東大100人超! 聖光学院【現役保護者の座談会】「指示はBe Gentlemen.の一言だけ」「入学後、完全にキャラ変」子どものやる気を引き出す学校のリアルな空気とは

東大合格者100人超えで注目の聖光学院。校長・工藤誠一先生の著書『VUCA時代を生き抜く力も学力も身に付く 男子が中高6年間でやっておきたいこと』の出版を機に、実際に通うご家庭に“聖光のリアル”を取材。見えてきたのは、信頼できる先生が寄り添う、のびやかであたたかな6年間の姿でした。

実はすごい。校長先生に相談できる学校

―校長先生は著書でも「コミュニケーションを大切にされている」と書かれていましたが、実際にお会いするとどうですか? 生徒や保護者から“直接相談できる校長先生”って、実はすごいことですよね。

Kさん:ほんと、すごいと思います。保護者会のとき「ご一緒してもいいですか?」とふわっと教室にきてくださって「○○塾だったんですね? 先生よく知ってますよ」なんて名簿を見ながら話しかけてくださるんです。正直、校長先生とこんなふうに直接話したのは初めてでびっくりしました。気さくで、話しやすさが段違いなんです。

Sさん:“学校でできることは何でも使っていいよ”というスタンスも徹底されています。国際音楽コンクールがあったとき、校長先生に相談したら「公休でいいですよ」と即答。さらに「音楽室や食堂にあるグランドピアノならいつでも練習していいですよ。ホールが空いているときはスタインウェイも弾けますよ」と親切に仰ってくださいました。「たった一人の“やりたいこと”を、こんなに応援してくれるなんて」と驚きました。

ー校長先生の言葉がちゃんと保護者や子どもに届くなんてなかなかないですよね。うらやましいです。

Sさん:そうなんです。学校説明会で校長先生の話を聞いたときに、一瞬で聖光学院のファンになりました!

Kさん:校長先生が「塾はいらない。学校の勉強に全力を注げばそれでいい」とはっきり言ってくださったのも、本当に心強かったです。子どもたちは小学校時代、受験勉強でずっと机に向かってきましたからね。6年間は思いきりのびのび過ごせると思ったのも、聖光学院を選んだ大きな理由です。

Tさん:うちの子も、校長先生がすごく好きみたいです。「おもしろい人なんだよね」とよく話していますし、何かあると自分から相談しているようです。

―Tさんは聖光学院で6年目になりますね。リーダーとしての校長先生とは、どんな存在ですか?

Tさん:世の中の変化にとても柔軟な方です。固定観念にとらわれず「今、子どもたちに本当に必要なことは何か」を常に考えて、必要ならすぐに取り入れていく。その姿勢が、学校全体にも反映されていると思います。

たとえば、コロナ禍でも学園祭を中止せず、子どもたちに経験の場を用意してくれました。留年制度がないこともそう。柔軟な判断のひとつひとつが、子どもたちの「自分で考えて動く力」を育ててくれていると感じています。

先生って、こんなにも信頼できる存在だったんだ

ー聖光学院に入学してよかったのはどんなことですか?

Tさん:先生という存在を、初めて尊敬し、信頼できたようです。うちの子は小学校の頃、先生とちょっとバチバチな感じでした。でも、聖光に入ってからはガラッと変わったんです。

ーそれは大きな変化ですね。何かきっかけがあったのでしょうか?

Tさん:教科担任制や、先生方の専門性の高さが大きいと思います。どの授業もすごくおもしろくて「先生ってすごいな」と素直に思えるようになったようです。

先生が生徒を“一人の人間”としてちゃんと見てくださっているのも、心地よかったのでしょうね。先生や大人に対して斜めに見るような態度がいつのまにかなくなっていました。

Kさん:教え方はもちろん、先生の“伝える力”を尊敬しているようです。学校の行事や旅行のときも、指示は聖光学院のモットー「Be Gentlemen.(紳士たれ)」の一言だけ。それだけで、「どう振る舞うべきか」を生徒たちが自然と考えるんです。

Sさん:全体への指示に拡声器を使わないとか(笑)。基本的に、落ち着いた子が多いのも聖光の特長かも知れません。なんとなく似たようなタイプの子が自然と集まっている気がします。

Tさん:ちなみに保護者もさっぱりしている人が多いです(笑)

“やってみよう”を引き出す空気

―聖光学院に入ってから「お子さんの姿勢が変わった」と感じることはありましたか?

Tさん:完全に“キャラ変”しました(笑)。小学校では、前に出るタイプではなくて、行事は人任せ。でも聖光に入ってからは「自分でやってみたい」と思えるようになったみたいで、イベントの運営にも友達と参加して、準備も本番もすごく楽しそうでした。

Kさん:これから今までにない顔を見せてくれたらいいですね。期待しているのは「聖光塾」。授業以外で学校の先生や外部講師の方が、茶道、プログラミング、ディベート、サイクリングなどの教養講座を開いてくれるんです。先日、他校の生徒さんとディベートする企画に参加してみました。

Sさん:入学前は自ら積極的に前に出るようなタイプではなかったのに、学校行事でいくつも仕事を引き受けてきてびっくりしました。しかも「小学生にこの学校のよさを伝えたい」と学校説明会の案内係にも立候補。ワクワクしているようで、親としてもうれしかったですね。

Tさん:でも、Zoomの声が漏れ聞こえてくると「それ前も話してたよね(笑)」、「ちょっと今、もめてるな…」という雰囲気のときもありましたよ。

ー何でもスマートにやりこなす子が集まっているイメージがありますが、実際はそうじゃないんですね

Tさん:全然、全然(笑)。そういう“うまくいかなさ”も含めて、子どもたちは試行錯誤しながら前に進んでいます。むしろ、ふつうの子どもたちが“やってみよう”と動ける空気があることが、いちばんの魅力なのでは。

ガリ勉校じゃない。でも高校3年からは〝別の学校? ″

─聖光学院といえば「東大100人超」の実績が注目されますが、お話をうかがっているとガリ勉校ではなそうですね。

Tさん:まず“好きなことを伸び伸びやらせてあげよう”という空気があるんです。うちの子も高校2年までは部活動や友達との時間をめいっぱい楽しんでいました。それが、子どもたちの心の土台になって、結果的に受験期にしっかり踏ん張れる力につながっているように感じます。

東大を目指す生徒が多いのも、先生にすすめられるというより、子ども自身が自然と「行ってみたい」と思うからなんですよね。先輩が通っていて楽しそうだったとか、授業がおもしろそうだったとか理由もとても身近にあります。周りが思うほど、本人たちは気負っていないかもしれません。

Sさん:運動部なので、最初は勉強との両立が難しく、中1のときに成績が落ちてしまいました。担任の先生に「今の成績がそのまま高校の成績に影響するよ」と言ってもらい、少しずつ意識が変わってきたようです。

Kさん:うちは逆に、そういう成績の話は一切なかったです(笑)。それぞれの子に合った関わり方をしてくださっているんだなと感じています。

Tさん:でも、高3になると空気がガラッと変わります。〝別の学校″ですよ(笑)。授業は入試を視野に入れた内容ですし、自習室は夜9時まで開いていて、授業以外でも勉強するのが当たり前。先生との進路面談も本格的になり、子ども自身も「さあ、本気を出すときだ」と切り替わっていく。“最初は育てて、最後に仕上げる”。この緩急が聖光らしさなんだと思います。

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取材・文/黒澤真紀

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