「不登校から中学受験で人生を変える」不登校指導のプロ塾長に訊く、学校に行けない子こそ“中受”を選ぶべき理由、学習への寄り添い方【ココロミル・山田佳央さん】

わが子が不登校になると、「このまま未来の選択肢が閉ざされてしまうのでは…」と、不安を抱えながら子どもと向き合う保護者は少なくありません。個別指導塾ココロミル塾長の山田さんは、「受験」が、不登校からふたたび歩き出すきっかけになると発信し続け、多くの親子の再挑戦に寄りそってきました。「学校に行けない」「学習の遅れが心配」――そんな状況から、もう一度動き始めるために必要な視点とはなにか。 また、長年の経験から見えてきた、中学受験のメリットや、保護者が心がけるべきポイントを伺いました。

「教育は本当に平等なのか」──大学時代に抱いた違和感が、不登校支援の原点に

――「不登校からの進学受験ガイド」など、受験をきっかけとした不登校の解決について発信されていますが、最初に教育の仕事をスタートしたきっかけはなんだったのでしょうか。

山田 佳央さん(以下、山田さん):きっかけは、大学時代に始めた塾講師・家庭教師のアルバイトです。多くの塾、予備校に通い、講師側に立ちたいなという漠然とした希望と、給与が高かったことで選んだ仕事でしたが、子どもたちと関わるうちに自分でも驚くほどにやりがいを感じ、自然と夢中になっていきました。「仕事」という感覚もないくらいで、週7日働いても苦にならなかった。それが、今につながる原点ですね。

――そこから、どのように「不登校」に焦点が向いていったのでしょうか。

山田さん:当時、勉強を教えるなかで、不登校の子どもも含めて、さまざまな学生とかかわる機会がありました。そこで、教育業界の構造に対する違和感を強く抱くようになったのです。

個別指導塾ココロミル塾長・山田佳央さん

――どのような違和感だったのでしょうか。

山田さん:「教育の機会は本当に平等なのか?」という疑問です。多くの学習塾では成績によってクラスが分けられ、上位クラスには経験豊富な講師がついていました。しかし一方で、成績が振るわないクラスでは大学生のアルバイト講師が担当することが多かったんです。

同じ授業料を支払っているにもかかわらず、授業の質に明らかな差が生まれている――。つまり、つまずいた子ほどよい先生に出会いにくい構造になっているのです。

さらに、一度学校に行けなくなると、教育の場から切り離されてしまう子どももいます。そうすると、ますますよい教育とつながれる機会が少ない。だから、そんな子どもたちにも、もう一度学びのチャンスをつかんでほしい。この思いが、不登校の子の進学支援へとつながっています。

内申点に左右されない、中学受験ならではの“一発勝負”

――不登校の子どもに、中学受験をおすすめする理由はどのような点にあるのでしょうか。

山田さん:小学校に行けなくても、中学受験は基本的に当日の試験結果のみで合否が決まります。そして、合格すれば環境を丸ごと変えることができる――これが大きな特徴です。実際、環境が変わることで再び学校に通えるようになる子どもたちを、これまでたくさん見てきました。

一方で、たとえば高校受験に挑戦しようとすると、中学の内申点や出席日数が評価の対象になることが多く、学校へ通えていない状況が影響する可能性があります。さらに、地元の中学校へ進学した場合、小学校時代の友人関係がそのまま続くことが多く、復学(もともといた学校へ戻ること)へのハードルが高くなるケースも少なくありません。

だからこそ、「中学受験をきっかけにして、環境を新たにすること」が、再出発の大きな後押しになると考えています。

ココロミルでは、本人などの努力などによらない「グレーな問題」ではなく、
子どもの学力や成長の向上という「クリアな問題」に視点を当てている

――新しい環境にチャレンジしたい気持ちはあっても、「学校」そのものに抵抗を感じる子も多いと思います。その場合は、どのように考えるべきでしょうか。

山田さん:必ずしも学校にこだわる必要はないと考えています。 安心して過ごせるコミュニティ、たとえばサッカースクール、プログラミング教室、美術教室など、子どもが興味を持てる場所で人とのつながりを築くことがとても大切です。

学習塾も同様で、ココロミルも「学びの場」であると同時に、安心して過ごせる「居場所」になると思います。子どもたちが 「ここなら大丈夫」と思える場所がひとつでもあること。それが、将来に向けて、大きな力になっていくのではないでしょうか。

学習指導は“スモールステップ”で、その子のペースに徹底的に寄り添う

――これまで学校に行っていなかった子どもたちが、中学受験に挑戦する際には、どのような工夫が必要なのでしょうか。

山田さん:不登校の子の学習支援で重要なのは、「スモールステップにこだわること」です。小さな目標をひとつずつ達成していくことで、学習や新しい環境に対する不安がやわらぎ、無理なく自信を積み重ねていくことができます。

