうえでとても大事なことだと思います。

――私がこれまで取材でお話を伺った保護者さんからは、男子に気を使わないで生活できるので、お行儀が悪くなるのではないかと心配している方もいましたが、その点はいかがでしょうか?

宮阪:それは、学校の雰囲気次第なのではないでしょうか。本校の生徒を見ていると、多くの生徒に品性が備わっていると思います。

宮阪:以上のような考えを前提にした上で、本校のマナー教育についてあえて申し上げますと、茶道や華道、書道など日本人の価値観の中で必要とされるものも身につけた上で社会へ出ていく授業も行っています。具体的には中学3年間は、茶道や華道、書道の先生を招いて学ぶ機会を設けています。

300を超える「他流試合」(学外活動)。クラブ活動も多彩

――現代は、グローバルな社会進出が求められていますから、思春期という多感な時期に日本人としてのマナーやアイデンティティーを学ぶことができるのは良いですね。ほかに「洗足」ならではの行事や活動はありますか?

宮阪:「他流試合」が活発なのも本校の大きな特徴です。模擬国連に代表される学外交流活動や研究プログラムへの参加など、300を超えるコンクールや学外セミナーなどに生徒らの希望によって参加しています。以前は高1生ぐらいからの参加が多かったのですが、先輩たちの影響が大きいのか、年々、低年齢化してきていまして、中学2年生ぐらいでも学外活動を希望する生徒が増えています。

他流試合
他流試合のひとつ「高校生ビジネスプラン・グランプリ」

宮阪:本校では、高校進学を前に中学3年生全員に校長面接を一人ずつ行っています。中学3年間でどのような学びがあったのか、また、高校進学に向けてどのような目標や思いがあるかを聞いていおりますが、「勉強をしっかりしたい」ということと共に、「学外活動をもっとやりたい」と多くの生徒が話してくれます。

留学をはじめ、数学オリンピックや化学オリンピック、国際地学オリンピックへの出場(メダルも受賞)など、これまで多く生徒が参加していますが、他流試合による国内外の同世代との交流や学びは、生徒たちの視野を拡げ、意識を高める機会となっています。

――放課後のクラブ部活動に関しては、どのような形で行われていますか?

宮阪:本校の部活動は、「競技性より生涯性」を重視した活動として位置づけ、「生涯教育の一環」として捉えています。そのため競技大会で上を目指すというよりは、クラブ活動の中での先輩・後輩といった人間関係の学びや、自分にとって本当に楽しめる活動を探してもらいたいと考えています

現在、運動部は14、文化部は13、同好会が7つ。それに2年前からですが、研究会が5つ存在していますので、生徒1人ひとりのさまざまな嗜好に対応できていると思います。

人工芝の広大なグラウンドも完備
人工芝の広大なグラウンドも完備

宮阪:上記の中で、あえて言及するとしたら、特別団体として活動している「洗足学園フィルハーモニー管弦楽団」は「洗足」ならではの活動です。3月の定期演奏会などに向けて、通常練習ではプロの先生方から指導をしていただき、定期演奏会では、洗足学園音楽大学芸術監督・特別教授である秋山和慶先生に指揮をしていただいています。この活動は、毎週土曜日に行われているので、通常の部活・同好会に所属しながらの活動が可能です。現在は200名前後が所属しています。

俳句甲子園
俳句甲子園の出場作品の掲示

宮阪:また、「研究会」は、生徒たちが設立を希望して校長である私に進言し、それを学校が認めた場合に活動するものです。具体的には、eスポーツや俳句、日本語ディべート、数学の研究会などがあって、どれもとてもユニークです。俳句研究会に関しては、2023年・2024年の2年連続で俳句甲子園へ出場し、強豪校を打ち破り、見事賞を獲得しています。

将来の夢を具体的に描けるキャリアプログラム

――ほかに、特色のある活動はありますか? 

