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岩下先生から個別に指導もしてもらえるイベントは大盛況!
今回の読書感想文の書き方イベントは、小学1・2年生の部と、小学3~6年生の部の2回に渡り行われました。どちらのイベントもすぐに満席となり、大盛況!

岩下先生からベースの書き方を教えてもらった後は、個別に書き方を指導してもらえる時間もあり、ぜいたくな内容となりました。
岩下先生に、読書感想文を書く上での注意点や、苦手意識のある子へのサポートなど、読書感想文にまつわるあれこれを詳しく教えていただきました。
読書感想文はまず、本選びが大切!
岩下先生:読書感想文におすすめの本は、起承転結がはっきりしているシンプルな本です。自分なりの解釈や感じたこと、自分と重なる部分を見つけやすく、感想文に落とし込みやすいのです。
コンクールなどに応募する場合は特に物語を選ぶお子さんが圧倒的に多いのですが、書くのに苦労して、苦手意識を持ってしまう…ということも少なくありません。
私はノンフィクションの作品をぜひ手に取ってみてほしいと思っています。生き物が大好きなお子さんでしたら、自分の好きな生き物を題材にした本がおすすめです。ノンフィクションの作品は、目次で内容がはっきりと区切られているので、感想文も書きやすいし、場面も切り取りやすいです。
また、推薦図書の中から選ぶべきと思い込んでいる方もいるようですが、そんなことはありません。教科書で読んだことのあるお話をもう一度絵本で読んでみたり、今まで読んだことのある本やお気に入りの本の中から選んだりしてもいいんです。

読書に苦手意識があるお子さんでしたら、親御さんがお子さんが好きそうな本を何冊か読んでみて、「これは面白い!」と思った本を一緒に読んでみるというのもいいでしょう。図書館へ行って、6冊だったら3冊は親御さんがいいと思った本、3冊は子どもがいいと思った本を選ぶのでもよいと思います。
優れた作品は大人も子どもも心を動かされます。そういう本を選ぶことができれば、子どもから出てくる言葉も変わってくるはずです。
感想文の魅力が十分に伝えられるのは「4部構成」
岩下先生:私が提唱する読書感想文の書き方は、「4部構成」です。読書感想文だけでなく、作文など、そのほかの文章でも「4部構成」で書くと、すっきりわかりやすくまとまります。
基本は、「①きっかけ」「②心を動かされた場面」「③最も心を動かされた場面」「④学んだこと(まとめ)」です。
①きっかけ
まず最初に、この本を選んだ理由や、出会ったきっかけなどを書きます。
②③この本で心が動いた場面
次に、選んだ本の中で自分が好きな場面や不思議だなと思った場面など「心を動かされた場面」を2つくらい書きます。低学年の場合は、1つでも文字数が満たされるかもしれませんが、2つくらい書くと文章の流れがスムーズになります。
④読んで学んだこと
最後は、②③の場面に共通するところをまとめ、この本の言いたかったこと、そこから何を学んだのか、そして今後はどう行動していきたいのかを書けば完成です。
読書感想文の適切な構成は文字数によって異なります。
例えば、400字程度の短い感想文であれば、最も心に残った場面とそれに対する自分の意見、そして個人的な体験を結びつけるシンプルなもので十分ですが、800字や1200字といった長い感想文になると、あらすじの羅列や表面的な感想では内容が不足し、読んでいてもダラダラしたイメージになってしまいます。
「4部構成」を用いることで、論理的で深みのある”読みたくなる感想文”が完成するのです。
読書感想文のコンクールで入賞する作品は、内容の深さに加えて、構成力が非常に優れているという共通点があります。論理的でわかりやすい構成は、文章の魅力が最も伝わりやすいのです。
”書く”ことに苦手意識がある子には親子での対話を
岩下先生:書くことが苦手なお子さんは、自分の言葉で思いを言語化することを難しく感じている場合が多いと思います。親御さんが「どう思った?」と直接聞くのではなく、わが子独自の視点や体験を引き出し、言葉にならない思いを言語化する手助けをしていきましょう。親御さんでしたら、お子さんの興味の背景を推測しやすいかと思います。
例えば、”悲しい”という言葉一つでも、大切なものをなくしたときの”悲しい”なのか、仲良しのお友達と離ればなれになるときの”悲しい”なのかでも、微妙に意味が変わってきますよね。
また、「嫌いなことはやらない」「好きなことだけやればいい」、そんな風潮が時代的にあるような気がしますが、それはちょっと違うと思うんですね。書くことが苦手と言っても、テーマが自分の好きなものではないから「嫌い」とか「苦手」と表現してしまうだけで、自分の宝物やお気に入りの場所など、その子が好きなテーマならばどんな子でもどんどん書けるんです。

