29歳で芸人に挑戦! 家族との別居で揺れた芸人人生最大のピンチと、二児の父としての思い【お笑い芸人・こたけ正義感さん|後編】

弁護士でありながら、お笑い芸人として活動するこたけ正義感さん。弁護士になる夢を叶えた後、29歳でお笑いの世界へ。結婚し、父親になった今、自分の「やりたい」を大切にしてきたこたけさんは、子どもたちとどう向き合っているのでしょうか。

【後編】では、芸人を目指したきっかけや家族とのエピソード、二児の父としての子育て観に迫ります。

「やってみたら?」妻のひと言で芸人の道へ

――司法試験に合格して弁護士として働き始めたら、一般的には人生安泰なのかなと思うのですが、なぜリスクをとってお笑いの世界に飛び込もうと思ったのでしょうか

こたけさん:もちろん弁護士をやっていれば生活はできました。でも、僕は一度やりたいと思ってしまったら、やるまでそのことしか考えられなくなるタイプなんです。

考えてみたら弁護士もそうですよね。同じように芸人にも興味が湧いたら、もう止められなかったです(笑)。

――小さいころは憧れが強すぎて自分がやれるとは考えられなかったとおっしゃっていましたが、実際に芸人をめざすきっかけは何だったんですか?

こたけさん:弁護士になって3年目くらいのときですね。僕があまりにお笑いを好きすぎるので、当時お付き合いしていた、今の妻が「そんなに好きだったらやってみれば?」って言ったんです。

小さい頃から、自分なんかが足を踏み入れる世界じゃないと思っていたんですけど、それを聞いて「なるほど、今からでもやってみてもいいんだ」って。そう思った瞬間、お笑いのスクールを調べ始めました。僕、「なるほど」って思ったら止められなくなる病気なんですよ(笑)。

――すごい行動力です! 奥様も思い立ったらすぐ行動するタイプなんですか?

こたけさん:いや、まったく逆です。かなり慎重ですし、思いついても簡単には始めないですし。本当に真逆ですね。

――慎重な奥様ですが、こたけさんの背中を押してくれたんですね。

こたけさん:妻もお笑いが大好きで、昔から「芸人さんと結婚したい」みたいな夢があったらしいんです。

結果的に僕を芸人にすれば、その夢が叶うじゃないですか。もしかしたら、そういう裏テーマもあったのかもしれないですね。妻から真相を聞いたことはないので、全部僕の推測なんですけど(笑)。

29歳で飛び込んだ、青春のような養成所生活

――そして、現在所属されているワタナベエンターテインメントの養成所へ入られたんですね。

こたけさん:ありがたいことにワタナベエンターテインメントの養成所には社会人コースがあるんですよ。僕は土曜日コースだったので、毎週土曜日に朝から夕方まで通っていました。

もちろん卒業したからといって所属できるわけではないんですけど、「大人の習い事みたいなものかな」と思えたので、比較的ハードルは低く入れたと思います。その頃は、まだプロになれるなんて全然思っていなくて、力試しみたいな感覚でしたね。

――実際通われてみてどうでしたか?

こたけさん:もう信じられないくらい楽しかったです。毎週ネタを作って持っていくんですけど、「このネタどう思う?」って妻に意見をもらいながら考えたりして。講師の先生からは、お笑いのロジックとかテクニックとかを教えてもらえるんですよ。それがもう楽しくて仕方なかったですね。

もともと分析するのは好きだったんです。テレビでネタを見ながら、素人なりに「ここが面白いんかな」とか勝手に考えていたんですけど、養成所ではその答え合わせみたいなことができる。本物の知識がどんどん入ってきて、お笑いを勉強すること自体に興奮していました。

――ここでも、こたけさんらしく勉強熱心だったんですね。

こたけさん:めちゃくちゃ勉強しましたね。養成所が終わった後も同期と飲みに行って、経験者の人にいろいろ教えてもらったり。それに同期が本当に面白いんですよ。普通にしゃべっているだけで面白い人がいっぱいいて。

今振り返ると、あれは青春でしたね。もしかしたら人生でいちばん青春していた時期かもしれません。

養成所時代

「今年結果が出なければ辞める」芸人人生最大のピンチ

――弁護士になって芸人にもなって、と順調に見えますが、くじけそうになったことはないですか?

