
活発に外遊びをしてほしくて選んだ園で、折り紙や工作ばかりしている息子
わが子に子どもらしい子に育ってほしいと思い園を選びました。子どもたちが活発にどろんこ遊びをしている園です。だのに、うちの子は全く汚れずに帰ってきます。
水遊びもしてほしいと着替えをもたせているのに、一回も着替えてきたことがありません。なにをしているかと思えば、ブロックや折り紙、工作とインドアなことばかり。
それなりに充実して遊んでいると先生からは言われますが、なんかモヤモヤしています。だったらこの園を選んだ意味はないかと思うのです。
お子さんがあなたの思いと違うからとがっかりしないで。子どもは変化しながら成長するもの
「親の心子知らず」こんなことわざがありました。子どもは親の思うようには育たないのは昔からのようです。思うように育つ子がいたとしたら、たまたま気質が同じか、子どもの自我が弱いか、まだ目覚めていないのかではないでしょうか? あなたの遺伝子を受け継いだとしても、子どもは別人格の人間ですから、思いをかけ過ぎるとヤキモキしてしまうかもしれません。
「どろんこ楽しそうよ、やってみたら?」とか「水遊びしていいのよ、水着入れておくからね」などと言い過ぎると、子どもは親の思いを察して登園する気分が重くなってしまいますから、ぐっと飲み込んでくださいね。
経験値の少ない子どもは慎重派がほとんどです
ところで、活発でどろんこや水遊びが好きなのが、あなたの理想の「子どもらしい子」なのでしょうか。確かに多くのおとながそう思っています。人見知りをせずに、物怖じせずになんでもやってみる。公園や園に行ったら、どんな子どもとも友だちになれる。わんぱくでたくましい子どもになってほしいと。
実は、そんな子どもは滅多にいません。私の経験でいくと20人にひとりいるかいないかという感じです。 初めてのことにも、率先してやりたがる。どろんこになって喜んでいる。裸足で外に飛び出す。水遊びで全身びしょびしょ、顔にかかってもへいちゃら。怖い物知らずというのはそのくらいの率だと思います。
けど、目立つんです。やりたいことをやっているキラキラ目を光らせた子が。町ではご迷惑さんとよばれていますけどね。知らず知らずに、そんな子ども像を描いてしまったのかもしれません。
実際は、子どもは結構慎重です。まだ経験値が少ないですから、初めてのことだらけの園で、自分のホッとできることから手をつけます。案外、本を読んだり、ブロックしたり、積み木をしたりして自分の基地を作るんですよ。
周りにいろんな子がいる、わんぱくな子もいる、それをそっとのぞくように見て、感じていきます。「おもしろそう」と思う子もいるし「こわい」と思う子もいます。徐々に刺激を受けながら自分の基地を広げていきます。時期がやってきてジャンプするように元気者の中に飛び込んでいく子もいます。一線を越えておもしろさにはまって、人数もだんだん増えていきます。
でも、お宅のお子さんのように「やっぱり ぼくは これがすき」と結論を出す子もいます。でも、お宅のお子さんだって自分の興味のあることをシコシコやりながら、気の合う子と近づいているでしょう。周囲のにぎやかな子どもたちを何気なく受け入れてもいるでしょう。
この園に入れて合わなかったのではなく、大胆な刺激を受けてもいるわけです。その中にいる意味は、自分と違うことを楽しいと思う子がいるという事実を受け止めることです。言ってみれば、多様なこの中で、自分が好きなことを意識する。自分を自覚するということでもあると思います。
「今」がその子の一生を決めたりはしません。子どもを元気にするのは親の見守り
そして、一生は長いです。父親が野外活動の仕事をしている子が、「りんごの木」に入ってきました。ところがインドア派で一向に外の遊びに出ていきません。二年間、彼は工作に夢中、たいした作品を作っていました。父親はすっかり諦めることになりました。
ところが、小学校5年生になったとき野球にはまったのです。それからかなりの能力を発揮し、中学・高校に進んでいきました。自分の好きなことに集中できる育ちをしていたということでしょう。
今が一生を決めたりしません。子どもは今を生きているけれど、変化しながら進んでいきます。
あなたの思いと違うからとがっかりしないでください。これから先、お子さんがどんな風に成長していくのか楽しみながら見守ってください。親は子どもを愛し、心配するからこそ、願いを込めてしまいます。けれど、子どもはちゃんと自分を生きています。どんな道を歩もうとも、応援できる親でいてほしいと願います。その見守りが子どもを元気にもするのです。
監修

保育者。自主幼稚園「りんごの木」代表。子供の気持ち、保護者の気持ちによりそう保育をつづけて半世紀。小学生ママ向けの講演も人気を博している。ロングセラー絵本『けんかのきもち』(ポプラ社)、『こどものみかた』(福音館書店)、『あなたが自分らしく生きれば、子どもは幸せに育ちます』(小学館)など、多数。親向けの最新刊に『保育歴50年!愛子さんの子育てお悩み相談室』(小学館)がある。