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HSCの特徴を知って、子どもの不機嫌の理由がやっとわかった
――ユキミさんはいつ「HSC(HSP)」という言葉を知ったのですか?
ユキミさん:息子が未就園児の頃です。当時、夜泣きがひどくて、ずっと抱っこしていないと泣いてしまうような感じだったんですね。それで、抱っこをしつつ、育児で気になっていることを検索していたのですが、たまたま見ていた掲示板のコメントでHSCという言葉が出てきたんです。それで調べてみると、HSCというのは、Highly Sensitive Childの頭文字をとったもので、生まれつき敏感で感受性が高い気質を持つ子どものことだと知りました。

さっそくHSCチェックリストをやってみると、「誰か息子のことを見てた?」というレベルで当てはまることばかりだと感じました。それまでは「息子が今泣いているのは全て私のせい」「息子が困っているのは私の育て方のせい」と思っていましたが、息子の生まれつきの性格なんだと知ってホッとしましたね。
――そのときにご自身もHSPだと気づかれたんですね。
ユキミさん:大人の場合はHSP(Highly Sensitive Person)と言うことも、そのときに知りました。息子のチェックリストを見ているうちに、自分にも当てはまるところが多いなと気づいて…。思い返せば子どもの頃は、いきなり出される大声やスピーカーから流れる大きな音楽、まぶしい蛍光灯の光…とにかく五感を刺激されることが嫌で、裸足でお砂場で遊ぶなんて絶対できませんでした。敏感すぎて輪に入れない、苦手なものが多すぎて楽しめなかった思い出が結構ありましたね。ただ、親にそんなことを訴えようものなら、すぐに「わがままだ」「文句を言うな」と叱られることばかりで、次第に私も口をつぐむようになっていきました。
――それは辛い体験でしたね。でも、そういった気質があることを知らなければ、「わがまま」と捉えられてしまうこともあるのかもしれません…。
ユキミさん:そうなんです。だからHSPやHSCのことを知ったときは、目の前が開けるようでした。そこからいろいろ調べたり、HSCに関する本を買って読んだりしました。本の中に決定的な解決策があったわけではないのですが、息子の行動の理由を知ることができたんです。それまでは「なんで泣いてるの?」などと思うことが多かったのですが、その理由がわかるだけでもすごく助けられましたね。
――きったんの性格で、特にHSCに当てはまると思ったのはどんなことですか。
ユキミさん:すぐにビクっとすることや、服の素材に敏感だったり、少しの汚れでも着替えたがったりすること、興奮するとなかなか寝付けないことなどはすごく当てはまりましたね。
その他に私が特徴的だと思っていたことが2つあって、まず1つ目は赤ちゃんの頃から外出するととにかく不機嫌になることです。家では私が離れなければそんなに泣くことはないのに、お買い物や電車に乗って出かけるとすぐに泣き出してしまい、家に帰るまで機嫌がなおらないんです。お腹が空いているのかなとか、オムツが濡れているのかなとかいろいろ考えたり、あやしたりするのに精一杯で、なかなか出かけられなくなってしまいました。

でも、それもHSCの特徴だったんですよね。少し大きくなって息子が幼稚園に入る頃になると、「人がいっぱいで前が見えなくてしんどい」とか「流れている音楽が好きじゃない」とか自分の気持ちを伝えてくれるようになりました。それで、外に出ると不快なことって子どもながらにあるんだなと気づきましたし、私もその気持ちはわかるなと思いました。
もうひとつは人の変化にすごくよく気づくことです。幼稚園の先生の髪型が変わったとか、家にあるものの配置が変わったとか。ちょっとしたことでもよく気づきましたね。今でも私の体調が悪いんじゃないかと気づいてくれることもあります。ずいぶん前に言ったことも覚えていることもあるので、嘘はつけないですね(笑)。

――きったんが不快になりそうな場所は、なるべく避けるようにされているのですか?
ユキミさん:バスや車の匂いが苦手だったり、気温の変化に敏感だったりするので、特に夏場はなかなかお出かけができなかったりもします。私もはじめは、息子が不快になりそうな場所には行かないようにしましたが、でも、そういう場所が悪いわけではなくて、本当は楽しい場所でもあるはずですよね。
だから、今はその楽しさも知ってほしいなと思っています。少し遅いデビューでしたが、ディズニーランドやUSJなど、人の多い場所にも少しずつ2人で行くようになりました。アトラクションに並んでいて、あと5分で乗れるというときに「もう帰りたい」と言い出すこともあり、そういうときはちょっともったいないなと思いますが、本人が楽しめることを最優先に考えています。今は出かけられる範囲が増え、社会がかなり広がってきたと感じています。
環境の変化に敏感なHSCの子。頑張りすぎて疲れてしまうことも
――きったんは今、小学4年生ですね。小学校入学時に困ったことや大変だったことはありますか?
ユキミさん:新しい生活環境への適応はやっぱり大変そうでしたね。インプットすることだらけで疲れているように感じました。授業もそうですが、1年生は教室やトイレの場所も覚えなくてはいけないし、幼稚園と違って細かなルールもありますよね。息子の小学校は制服もあるので、幼稚園のスモックとは違ってシャツのままで授業を受けるというのは、それだけでも緊張感があったと思います。

学校の中では頑張っていたようですが、帰ってくるときには疲れてしまっていましたね。それに、家が完璧に休める場所ではなくなってしまうという意味でも宿題は大変そうで。特に漢字の書き取りに苦労していました。
あとは「いつもと同じ」を好む傾向にあるので、学校の行事や授業参観などがあるとそのそわそわした雰囲気を察知して、不機嫌になることが多いですね。
――確かに1年生になるとガラッと生活が変わりますよね。学校までの送迎をされているとブログにも書かれていましたが、今も続けられていますか?