ココロミルHPより 不登校のお子さんからの声

――大切なのは「スモールステップ」なんですね。具体的にどのような段階を踏んでいるのでしょうか。

山田さん:ストレスの感じ方や得意・不得意はそれぞれ異なるため、最初はその子に合った学習への入口から選び始めます。学校に行けておらず、これまで学習の習慣がなかった子や、また、発達特性のある子どもたちも少なくありません。そういった子どもにとって、一度にすべてをこなすのは難しいことが多く、初めから完璧を目指そうとすると、負担が大きくなり、学習が続かなくなってしまいます。

そこで、まずは漢字なども 「書くだけ」「読むだけ」 といった、本人の負担の少ないタスクから始めます。計算ミスなども細かく追及しません。ある程度できるようになってから、少しずつでいいんです。

不登校で勉強から離れていた子でも、いざスタートして新しい学びのおもしろさに気づき始めると、目の色を変えて取り組むようになることは珍しくありません。

子どもと距離を縮めるには、まず好きなモノを理解する姿勢を見せる

――最初は学習に抵抗があったり、興味が持てなかったりする子どもも多いのではないでしょうか。勉強へのやる気はどう引き出しますか?

山田さん:勉強へのやる気を引き出すために大切なのは、「子どもが興味をもつ世界から、学びにつなげること」です。親はやる気があっても、子どものほうは最初気持ちがついてこないことも多くあります。そんなときは、子どもが夢中になっているマンガやYouTube、ゲームなどを、あえて学びの入り口として活用しています。

たとえば、子どもに大人気のマインクラフトから立方体の問題につなげたり、食塩濃度の問題を日常生活に絡めて考える、地理を実際の場所や地図と結びつけて学んだりするなど、雑談を交えながら自然と学びに触れる機会をつくっていきます。

ココロミルで教える先生たち

山田さん:そのためにも、まずは大人が子どもが好きなものを理解する姿勢が欠かせません。私は、担当する子の好きなゲームやドラマ、マンガは必ずチェックしていました。授業の前後に、マイクラのアイテム制作の話題や、ドラマの展開について語り合うことも、コミュニケーションの大きなきっかけになります。

こうして信頼関係を築きながら、日常の興味と学びを結びつけていくことで、最初は学習に関心が薄かった子どもでも、少しずつ「学ぶっておもしろい」と感じて前向きに取り組めるようになっていきます。

再出発を支えるのは親の「進路への知識」と「あせらない姿勢」

――これからの進路や将来に悩む保護者が意識すべきポイントは何ですか?

山田さん:まずは、子どもの将来に、たくさんの選択肢があることをぜひ知ってほしいです。

中学受験をする選択もあれば、高校受験、チャレンジスクール、高卒資格を取って大学に行く、など今はあらゆる手段があります。親御さんも、知識や視野を広げたうえで、冷静に判断していってほしいと思います。

――不登校の子が中学受験に挑戦する場合は、どんな点に注意したらよいのでしょうか。

山田さん:あせらず、ゆっくり見守ってほしいです。結果を求めて「すぐに成績を上げて」「どの科目もきっちり点数を取って…」と急かすのは、繊細な子どものプレッシャーになりやすい。だからこそ、必要以上にあせらず、責めず、子どもたちが小さなステップを丁寧に積み重ねる時間を信じてほしいと思っています。実際、たくさんの子どもたちが中学受験をきっかけに、大きく変わっていきました。

中学受験は、もう一度自分の人生を選び取り、前へ進む力を取り戻すための「再出発のチャンス」になり得ます。だからこそ、親子で一緒に、ひとつ階段をのぼっていく姿勢を大切にしてほしいと思います。

後編では、実際に不登校だった子どもが、有名私立中学へ合格するまでの道のりを伺いました!

後編はこちら

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山田佳央 ユサブル 1760円(税込)

子どもの未来に向けた選択肢を知り、あせらずに不登校に対処して頂くための1冊。

不登校がメリットに変わる本書のおもな内容
「「受験」が不登校を解決した」
「不登校だからできた受験の成功実例」
「不登校問題の現状を整理する」
「不登校の子が通える教育機関」
「不登校からの「受験」ガイド」
「公立学校が抱える不登校の構造的要因」
「不登校の子に合う学校を見抜くポイント」
「教育機関の選び方と具体的な指導方法」

お話を伺ったのは

山田佳央さん 個別指導塾ココロミル

個別指導塾ココロミル塾長。早稲田大学政治経済学部卒業後、日本たばこ産業株式会社(JT)に勤務。その後2009年に「ココロミル」を開校。指導歴20年以上、これまでに3,000名以上の子どもと保護者に指導・相談を行ってきた。集団・個別・映像の多角的なアプローチで支援を行い、偏差値30台から早慶レベルまでのV字回復を多数実現。御三家、早慶付属、MARCH付属をはじめとする幅広い合格実績を持つ。
著書に『国語の心得』(国書刊行会)、『小学国語900のことば』(双葉社)、『不登校からの進学受験ガイド』(ユサブルhttps://kokoromiru.co.jp/)。

ココロミルへのご相談は>>こちらから

構成・文/牧野 未衣菜

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