宮阪:キャリアプログラムの一環として、講演会を各学年、年に1~2回開き、さまざまなジャンルで活躍している方々に登壇していただいています。また、生徒の保護者に講師になっていただいて、自身の仕事について語ってもらう時間をクラスごとに設けています。自衛隊の航空部隊の方が国を守るとはどういうことか語ってくださったり、建設業の方で、被災地の歴史的建築物の修復に携わった経験を語ってくださったり、ほかにも、弁護士や、会社の人事担当の方など、さまざまな仕事について語ってくださっています。

講演会も保護者による経験談も、生徒たちはとても熱心に耳を傾けていて、会が終了したあとも積極的に質問をしています。これらの方たちのお話から将来のさまざまなキャリアを描いているのだと思います。

激変する未来社会を生きる人材育成を、家庭と一体となって推し進めます

――これまでお話を伺って、「洗足」には勉強一辺倒ではない学びがたくさん用意されていることがわかりました。最後に、中学受験を考えている「HugKum」読者の保護者の方へメッセージをお願いします。

宮阪:「中学受験は可哀そうだ」という意見がありますが、私はそういうことは全くなく、大きな価値があると思っています。中学受験で身につけた知識は学力の土台の土台となり、それを小学生時代に一生懸命身につけることは良いことだと思うからです。ですから、自信をもって中学受験に向かっていただきたいですね。

洗足学園中学高等学校 校長・宮阪元子先生
洗足学園中学高等学校 校長・宮阪元子先生

宮阪:また、「洗足」を受けたいという親御さんから「うちの子は消極的なのですが、大丈夫でしょうか?」という質問をよくいただきます。でも、それは心配ありません。確かに積極的な生徒が多いですが、1学年250名の誰もが積極的で活動的であるわけではありませんそういう積極的な子の活動を陰で支えている子、見守っている子もいて、その子たちもそれを通して大きな学びがあります。ですから、どんなお子さんでも、本人が本校を気に入って、入学したいと言ってくださるなら、ぜひ一緒に過ごさせていただきたいと願っています。

前編でもお話しましたが、本校が目指しているのは〝激変する未来社会にも輝き続ける人材育成〟です。そのため私たち教職員は設立からこれまでの間、常に最先端のものを生徒たちに触れさせたいと願ってきました。

現在は、企業や大学とも連携し特別授業やAIプログラムの活用も行っています。また、情報通信技術(ICT)に力を入れています。いいものだと思ったら、来年まで待たずにどうやったら教育に取り入れられるかを、常に教職員が一丸となって考えています。

走査型電子顕微鏡
髪のキューティクルまで見えるという走査型電子顕微鏡。生徒の学びのために導入したそう。

宮阪:よって、本校が提供する学びは、常に、少しずつ変化しています。そのため、本校では紙による学校案内は制作していません。「洗足」の‶今〟はホームページをご覧いただけたらと思います。このような理念に共感していただき、ぜひ保護者の皆さんとチームになって進んでいきたいと思います。

【洗足学園中学高等学校への受験を検討されている保護者の方へ】

「洗足学園中学高等学校」では、毎年12月、入学希望者の小学校6年生に向けて「入試問題体験会」を実施しているそう。当日は入試当日と同じ形式で、生徒たちを試験会場へ導入。模擬試験を体験したあと解答の解説も。入試当日さながらの緊張感を味わえる貴重な機会です。入学希望者は必見!

校風や授業カリキュラムがわかる前編はこちらから

【洗足学園中学校・高等学校】東大、医学部などへの圧倒的進学率!高3まで全員数学を履修、女子の発達特性を活かした教育など“女子校”ならではのカリキュラムとは?
目指すは、激変する未来社会にも輝き続けられる人材育成 ――「洗足学園中学校・高等学校」は創立以来、それぞれの時代で、女性が生きていく上で必...

洗足学園中学高等学校

「洗足学園」の創設は1924年(大正13年)。女子教育者にして、敬虔なクリスチャンであった前田若尾が旧平塚村(現・東京都品川区)の自宅に私塾(裁縫塾)を開いたのがはじまり。2002年に現在の校名「洗足学園中学高等学校」に改名。

社会で活躍する人材育成のため、「高い学力」「豊かな感性」「コミュニケーション能力」「広い視野」を養う教育を目指す。

現在、1学年6クラスで250名程度、中高6学年では約1500名が在籍。その進路は国内外を問わず幅広く、医学部医学科への進学者も10名を超える。

「洗足学園」公式ホームページは>>こちらから

取材・文/山津京子

編集部おすすめ

関連記事