ユキミさん:入学時から4年生になった今も朝は学校まで送っています。大変ではありますが、息子が安心して学校に行くためには必要なことなのだろうと思っています。ただ、小学生になって1年、2年と経つうちに、ずいぶん楽になった面もあります。1年生になったときに、息子には「母も同じ1年生だよ」と伝えました。とにかく私は完璧ではない。だから一緒に頑張ろうと思っています。
――担任の先生にはきったんがHSCであることを伝えましたか?

ユキミさん:それは伝えていないんです。私の中のHSCやHSPの考え方としては、人に何かを理解してもらうというよりは、自分のことを自分で守るためのお守りみたいなものだと思っているんです。だからわざわざお守りを他の人に見せないっていうのは自分の中にありますね。「先生から見た息子」を大事にしたい気持ちもあるので、息子の性格を先生に知ってほしいということはあまり考えていないです。
幼稚園や小学校では、自然とモードが切り替わっているのか、先生の目から見ると、息子は敏感な子に映っているわけではないようです。ただ、どこかで少し無理している分、家に帰るとどっと疲れてしまうということは多いですね。
「しつけで何とかしなきゃ」という考えを手放して、心が楽になった
――今までの子育てで周りと比べてしまうような場面はありましたか?
ユキミさん:自分の中ではコロナ禍が大きな転機でした。丸半年くらい、息子と2人っきりで幼稚園にも行けなかった時期は本当に大変でしたが、周りをあまり見なくなりました。人にはどうにもならないことがあるし、周りを見ててもしょうがないなと思うようになりましたね。
――敏感な子への対応で、どうしたらいいか悩んでいるママもいると思うのですが、何かアドバイスはありますか?
ユキミさん:「これは好きなのに、こっちはダメなの?」とイライラしてしまうことってありますよね。でも、そういう子ってお気に入りが絶対にあると思うんです。たとえばヨーグルトだとしても、メーカーによっての違いとか、甘さの違いとか、ちょっと酸味があるとか。きっとお子さんの中でオンリーワンがあるはずなので、できるだけそれを選んであげるのがよいのかなと思います。息子もお気に入りを見つけたらそればかりです。

他にも、たとえば息子は食材の味が混ざるのが苦手だったのですが、具ごとにわけてお皿に盛ったら喜んで食べました。「味覚が敏感なんだ」という見方に変えられたおかげで息子を怒ることも必要以上にイライラすることもなくなりました。「しつけで何とかしなきゃ」と悩んでいたことも、「わが子はHSCみたいだし、これくらいでいいかな」と思うことで、肩の力が抜けた気がします。
HSCは誰もが理解してくれるわけではないけれど、自分の「お守り」になる
――お子さんがHSC、でも自分(またはパパ)は非HSPという場合、どういった点に気をつけて接するのがいいと思いますか?
ユキミさん:これは私自身の考えなのですが、私のように息子と同じタイプだと、よくも悪くもわが子に共感しすぎて、2人で暗い気持ちになってしまうこともあります。でも子どもとタイプが違うというのは、共倒れしないで親が支えてあげられるのが強みだと思います。
漫画にも書いていますが、夫は非HSPで、HSCのことを「そういう人がいる」ということを認知はしています。でも、受け入れてはいないんですね。でも夫には夫の息子との関わり方があって、息子がこれから先大きくなり、いろいろな人と関わる上で必要な存在だと思うんです。息子に対して厳しいなと感じることもありますが、そんなときは、私がホームのようにホッとできる存在でありたいです。HSPである私の役割、非HSPである夫の役割があるんだと思います。

先ほど「HSCという言葉はお守りみたいなもの」と言ったことにも繋がるのですが、HSCという言葉を伝えたときに興味を持ってくれる人もいれば、「その言葉を盾に使って、甘えているんじゃないか」と思う人もいます。誰でも理解してくれるということではないんだと思います。なので担任の先生も含め、誰にでも気軽には言わないようにしているんです。これは夫で学びを得ましたね。
――HSCのお子さんをもつ親御さんへ、メッセージをお願いします。
ユキミさん:HSCやHSPという言葉は知らない人もまだまだ多いと思います。HSCという言葉にたどり着いた方も、そこまでにたくさん悩んだり、孤独を感じたりしているのではないでしょうか。でも、この言葉にたどり着いたってことは、お子さんと向き合って、お子さんのことを第一に考えているからではないかなと思うんです。

だから、そんなふうにわが子のことを理解しようという気持ちと温かい目さえあれば大丈夫だと私は思います。小学校に入ってもこの先やっていけるのかなと不安になることもあるかもしれません。でも、先のことを考えることも大事ですが、どうか頑張りすぎず1日終わったら「今日もやりきったぞ!」とご自分を労わってください。もちろんわが子も!
少し時間が過ぎた今だからこそ思えるのですが、1年生って大変であると同時に、楽しい時期でもあるんですよね。4、5月はお子さんの環境が変わって、いろいろなことが起こるとは思いますが、おうちの方がお子さんの安全基地になるように、まずご自分のことも大事にしてほしいです。私もまだ子育ての先は長いですが一緒に頑張りましょう!
――ありがとうございました! ユキミさんの子育てについてさらに知りたいという方はぜひブログをチェックしてみてくださいね!
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取材・文/平丸真梨子