こたけさん:自分から「もう辞めたい」と思ったことは一度もないんですけど、続けられないかもしれないと思ったことはあります。

息子が2歳くらいのときに、妻が仕事の関係でアメリカへ行くことになったんです。もしかしたら、そのままずっとアメリカに住むことになるかもしれないという状況で。

当時の僕は芸人6年目くらい。まだ何の結果も出していないし、テレビにも全然出ていない。家族と離れてまで続けるべきことなのか…とすごく悩みました。

――それは決断を迫られますね。

こたけさん:家族とも話して「今年一年で何も結果を残せなかったら辞めよう」という結論になりました。ところが、その年に『R-1グランプリ2023』の決勝まで進むことができたり、テレビにもポンポンと出られるようになったりして、いろいろなことがつながりだしたのです。

背水の陣で不思議な力が出たのかもしれないですけど、もう少し頑張って続けてみようと。しばらくは家族と離れて暮らすことへの葛藤もありましたが、いろいろあってその一年後くらいに家族が日本へ帰ってくることになったので、結果的に本当によかったです。今は日本で家族一緒に暮らしています。

ABCラジオ『こたけ正義感の聞けば無罪』(毎週日曜日22時~)のパーソナリティを務める

――ここからが本格的な弁護士と芸人の二刀流生活ですか?

こたけさん:弁護士の仕事って、一つ事件を受けたら終わるまでに2年、3年かかったりするんですよ。それに、芸人として食べられるようになるまでは辞められないというのもありました。

――軸足は芸人ということだったんですね。

こたけさん:ようやく「こたけ正義感」としての活動をメインにできるようになってきて、本当にうれしい状況です。

弁護士経験は、お笑いの武器になる

――弁護士とお笑い、それぞれの経験が生きていると感じることはありますか?

今年は全国4都市でスタンダップコメディショー「弁論2026」を開催

こたけさん:法律とか事件とかをネタにするときは、やっぱりちゃんと理解しているものなので、伝わるように話せるというのは、弁護士経験がお笑いに生きているなと思いますね。

その逆、お笑いが弁護士に役立つことは本当にひとつもないです(笑)。弁護士をやっていて、「笑かしてやろう」みたいなのはまったくありません。求められてもいないですし。

政治や社会的なテーマにも切り込み、笑いに昇華させるスタンダップコメディショー「弁論」が、今の僕の活動の軸になっているので、これからもっと広げていけるように頑張りたいですね。

昨年の「弁論」

アメリカにいる息子へ、テレビ電話で読み聞かせしていた日々

――アメリカと日本で離れていたときは、お子さんとどのように関わっていたんですか?

こたけさん:毎日テレビ電話で、僕が図書館で借りてきた絵本を、画面の向こうの息子へ読み聞かせしていました。絵本が好きだったので、一生懸命見てくれていましたね。日本語を忘れても困るなと思ったので、日本語の絵本を選びました。

――テレビ電話で読み聞かせとは素敵ですね。

こたけさん:遠距離生活をしていた息子も、もう6歳。今はもうひとり家族が増え、2歳の娘もいるのですが、朝起きて準備をして保育園に送り、夕方は仕事がなければ迎えに行って、寝かしつけもしています。

家族一緒に生活できるようになった今は、読み聞かせはもちろんですが、そのほかのことも、できることは何でもやっています。

――お子さんは、今も本がお好きなんですか?

こたけさん:変わらず好きですね。家にも本はいっぱいありますが、しょっちゅう図書館に行って大量に借りてきています。

我が家はテレビやiPadなどのスクリーンはあまり見せていなくて、テレビは朝30分とか、土日は映画1本とかルールを決めているんです。それもあって、本を読んでいる時間が多いのかもしれません。

子どもをひとりの人間として見ている

――これから先、勉強のことや進路については、親としてどう関わろうと考えていますか?

こたけさん:あまり関わらないと思います。自分が親に言われて何か意思を変えたことがないんですよ。むしろ親に言われたら、「もうそれはやらない」みたいなタイプだったんで。

なんか人に言われてやることって知れてるじゃないですか。多分、自発的に思い立ったことじゃないと、本当に身に付かないと思うんです。

休日、息子さんと過ごす姿

――その道にうまく誘導するようなこともしないと思いますか?

