目次
座談会に参加したママたち
さくらさん:和歌山県在住。小1・小4のママ。投資は未経験。連載を読んで興味が湧いてきたものの、まだ怖さも。
ちっちさん:神奈川県在住。中3、中1、小2、3歳の4人のママ。投資は未経験。夫の会社が企業型DC(企業型確定拠出年金)を導入することになり、いい機会だと思い投資を勉強中。
naoさん:愛知県在住。小2の女の子のママ。iDeCo(個人型確定拠出年金)を始めたばかり。口座を開設して投資はこれからというタイミング。
Reiさん:東京都在住。3歳と1歳のママ。前職は投資銀行勤務で、今はコンサルティングファームに勤務。自分で投資を始めたのはつい最近。NISAを数カ月前にスタート。
お悩み1「子どものお金の勉強…どうしてる?」
子どもに早いうちからお金の勉強を始めさせたいのですが、いつから、どんなふうに始めたらよいのかなと悩んでいます。
(naoさん)
naoさん:投資の前に一つ聞きたくて。みなさん、子どもに何かさせてますか?長女はゲームの中での買い物すら計画性がなくて心配です(笑)
さくらさん:お金を渡して「これで買ってきてね」とおやつの買い物を子ども自身にさせることがあります。
ちっちさん:我が家はたくさんお菓子を買ってきて、自宅で「駄菓子屋さんごっこ」をします。小2の息子は計算がまだ苦手ですね。
Reiさん:3歳と1歳なのでお金の教育はまだですが、誕生日やクリスマスのプレゼントとして子どもの口座でNISA投資をしています。
アセットマネジメントOne 未来をはぐくむ研究所長 伊藤雅子さん(以下、伊藤さん):みなさん、すごいですね。よく「お金の話は何歳くらいからしたらいいですか」と聞かれるのですが、唯一の正解があるわけではありません。ちょっと説明しますね。
子どもの金銭感覚を養う4つの貯金箱
伊藤さん:私自身は、何かを買うためにはお金が必要だと何となくわかるようになったら、積極的にお金の話をしていいのではないかと思っています。具体的なお金の使い方になると、小学3~4年生くらいからが理解しやすいでしょう。
子どもの金銭感覚を養う具体的な方法として提案したいのが、「貯金箱を4つにわけて管理する」ことです。分け方は、(1)貯めるお金、(2)自分のために使うお金、(3)人のために使うお金、(4)増やすお金の4つ。実際に4つの貯金箱を用意して、お金を振り分けていきます。実はアメリカではマネーリテラシーを教えるときに、まさにこの4つの目的に区切った豚の貯金箱を使ったりするんですよ。まずはある程度(1)を貯めてから、(2)や(3)として使い、残った分を(4)として増やす分に回す順序がわかりやすいと思います。キャッシュレス決済は、お金を使っても減っていることが実感しにくいので、小さな子どものお小遣いは現金で渡すほうがおすすめです。

伊藤さん:この方法は、「ニーズ(必要なもの)」と「ウォンツ(ほしいもの)」に対する感覚を養うきっかけにもなります。必要なものは(2)から出していいけれど、ほしいものは(4)でお金を増やしてから買う、など使い分けもできます。
お金の増やし方を子どもに教える方法
伊藤さん:実際に貯金箱に入れておくだけではお金は増やせませんので、お金の増やし方を手軽に学べる方法を参考としてご紹介します。
◆キッザニア オンラインカレッジ「ファンドマネジャー」コース
アプリのダウンロードは無料。資産運用会社の「ファンドマネジャー」の仕事を、動画・トレーニング・ワークショップの3つのコンテンツで学べます。「投資信託」を長期で運用してお金を増やすことや、投資が世の中を元気にすることに貢献できることも理解できます(※推奨年齢は6~15歳)。
詳しくは>>こちら
◆アセットマネジメントOne 未来をはぐくむ研究所|未来をはぐくむ・キッズ
お金の誕生から投資の仕組み、ファンドマネジャーの仕事まで学べる小学生向けのサイトです。お金のクイズなどを交え、わかりやすく説明しています。
詳しくは>>こちら
伊藤さん:お金の勉強は、一人一人が幸せで豊かな人生を送るための手助けになるものです。決して小手先のテクニックを教えるものではありません。何より大事なのは、大人がしっかり働く姿や意思を持ってお金と付き合う姿勢を見せること。そこから子どもは自然に学んでいけます。
さくらさん:お金の話に子どもが興味を持ってくれるかどうか…。
伊藤さん:「今持っているお金を増やす方法があるとしたら、知りたくない?」なんて聞いてみると、意外に興味を持ってくださるお子さんも多いみたいですよ。
お悩み2「リスクを考えるとやっぱり怖いんです…」
リスクを考えると、やっぱり投資は怖いのですが、どのように考え方を変えたらいいでしょうか?
(ちっちさん)
ちっちさん:投資は増えることもあるけれど、当然減ることもありますよね。どうしても減るのは嫌だなと思ってしまいます。
naoさん:私もiDeCo口座を開設したものの、まだどの銘柄を買うか決められていなくて…。
Reiさん:私は投資をしていますが、画面を見ると一喜一憂しちゃうので、見ていません。30年後に増えていればいいな、くらいに思っているので、あまり怖さはないですね。
伊藤さん:まずお伝えしたいのは、資産形成は貯金と投資で達成できればよいということ。貯金で十分なら、あえてドキドキしながら投資をしなくてもいいんですよ。ただ、貯金だけでは将来の不安があるなら、やはり投資が選択肢に入ってきます。
子育ても投資もリスクをとらなければリターンはない
伊藤さん:投資でお金を増やそう思うと、どうしても損失が怖くなります。でも、背伸びをしすぎず、自分の人生を豊かにできる程度を目標にして、少額を積み立てていけば、多少のアップダウンはあっても、それほど怖いものではありません。
そもそもリスクを取らなかったらリターンもありません。人生も同じです。たとえば出産も「もし何かあったら」という心配があまりに大きくなったら選択できなくなるかもしれませんし、1円たりともお金を減らしたくないと思ったらおそらく投資はできないでしょう。
世界経済がこの先、衰退の一途を辿ると思うなら投資はしない方がいいですが、私はそうは思っていません。途中のアップダウンはあっても、世界経済はまだまだ成長すると考えています。投資で大切なことは、この先の世の中の成長を信じられるかどうかです。
それに自分で働くだけではどうしても息切れしてしまいますよね。自分の代わりに、お金を投じた投資先の企業(=他人)に働いてもらうと考えてみてはどうでしょうか?それから、ときにはお金を手放す勇気も必要です。子どもを留学させるのは怖いけれど、大きく成長して帰ってくるだろうと期待するのに似ていると思います。
お悩み3「どうして株価が変動するかよくわかりません…」
そもそもなぜ株価は変動するのでしょうか?投資を始めた人がみんな資産が増えたら、それによって損をする人はいないのですか?
(ちっちさん)
ちっちさん:そもそもなぜ株価が変動するかわからないんです…。
伊藤さん:確かにイメージしにくいですよね。ちょっとこの絵を見てください。
株式投資はみんながプラスになる好循環もつくれる
伊藤さん:企業が新事業や商品開発などのためにお金を集めようとするときの方法の1つが、株式(株)の発行です。企業は株を発行し、株主になって資金を出してくれる人を募ります。株の発行には上限があり、無尽蔵には発行できません。一定量が売り出された後は、株を買った人が手放すタイミングで、その株をほしい人が買います。
売買は個人的なやりとりではなく、証券取引所を通じて行われます。株価の変動は、この時の売りたい人買いたい人のバランスで決まります。たとえばある企業の成長に期待して「この会社の株主になりたい」という人が増えれば、株価は上がっていきます。魚や肉の相場と同じ。買いたい人が多ければ値段は上がり、売りたい人が多ければ値段は下がるのです。

