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4人きょうだいの末っ子で、負けず嫌い
――小さい頃はどんなお子さんだったんですか?
こたけ正義感さん(以下、こたけさん):4人きょうだいの末っ子なんですけど、上から姉、姉、兄で、僕なんです。当時は歳だけじゃなくて背も小さくて、学年でもいちばん前に並ぶほど。小さいからこそ、めちゃくちゃ負けず嫌いだったと思いますね。勝負事は絶対に負けたくないタイプでした。
――勉強でも兄弟で点数を競ったりしていたんですか?
こたけさん:いや、兄弟3人とも勉強が本当に苦手で。そう言うと「またまた~」って思うじゃないですか。でも本当に、想像している1.8倍くらいできないんですよ(笑)。3人とも勉強で苦労している様子を見ていたので、反面教師にしたのかもしれませんね。
――ご両親から勉強や進路について何か言われることはあったのでしょうか?
こたけさん:全然なかったです。うちはかなり放任主義で、進路についても口を出された記憶がないですね。昔からずっと、やりたいことは自分で決めていました。

「屁理屈ばかり言うなら弁護士になれば?」何気ない母のひと言
――弁護士になりたいと思ったのは、いつ頃だったのでしょうか?
こたけさん:中学3年生くらいです。たぶんドラマの影響もあったと思います。僕、昔から屁理屈ばっかり言っていたんですよ。それで母親に「そんなに屁理屈ばかり言うんだったら、弁護士になれば?」って言われて。
「そんな仕事あるんだ!」と思いました。屁理屈を言ってお金をもらえる仕事があるなら、いいかもって(笑)。
――お笑いも小さい頃から好きだったんですか?
こたけさん:大好きでした。地元が京都だったので、土日は常にお笑いの番組をやっていて。兄と姉が特にお笑い好きで、兄が録画していた番組を見ているうちに自然と好きになった感じです。
でも、僕にとって芸人さんは憧れの存在で、「選ばれた人たちの世界」という感覚だったので、自分がなりたいとか、なれるとか、考えたこともありませんでした。
――クラスでは目立つタイプだったんですか?
こたけさん:小学校の頃は結構目立ちたがり屋でした。クラスでも笑いを取りにいくタイプだったと思います。お笑いが純粋に好きだったんですよね。

どこの大学に行っても同じだと思っていた
――中学生の頃から弁護士をめざしていたとのことですが、高校時代はどのように進路を考えていたのでしょうか?
こたけさん:弁護士にはなろうと思っていたんですけど、だからといって勉強を頑張っていたわけではないんですよ。
高校1、2年生くらいのときに進路指導の先生に「弁護士になりたいんですけど、どこの大学をめざせばいいですか?」って聞いたんです。そうしたら先生も弁護士のなり方については詳しくなかったようで、「とりあえず偏差値の高い大学に行ったらいいんちゃうか」といった答えで。
それを聞いて、逆に「法学部がある大学ならどこでも一緒かもな」と思ってしまって、極端に受験勉強へのモチベーションが下がったんですよね(笑)。別に司法試験を受けるだけやし、法学部ならどこでもいいかって。
――そうなんですね! そしてその結果、香川大学に進学されたと。
こたけさん:そうです。大学入試センター試験(現在の大学入学共通テスト)を受けて、その点数で行けそうな国立大学の法学部を探して、近い場所に香川大学があったという感じでした。
センター試験では日本史を選択したんですけど、割と勘が当たってまして、たまたま点がとれた(笑)。今考えると情けない受験生でしたね。
法学部なのに、司法試験をめざす人がほとんどいなかった
――実際に大学へ進学してみて、どうでしたか?
こたけさん:いちばん驚いたのは、法学部なのに司法試験をめざしている人がほとんどいなかったことです。当時、司法試験を受ける人なんて学年に1人か2人いるかどうか。今振り返ると、とにかく情弱(情報弱者)でした。
弁護士をめざしていたのに、受験のことも司法試験のことも何も知らないまま大学に入ってしまったというか…それでも当時は、「行く大学なんて関係ない」とまだどこかで思っていました。
香川には司法試験の予備校はなかったんですけど、通信のビデオ教材を見られる場所が1か所だけあって。そこに通いながら、一人で勉強していました。
――大学というと、サークルの仲間たちとワイワイ遊ぶイメージもあります。
こたけさん:一応バスケットボールのサークルには入っていて、週1回はバスケをしていました。でも、ノリが合わなかったのかな…お笑いが好きすぎたのかもしれないですけど、生意気にも「面白い人がいないなあ」と思っていました(笑)。京都から香川に行って、地域性の違いとかもあったのかも。あまり楽しめていませんでした。
それに香川は、東京みたいに遊ぶ場所がたくさんあるわけでもなくて。みんなでうどんを食べに行くくらいの遊びしかなかったんですよ(笑)。結果的には、それが勉強するにはよかったのかもしれないですね。