こたけさん:きっとしないですね。僕、子どもをあんまり子どもと思っていない節はあります。ひとりの人として見ているというか…。

親が希望する道に誘導するとか、そういう姑息なことをしても、バレそうだなって(笑)。安全に育ってくれれば、それでいい。本人の意思に任せます。

勉強に限らず、何かに熱中していてほしい

――勉強についてはどうでしょうか。司法試験を経験したこたけさんだからこそ、「勉強はしておいたほうがいい」と思うことはありますか?

こたけさん:そこについても全然ないですね。ただ、何かに熱中していてほしいなとは思います。熱中しそうなことがあれば習い事を探したり、サポートをしたりはしますけど、勉強にこだわってはいないです。

――お子さんは今、将来何になりたいと言っていますか。

こたけさん:息子は「エンジニアになりたい」と言っていますね。映画『ゴーストバスターズ』が好きなんですが、すごくかっこいいエンジニアの人が出てくるから、それになりたいらしいです(笑)。

――こたけさん自身、弁護士と芸人という二つの夢を叶えてこられました。お子さんへ将来についてアドバイスするとしたら?

こたけさん:芸人になりたいって言われたら、それだけは困ってしまうかな…うまくいく確率が低すぎるんで(笑)。それ以外なら何でもいいです。まあ、司法試験を受けたいって言われても、それはそれで心配すると思うんですけど。自分が知っている世界に行かれると、不安が増すというのはあるかもしれないですね。

でも、子どものことを信頼していれば、アドバイスなんかしなくてもいい。放っておいても大丈夫だと思うんですけどね。

前編では、負けず嫌いだったという子ども時代から司法試験一発合格までの道のりを伺いました。

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4人きょうだいの末っ子で、負けず嫌い ――小さい頃はどんなお子さんだったんですか? こたけ正義感さん(以下、こたけさん):4人...

全国4都市を巡る過去最大規模の単独ライブツアー「弁論2026」が開催!

【公演概要】

■2026年11月4日(水)開場18:00 開演19:00
東京エレクトロンホール宮城
■2026年11月11日(水) 開場18:00 開演19:00
SAWARAPIA 福岡県立ももち文化センター大ホール
■2026年11月24日(火)開場18:00 開演19:00
ロームシアター京都メインホール
■2026年12月4日(金)開場18:00 開演19:30
東京ガーデンシアター

◆最速YouTubeメンバーシップ先行、Weプレ!先行は6月30日(火)23:59受け付け終了
【最速プレイガイド先行】ローソンチケットは7月9日(木)23:59受け付け終了
【第2次プレイガイド先行】ローソンチケット・チケットぴあ・イープラスは7月16日(木)12:00~7月29日(水)23:59
【一般販売】ローソンチケット・チケットぴあ・イープラスは8月22日(土)10:00受け付け開始

『弁論』公式HPは>>こちら

お話を伺ったのは

こたけ正義感 弁護士・お笑い芸人

1986年京都府生まれ。香川大学法学部卒業後、立命館大学法科大学院を修了。司法試験に合格し、2012年に弁護士登録。弁護士として活動する傍ら、2016年にワタナベコメディスクールへ入学し、2017年から芸人としての活動をスタート。『R-1グランプリ2023』では決勝進出。2024年からスタンダップコメディショー『弁論』を始め、2025年の『弁論』はYouTube3週間限定公開すると再生数166万回越え。『弁論2026』は全国4箇所12,000超えのキャパで開催し、東京ガーデンシアターで単独ライブを開催する史上初のピン芸人に。YouTube『こたけ正義感のギルティーチャンネル』は登録者49万人超え。

この記事を書いたのは

篠原亜由美 ライター

法学部卒業後、通信教育などを手がける教育業界の企業に勤務し、その後ライターとして、女性誌や複数のWeb媒体で、暮らしや子育てを中心としたライフスタイル分野で取材・執筆を行っている。2児の母で、子どもはすでに成人しており、中学受験や大学受験を経験。実体験をもとに、同世代の女性に寄り添えるような記事を心がけている。

撮影/五十嵐美弥

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