企業が実際に成長してリターンが株主に分配されれば、その分は株主みんながプラスになります。でも、買いたい人が全員その株を買えるわけではないですし、投資した企業が必ずしも成長するとは限りません。売買で損をする人もいます。ただ、そもそも株式投資は、投資家も企業もみんながプラスになる好循環を生み出せる仕組みだということは覚えておいてください。
お悩み4「学資保険をしているけど、投資も必要?」
学資保険を積み立てていますが、さらに投資もしたほうがよいのでしょうか?
(さくらさん)
さくらさん:今、学資保険に入っている人って、他にいますか?
ちっちさん:上の2人だけ。下の子の時は「学資保険より自分で貯金したほうがよい」と言われてやっていません。
伊藤さん:考え方はいろいろありますが、学資保険はあくまで「保険」です。保障として捉えればありですが、運用商品としてはお得ではない、というのが私の意見です。
教育費は仮のコースを決めて逆算する
伊藤さん:すでに生命保険に加入されている場合は、保障が重複してしまう可能性もありますし、学資保険にこだわらなくてもよいのではないかと思います。
それから、さくらさんのご質問の「学資保険に加えて、さらに投資が必要か」に対する正解は一人一人違います。それは、そもそもかかるお金が人によって違うからです。
伊藤さん:国公立か私立かで、学費は数百万円の差が出ます。オール国公立を目指すのか、私立も視野に入れるのか。そもそも学費は親がすべて負担するのか、奨学金も活用するのか。まずは仮のコースを決め、逆算して必要な金額に足りそうかを判断し、足りない分はどう準備するかを検討していくのがよいでしょう。
たとえば児童手当を0歳から18年間貯め続けると、合計で約240万円になりますから、これだけで国公立大学の学費程度はまかなえます。もし「まだ足りないな」と思った場合は、たとえば「NISAを使って、毎月これくらいの金額を、このくらいの利回りを目指して積み立てていこう」といった具合に検討できます。
よく「平均は?」「みんなはどうしているの?」と聞かれますが、地域差も大きいですし、ご夫婦でも考え方がわかれるところです。
さくらさん:娘が10歳なのですが、教育費のために投資を始めるのは遅いですか。
伊藤さん:教育資金に限定せず、結婚資金も兼ねて貯めていってもよいですね。10年くらいで増やすなら債券などを中心に、安全性が高い資産で学資保険より高めのリターンを狙うのも手です。
今回は、実際に投資を始める直前までの素朴な疑問に回答しました。次回は、実際に始めたばかりの人がつまずきやすいお悩みに答えます。配信をお楽しみに!
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プロフィール

個人の資産形成、ファイナンシャル・ウェルビーイングや金融経済教育の分野における啓発・普及活動を目的として、2023年10月にアセットマネジメントOne内に未来をはぐくむ研究所を設置、初代所長に。
アセットマネジメントOne未来をはぐくむ研究所のHPは>>こちら
構成/古屋江美子 撮影/五十嵐美弥