今回のような親子作文教室は、おうちにいるときとは異なる半公式的な場所です。少し改まった機会を提供することで、親子で深いコミュニケーションを促すことができます。苦手意識が強いお子さんならば、ぜひ今回開催したイベントのようなものを利用してみてください。
読書感想文を書く作業は「メタ的読解力」と「論理的思考力」を育む
岩下先生:夏休みの宿題の中でも”大変な宿題”として捉えられることの多い読書感想文ですが、 読書感想文に取り組むことは、単なる宿題以上の価値を持っています。チャレンジすることで得るものが最も大きい課題ですよ。
まず、感想文を書くためには作品を深く読み込む必要があるため、何度か読み返しながら精読をしていくことになります。このような本の読み方は、通常の読書では得られない「メタ的読解(状況、心情等の理解だけでなく、作品の意図、構造、表現に対する俯瞰的・客観的な理解)」の力を養うことにつながります。の力を養うことにつながります。
そして、文章をわかりやすくするための「4部構成」を考えながら書くことで、事実をもとに自分の考えをすっきり紡ぎ出す「論理的思考力」が鍛えられます。これは国語だけでなく、教科の枠を越えて必要とされる一生ものの力。小学生のうちからコツをつかんでモノにしてしまえば、その後の学びにも生きてきます。
読書感想文を通して子どもの内面的な成長や”書く”楽しさを実現して
岩下先生:読書感想文に取り組む際は、賞を取ることを目的とせず、子どもの内面的な成長と自己表現を実現することに注目してあげてください。文章を”書く”ことで見えてくる世界があります。そういう面白さをお子さんに体験してほしいんです。自分が経験した喜びや驚き、悲しみが他の人にも共有できるってすごいことですよね!
とにかく、”読書感想文”として1枚でも完成させるだけでも、ものすごく大切な経験になると思います。

また、普段の家庭内の会話だけでは語彙力は全然足りません。たくさんの読書をして、言葉にまみれるくらいじゃないと言葉は身に付きません。
そこは親御さんが心を動かされた作品や、子どもの頃に大好きだった作品などを参考にして、ぜひお子さんに伝えていってください。名作はいつの時代にも心に響くものですよ。
岩下先生の作文メソッドをもっと詳しく知りたい方は…
今回は、岩下先生の作文メソッドの一部を教えていただきましたが、もっと詳しく知りたいという方は、以下の本もおすすめです。岩下先生が監修した本には、読書感想文、日記など、あらゆる文章に使えるメソッドが満載。
ぜひこちらの書籍も参考にしながら、読書感想文を通じてお子さんが一生モノの文章力を身に付けるサポートをしてあげてくださいね。
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巻末には、特別付録として岩下先生特製の「魔法の作文ワークシート」も掲載されています。
子どもが書いた50あまりの実物作文は、どれも「4段落作文」で書かれたもの。これらの作文の一つひとつに、「作文のポイント」「作文を読もう」という解説や問題がついています。鉛筆でチェックしたり、簡単な問題をしたりすることで、作文の書き方のコツがわかるようになっています。
主な作文テーマについての「書き方ガイド」も。書き方の型だけでなく、何を書いたらよいかが示されています。このガイドを見れば、必ずスラスラ書き進むことができるようになっています。
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取材・文/鬼石有紀


