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夏休みに生まれた妹を自由研究のテーマに
髙橋凜さんの作品タイトルは「こんにちは赤ちゃん~いもうとのたんじょうみっちゃくきろく~」。ちょうど夏休み中に妹が生まれることがわかり、自由研究として赤ちゃんのお世話や調査をすることにした凜さん。赤ちゃんが生まれる前から事前学習をし、生まれてからは夜中も起きてお母さんとお世話を頑張りました。凜さんの作品について、審査会では「感動した」「涙が出る」との声もあがっていました。
――このテーマを選んだのはなぜですか?
凜さん:夏休みに妹が生まれることがわかったから、やらなきゃもったいないと思ったのと、赤ちゃんのお世話を自分でもできるようになりたいと思ったからです。
――妊娠や出産、赤ちゃんのこと、産院で使っているモニターの名前まで載っていて驚きました。どうやって調べましたか?
凜さん:助産師のお母さんと、本や図鑑で一緒に調べました。わからないことはお母さんに聞くこともあったし、ドラマの「コウノドリ」も何度も観ました。
――「コウノドリ」は自由研究のために見たのですか?
凜さんのお母さん:赤ちゃんが生まれてくるとわかってから、勉強すると言って観ていました。命に係わる緊迫したシーンもあるのですが、本人は怖がる様子もなく、出産について詳しくなったようです。

――全部で41ページという自由研究は、たくさんの写真や文章で構成されていました。大変だったことはありますか?
凜さん:赤ちゃん日記(授乳や排せつ、睡眠の時間や回数を記録したもの)をピアノの練習中とかご飯中にも書くのが大変でした。夜中はお母さんが記録をしておいてくれました。

一番思い出に残っているのは、妹が生まれてくる瞬間
――自由研究を通して思い出に残っていることはありますか?
凜さん:妹の莉紗(りさ)が生まれてくる瞬間に、助産師さんが「おめでとうございます」って言って、莉紗が泣いたのが思い出に残っています。無事に生まれてよかったなとほっとしました。
夜のお世話は抱っこしなきゃ寝ないし、どうしても泣いちゃうときもあって立って寝かせたりするのは大変だけど、可愛くてもっとやりたいと思いました。思ったよりも大変だったけど楽しさもありました。

妊娠中も出産後もお母さんがいつも笑っていて幸せそうだったので、私も幸せな気持ちでした。
――赤ちゃんのお世話をするお母さんを見てどんなことを感じましたか?
凜さん:妊娠中はつわりとか切迫早産で大変そうだったし、産むのも痛そうだったし、夜も寝れなくてしんどそうだったけど、いつも幸せそうで楽しそうだったので、私も幸せな気持ちでした。

今は離乳食をあげるお手伝いもしています
――自由研究は終わりましたが、莉紗ちゃんについて新たな発見はありますか?
凜さん:最初は体重が2880gだったんですけど、5か月で7キロを超えて大きくなりました。首が座ったし、寝返りもできるようになって、最近離乳食も食べ始めました。離乳食をもっと欲しいって泣いちゃうこともあります。今は、離乳食をあげるお手伝いもしています。
凜さんのお母さん:お世話をしてくれるのはありがたいですし、とってもラクをさせてもらっています。お風呂上りも、お姉ちゃんたちに「あとはよろしくね」と全部任せられるんですよ。

子どもの言葉を大人がメモに残す手助けをし、あとから文章に組み立てた
赤ちゃんはもちろん、お母さんの様子もよく見ていて、その時に感じたことをとても丁寧に文章で表現していた凜さん。普段はどんなお子さんなのか、お母さんにもお話を聞きました。
――凜さんはどんな性格で得意なことはどんなことですか?
凜さんのお母さん:社交的で大人でも子どもでも関係なく仲良くなれるので、幼稚園の頃から、私が知らない保護者の方とのコミュニティができていました。凜から名前や家族のことを教わることも多かったです。
好きなことには集中力があるなと感じていて、幼稚園の年中から始めたピアノも毎日2~3時間練習しても全然平気そうで、見ているこっちが疲れるくらいです。
楽しいことは突き詰めてやるタイプなんだと思います。手先も器用でコツコツとやっていますね。
――自由研究のテーマは凜さんが決めたのでしょうか?
凜さんのお母さん:3学年上のお姉ちゃんが自由研究を頑張っているのをずっと見ていたので、自由研究をやりたい!というのは幼稚園の頃から言っていました。妊娠がわかったとき、まだ小学校入学前でしたが「絶対赤ちゃんをテーマにする」と決めたようです。
本人の言葉で書いてほしい! 出産当日も本人の言葉をメモしてサポート
――どんな風にサポートしましたか?
凜さんのお母さん:凜がやりたいようにやろうと、やりたいことやどんなことを知りたいかを聞いて一緒に構成を考えました。
ただ、1年生の夏休みはまだ作文を習っていなかったので、口で話すことはできてもそれを文章にするのが難しくて。そこで私とパパで、凜の言葉をメモ書きをするサポートをしました。
出産当日も、凜が思ったことを新鮮なうちに言葉にするために、インタビュー形式で答えてもらい、私とパパがメモに箇条書きで残したんです。その後、そのメモを見ながら凜と一緒に文章にしました。凜の言葉で書いてほしいという想いでしたが、その作業が膨大で、時間を割きましたね。

