障がい児の子育てで夫婦の意見が異なるときはどうしたらいいのか? 一緒に歩んでいくために必要なこと【作業療法士・クロカワナオキさんが語る】

『障がいのある子どもを育てながらどう生きる?』の著者で作業療法士のクロカワナオキさんの連載記事シリーズ。
今回は、障がいのある子どもの子育てにおける夫婦の意見のズレと、それでも一緒に歩んでいく方法について、優しい視点で紐解きます。

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障がいのある子どもの将来を見通すことは難しく、それゆえに夫婦の間でも子育てに対する考え方に隔たりが生まれやすくなります。

子育てに対する価値観に隔たりがあると、夫婦間で感情的な衝突が起こりやすくなります。そして、そのことがきっかけで離婚に至る人もいます。

実際、子育てや家事に協力しない夫の存在は、妻にとってかえって負担になっているケースもあるようです。そのため、離婚によって気持ちが少し楽になったと感じる人もいます。

しかしそれは経済的な余裕が失われたり、片方の親に何かあったときに子どもが頼れる人が少なくなったりするリスクを伴う選択でもあります。

そう考えると、夫婦間で子育てについての意見のズレが生じた場合には、まず互いの考えをすり合わせることが大切になります。

夫婦間の意見のズレの背景にある「子どもへの理解のギャップ」

「夫が子どもの障がいのことを、あまり理解していないように見える」という話を時々耳にします。

病院の受診や療育への付き添い、ほかの障がい児を育てる親と話をする機会は、どうしても母親の方が多くなりがちです。その結果、夫婦の間で子どもへの理解度に差が生まれることがあります。

もしパートナーが「普通の子どもと変わらないから、自然に育っていくだろう」と考えているとしたら、子どもに積極的に関わっていく必要性を感じにくくなるでしょう。

そして、このような子どもへの理解のギャップが、意見のズレの原因になることもあります。

そのためまずは、子どもの障がいの特性について、夫婦間で共通の理解を持つことが大切になります。医療や福祉の専門職から説明を受ける機会には、できるだけ夫婦で同席し、それが難しい場合でも内容を共有することが大切です。

夫婦を続けるための気づきは、意見のズレの中にある

子育てに対する夫婦の意見のズレは、放っておくとより大きなズレへと発展する可能性があります。そのため、まずは子育てに対する考えを互いに話し合い、家庭の状況を客観的に確認する機会が必要になります。

その際、日頃考えていることを話すのも大切ですが、「将来どのようになってほしいのか」、「そのために親としてどのようなことができると思っているのか」といった長期的な視点で話をしてみると、互いの展望を確かめやすくなります。

会話の中で、パートナーが子育てにあまり意欲的ではないように感じることがあるかもしれません。だからといって、すぐに「子育てを自分ごととして考えていない」と判断するのは早すぎることがあります。

なぜなら、子どもの障がいを受容するには時間がかかるうえ、夫婦の間でも受容に要する時間には差があるからです。一見すると無責任な態度に見えたとしても、実際には不安を抱えていたり、自分の気持ちが整理できていなかったりすることがあります。

考えに隔たりがあったり、前向きな返事がもらえなかったりすると、どうしてもパートナーの変化を求めてしまいがちです。

しかし、人の考えは求められたからといってすぐに変わるものではありません。パートナーの考えを理解しようとしながら、変化を急がずに待つ姿勢も大切になります。

パートナーの子育てに対する考えや思いを具体的に知ることができれば、協力できる部分も見つけやすくなります。そしてそれは、「子育てへの共通の想い」を探すことでもあります。

障がいのある子の子育てには、先の見えない不安がつきものです。また、予想外のトラブルが発生すると、夫婦でさまざまな決断をしなければならなくなります。そのような状況では、互いの意見の違いに目を向けるよりも、共通している想いを確かめることの方がより重要になってきます。

例えば、「子どもに幸せになってほしい」「毎日を楽しく暮らしてほしい」「なるべく自立した生活ができるようになってほしい」といった願いは、意見の違いがあったとしても共通していることが多いように思います。

そして、子どもへの想いが重なっていることを確認できるだけでも、子育てにおける夫婦の協力関係は良い方向へ変わりやすくなります。

夫婦の意見の違いはなくさなければいけないのか?

子育てについての夫婦の意見が一致している方が、負担の偏りは少なくなり、家族の雰囲気も良くなります。しかし実際には、多少なりとも意見の食い違いが生まれるのが普通です。そして、その中には話し合いだけでは埋まらない部分も存在します。

とはいえ、そのような意見の違いは、夫婦がお互いの価値観を子どもに押し付けたり、子どもを困惑させたりしなければ、それほど大きな問題ではありません。

なぜなら、子どもは自分の考えに基づいて生きたいのであって、親の思い通りに生きたいわけではないからです。

子育てのゴールは、あくまでも子どもが自立に近づくことであり、夫婦の足並みを揃えることではありません。

問題になるのは、夫婦が互いに考えを変えるよう求め合い、家庭内の空気が悪くなってしまうことです。夫婦の不仲は家族全体の雰囲気を悪くし、子どもにも不安を与えてしまうからです。

そういう意味で、最も大切なのは、どのようなときも子どもの思いを中心に据えながら夫婦でコミュニケーションをとることではないかと思います。

大人の価値観ではなく「子どもの思いに寄り添うために自分たちに何ができるのか」を話し合い続けていれば、時間とともに夫婦の足並みも自然と揃いやすくなっていくからです。

また子どもにとっても、考え方の違う両親が話し合いながら自分のことを考えてくれているという状況は、必ずしも悪いものではありません。その姿を通して、物事にはさまざまな意見があることを学べますし、人と意見が異なったときにどのようにすり合わせを行うのかを知る身近なモデルにもなるからです。

障がい児の子育てでは、その負担の大きさから夫婦で協力できるかどうかが重要な意味を持ちます。しかし、そのために本当に大切なのは、意見を一致させることではなく、夫婦の間に心理的安全性があることです。

そのためには、互いの意見をすぐに判断したり否定したりせずに受け止めるための心の余裕が必要になります。

福祉サービスを活用したり、周囲の人を頼ったりしながら、少しでも余裕を持って子育てに取り組める態勢を整えること。そうした工夫によって心のゆとりを確保することで、相手を理解するための心の余白を生み出すことができます。

夫婦でリラックスできる時間を持つことは、意見のズレを調整するためにも意外と大切なことではないかと思います。

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記事執筆

クロカワナオキさん 作業療法士

医療の分野で20年以上のキャリアを持つ作業療法士。広汎性発達遅滞がある子どもを成人まで育てた2児の父。著書『障がいのある子どもを育てながらどう生きる? 親の生き方を考えるための具体的な52の提案』(WAVE出版) はAmazon売れ筋ランキング 【学習障害】で1位 (2025.6.6)。

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