司法試験をめざし、歯磨きをするように机に向かった日々
――大学時代は、どのようなペースで勉強していたのでしょうか?
こたけさん:ロースクール(法科大学院)の入試があるので、その勉強が結構大変で。授業を受けて、それから図書館に行って勉強するという日々です。
当時の香川大学は夜でも教室が使えたので、みんなが帰った後の教室で一人で勉強したりもしていました。
――一人で勉強するのは寂しくなかったですか?
こたけさん:それが意外と大丈夫だったんですよね。今思うと、ちょっとその孤高感に浸っていたのかもしれません(笑)。
――その後、ロースクールに進学されたんですよね。
こたけさん:そこからは本格的に司法試験に向けた勉強漬けの生活でしたね。朝起きたら、パジャマみたいな寝た格好のまま、まず机に向かって勉強して、ご飯を食べて学校に行って、また勉強して…長いときは、ご飯とお風呂とトイレ以外はずっと勉強。移動中も講義を聞いたりしていたので、本当に一日中勉強のことを考えていましたね。

――こたけさんのYouTube(こたけ正義感のギルティーチャンネル)で「歯磨きのように勉強する」とお話しされていたのが印象的でした。
こたけさん:司法試験って長期戦なので、やる気だけでは絶対に続かないんですよ。だからモチベーションを維持しようとするんじゃなくて、モチベーションなんて関係ない状態をめざしていました。
歯磨きって、「今日はやる気があるから磨こう」とか考えないじゃないですか。勉強もそれと同じで、当たり前に机に向かう状態を作ろうとしていました。
――焦りや不安はありませんでしたか?
こたけさん:大学院なので、同級生はみんな就職していますし、兄弟もみんな就職して、僕一人だけ学生だったんですよ。
周りで学生を続けているのが自分だけみたいな状況だったので、「ここで勉強しなかったら、どうなるんだろう」という気持ちは常にありました。
焦りもありました。社会に何の貢献もせず、当たり前のように学生を続けているけど、本当に大丈夫だろうかって。司法試験に受かる保証もないし、費用もかかっていますからね。
しかも、それまで勉強がずっとうまくいっていたわけでもないんです。進学校や名門大学に行っている人たちみたいに、勉強そのもののノウハウもない。どうやって長時間勉強するのか、効率よく勉強するのか、息抜きをどうするのかも分からなかったんです。
「友達と買い物にでも行こうかな」と思っても、本当は勉強しなきゃいけないという気持ちが頭から離れない。情弱だったので、自分がどのレベルまでいけば合格できるのかも分からないんですよ。
だから、とにかく可処分時間は全部勉強に使わなきゃいけない、みたいな強迫観念で勉強していました。

司法試験直前、プレッシャーでご飯の味がしなくなった
――ご飯はちゃんと食べられていたんですか?
こたけさん:実家だったので、その点は助かりましたね。ただ、司法試験の直前期は本当にしんどくて、ストレスでご飯の味がしなくなったんですよ。
――味がしなくなるほど? それは心配です。
こたけさん:自分でも怖かったです。朝4時くらいに動悸で目が覚めたりもしていたので、奈良まで、お坊さんのお説法のCDを買いに行き、夜はそれを流しながら寝ていました。
――お説法を聞きながら眠りについていたんですか?
こたけさん:なんとなく人の声を聞くと安心して。ラジオでもよかったけど、面白い話を聞くと逆に目がさえて寝られへんから。お坊さんのお説法は、よく眠れました(笑)。家族には、夜に部屋から男の人の声が聞こえると気味悪がられていましたが(笑)。
――合格を信じて、とにかく前だけを向いて勉強していたのでしょうか。
こたけさん:ほかに選択肢がなかったから、とにかく全力を尽くそうって。でも、先が見えないのが怖すぎたので、ダメだったときのことも考えていました。
落ちたら起業でもするか、とか。具体的にどういったことで起業したいとかがあったわけじゃないですよ。ただ、「落ちても人生が終わるわけじゃない」「起業すれば何とか生きていけるかもしれない」と思うことで、自分の中でセーフティネットを作っていました。
3回見直しても信じられなかった合格発表
――そして、司法試験本番を迎えます。
こたけさん:受験直前は、「今回は間に合わなかったな」という感覚があったんですよ。もちろん全力は尽くしたんですけど、自分の中では完成度が足りないと思っていて。
だから、「今回は落ちるかもしれない。でも、あと1年頑張れば受かるかもしれないな」と思いながら受けていました。