――製作時間はどのくらいでしたか?
凜さんのお母さん:書いては消して、書いては消してを繰り返して、夏休みは毎日机に向かっていました。モチベーションが高く、娘から「やろう!やろう!」っていうので、親たちのほうが「はい。やりましょうか」って(笑)。
――産前産後の大変ななか、自由研究のサポートは大変だったのではないですか?
凜さんのお母さん:今回3人目にして初めて、パパが産後の1か月ほど育休をとってくれたので、家のこととお姉ちゃんのことは全部パパがやってくれて。私は自分のことと莉紗のことと、自由研究の応援だけでわりとゆったりと過ごすことができていました。
妊娠中は切迫早産のために自宅で寝たきりだったので、そのときのほうがサポートできず、凜も大変だったと思います。

――でき上がった自由研究を見た感想を教えてください。
凜さんのお母さん:頑張る姿を見続けてきたので、感動もひとしおというか、表紙をつけてまとめて閉じたときに「いいのができたね」と涙が出ました。
凜が自分の言葉で書いたということが一番大きいので、妹の莉紗が大きくなったら絶対見せてあげようと思っています。宝物にしようねと伝えて、幸せな気持ちでした。
10年以上毎晩続けている読み聞かせ。凜さんのお気に入りはなんと「江戸川乱歩」
――ご両親のサポートがあったとしても、1年生とは思えない長文で構成された内容は素晴らしいです。文章を育むために読書などしているんでしょうか?
凜さんのお母さん:1年生になってたくさん本を読むようになってくれて。学校でもお姉ちゃんと図書室に行っているようです。本に親しんでくれているのは嬉しいですね。
お姉ちゃんが生まれてから10年以上、毎晩読み聞かせも続けています。
私の趣味みたいな本でもあるんですけど、昔の文豪の作品などの一章だけを読むこともあります。そういった本は自分では手に取らないと思うので、触れる機会を与えられたらなと。
- ――お子さんはどんな作品が好きですか?
お姉ちゃん:今は「江戸川乱歩」とか、「宮沢賢治」です。
凜さん:「江戸川乱歩」が好きです。
凜さんのお母さん:昔の作品なので、知らない言葉が出てきたらみんなで調べで、言葉が増えればいいなと続けています。

やりたいといったときにはそれがやりどきなので、そのタイミングでサポートしたい
――子育てをする際、大切にしていることはありますか?
凜さんのお母さん:やりたいと思ったことに関しては全力でサポートしようと思っています。時間も経済的にも制約はありますけど、自分のできる範囲でサポートをしたいです。
親の都合で子どもがやりたいことができなくなることだけは避けたいなと常に意識しながら、やりたいといったときにはそれがやりどきなので、そのタイミングでサポートできるようにしています。
――パパも同じ意識ですか?
凜さんのお母さん:そうですね。パパは遊びのなかで子どもたちを学習させてくれるのが上手なので、いつも一緒にお絵描きしたり勉強したりしていますね。お姉ちゃんと凜は私よりもはるかに絵が上手で、今回の自由研究の表紙の絵も凜が全部描いています。
その時々の気持ちを記した文章が、心に響く作品に
妹の誕生を心待ちにしていた気持ちや、出産の瞬間の想い、生まれたばかりの妹が可愛くて仕方がない様子など、その時々の素直な気持ちが心に響く伝える文章は、お母さんお父さんがその時に聞き取り、メモに残し、あとから一緒に文章を構成したからだとわかり、納得しました。まだ文章にすることが難しい低学年のお子さんには、効果的な進め方だと思います。
それにしても、妊娠中や産後間もないときという、体調面でもメンタル面でも大変な時期でも、お子さんに寄り添い、サポートを続けたお母さんの姿勢も素晴らしいなと感動しました。お母さんの「やりたいといったときにはそれがやりどき」という言葉にもあるように、子どもがやりたいことを全力でサポートできたら、子どものやる気も一層アップするのだと実感したインタビューとなりました。
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取材・文/長南真理恵