――それでも一発合格されたんですよね。
こたけさん:本当にラッキーだったと思います。
司法試験って5月に受けて、発表が9月なんですよ。その間、学校も卒業しているし、結果も分からない、とんでもなく長くて恐ろしい期間。でも「どうせ落ちているだろう」と思っていたので、合格発表の日まで変わらず勉強を続けていました。
――合格発表のときは、やっぱりうれしさが爆発した感じだったんですか?
こたけさん:いや、それが全然で(笑)。
合格者の番号は大阪の法務局の掲示板に貼り出されるんですけど、発表の瞬間はみんなワーッて狂喜乱舞するんですよ。
でも僕はその日、甥っ子を病院に連れて行かなきゃいけなくて、発表の時間には行けなかったんです。着いた頃には人もほとんどいなかったんですけど、掲示板はまだ残っていて。見に行ったら、自分の番号があったんです。
でも、「なんであるんや?」って理解ができない(笑)。一度掲示板の前から離れてみるものの「今、番号あったよな?」と思ってもう一度見に行ってみたら、やっぱり番号はあるんです。
すると今度は「受験票じゃなくて、違う紙を持ってきてしまったのかな」と思い、またその場を離れて…結局3往復くらいして、ようやく受かっていることを認識できました。
――長かった受験生活が終わった瞬間ですね。
こたけさん:そうですね。もちろん合格はうれしかったんですけど、それ以上に「これで進路が決まった」という安心感のほうが大きかったかもしれません。
ただ、そのときは、このあと自分がもうひとつの大好きだった世界に飛び込むことになるなんて、思いもよりませんでした。
――【後編】では、ずっと好きだったお笑いの世界をめざしたきっかけや家族とのエピソード、そして二児の父として子どもたちとどう向き合っているのかについて伺います。
全国4都市を巡る過去最大規模の単独ライブツアー『弁論2026』が開催!

【公演概要】
■2026年11月4日(水)開場18:00 開演19:00
東京エレクトロンホール宮城
■2026年11月11日(水) 開場18:00 開演19:00
SAWARAPIA 福岡県立ももち文化センター大ホール
■2026年11月24日(火)開場18:00 開演19:00
ロームシアター京都メインホール
■2026年12月4日(金)開場18:00 開演19:30
東京ガーデンシアター
◆最速YouTubeメンバーシップ先行、Weプレ!先行は6月30日(火)23:59受け付け終了
【最速プレイガイド先行】ローソンチケットは7月9日(木)23:59受け付け終了
【第2次プレイガイド先行】ローソンチケット・チケットぴあ・イープラスは7月16日(木)12:00~7月29日(水)23:59
【一般販売】ローソンチケット・チケットぴあ・イープラスは8月22日(土)10:00受け付け開始
『弁論』公式HPは>>こちら
お話を伺ったのは
1986年京都府生まれ。香川大学法学部卒業後、立命館大学法科大学院を修了。司法試験に合格し、2012年に弁護士登録。弁護士として活動する傍ら、2016年にワタナベコメディスクールへ入学し、2017年から芸人としての活動をスタート。『R-1グランプリ2023』では決勝進出。2024年からスタンダップコメディショー『弁論』を始め、2025年の『弁論』はYouTubeで3週間限定公開すると再生数166万回越え。『弁論2026』は全国4箇所12,000超えのキャパで開催し、東京ガーデンシアターで単独ライブを開催する“史上初のピン芸人”に。YouTube『こたけ正義感のギルティーチャンネル』は登録者49万人超え。
この記事を書いたのは
法学部卒業後、通信教育などを手がける教育業界の企業に勤務し、その後ライターとして、女性誌や複数のWeb媒体で、暮らしや子育てを中心としたライフスタイル分野で取材・執筆を行っている。2児の母で、子どもはすでに成人しており、中学受験や大学受験を経験。実体験をもとに、同世代の女性に寄り添えるような記事を心がけている。
撮影/五十嵐美弥