発達障害の子育てにありがちな「ネガティブ思考」の手放し方。「発達障害=不幸ではない」ASD発達支援アドバイザーShizuさんの言葉

PR

18万部のベストセラー『発達障害の子どもを伸ばす魔法のことばかけ』(講談社)の著者である、ASD発達支援アドバイザーのShizuさんが、2021年に『発達障害の子と親の心が軽くなる ちゃんと伝わる言葉かけ』(KADOKAWA)を出版しました。前書がABA(応用行動分析)を利用した子どもへの働きかけ法が中心だったのに対し、今回は、働きかけに加えて、親子がいかにして心を軽くして楽しく生活していけるか、キャラクター「エゴキンマン」を使った思考の変換法などがまとめられています。新たなアプローチで保護者に寄り添うShizuさんが、伝えたかった思いとは。

14年前、3歳でASDの診断を受けた息子。親が苦しくて辛い顔をしていると療育もうまくいかないことに気づいて…

息子が3歳でASD(自閉スペクトラム症)の診断を受けたときは、とにかくショックで不安でした。そして、一時期は焦りから、我が子をいかにして「普通の子」にするかに躍起になりました。ABAを学び、その手法を徹底することに囚われ、「こうでなければいけない!」とガチガチになって、上手くいかないとイライラして、子どもも自分も追い詰めてしまいました。子どもにあたった後で、罪悪感を持ち、自分を責めていました。苦しくて仕方がない自分の思考は止められない、変えられないと思っていました。そして、周りの子と比較しては、遅れないように、同じようにできるようにしたいと考えて、本当に辛かったです。

発達障害は「見えない障害」と言われることもあります。パッと見が普通なため、親は踏ん切りがつかず、ある意味、なかなか諦めることができません。そのため、「訓練を受ければ何とかなるのでは」「ここを頑張れば、普通の子に近づけるのでは?」と思い、「もっと頑張れ」「しっかりしろ」と、子どもを追い詰め、自分自身も苦しくなるケースがあります。親が苦しくて辛い顔をしていると、せっかく頑張っている療育も、うまくいかなくなります。親も子も自分を責めることをやめて、自分に優しくすることを大切にしてほしいのです。

※エゴキンマンは無意識のマイナスな思考のクセに気づかせてくれる大切な存在。頭の中で聞こえる否定的な声がエゴキンマンの声です。まずは「エゴキンマンにやられてた!(笑)」と何度も気づいて、自分と切り離して客観的に自分の思考のクセを知ることが大切。

 発達障害の子育てはマイナス思考に陥りがち。「エゴキンマン」にやられない、不安の手放し方、気持ちの切り替え方を身につけて

自分の子育て経験と、子どもへの訪問療育の学びの経験を書いた前書『発達障害の子どもを伸ばす魔法の言葉かけ』を出版してから、全国で講演会を行っています。

講演会の中で、過去の自分と、今の自分の思考の癖みたいなものを探るアンケートをとるのですが、もともと楽観的で明るかったお母さんが、発達障害のある子の子育てをするなかで、以前よりマイナス思考に陥ることがよくあります。ほかのママが朗らかに明るく子育てをしているのがうらやましく見えてしまうのですね。そんな気持ちになるのはよくわかるので、その不安の手放し方や、気持ちの切り替え方法を伝えて、まずは、お母さん自身が気持ちを緩めて、ご機嫌になってほしいと思います。お母さんがご機嫌だと家族は安心し、取り組んでいる療育の効果が出たり、よい成長につながったり、相乗効果も生まれます。

発達障害=不幸ではない。発達障害のある子を育てた先輩達の事例を励みに

発達障害=不幸ではないことを、伝えたいと思っています。

発達障害は不便なことや、周囲の手助けやフォローが必要なことがあるけれど、決して不幸ではありません。それを体現しているのが、多くの先輩方の事例です。

新刊『発達障害の子と親の心が軽くなる ちゃんと伝わる言葉かけ』(以下、『ちゃんと伝わる言葉かけ』)では、発達障害や吃音・場面緘黙などの障害がありながら、成長して大人になり、仕事を得て自分らしく暮らす人たちの事例を紹介しています。当事者の方たちが、どんなことで辛さを感じ、どんなサポートをしてもらいたかったか、さまざまな事例を読んでいただき、理解者が増えることを望んでいます。

人はよくわからないものは不安に感じます。そのため、発達障害と診断されたら不安になるのは当たり前です。あまりに不安で、勉強することも詳しく知ることも嫌で背けてしまう人もいるけれど、知ることは大事だと思います。発達障害のある子を育てた先輩方の話を聞くと、過去は不安で泣いていたけど、「こうでなきゃ」と思っていたことを緩めていったら、楽しく生活できるようになり、「きっと、大丈夫」と思えるようになったとおっしゃいます。そこが大事なのだと思います。

 私自身、今は息子のことも、「なんとかなる」「いろいろな人の手を借りて、幸せに暮らしていける。大丈夫」と、根拠のない自信を持っています。昔の自分とは全然違います。今でも凹んだり、落ち込んだりすることはありますが、それも、「ああ、またマイナスな気持ち(エゴキンマン)にやられていた」と、客観的に見ることができるようになり、気持ちを切り替えられるようになりました。

『ちゃんと伝わる言葉かけ』では、頭の中で聞こえる否定的な声、苦しみを“エゴキンマン※”というキャラクターの必殺技にかかったとイメージする手法で、問題を客観視し、冷静に自分を見つめる方法を紹介しています。

「比較競争ムチ打ちの技」

「他人が全員素敵に見えるフィルター」

「被害者の会 会長」

「いい子症候群」など、

14の必殺技をイラストにして親子別で紹介。面白いネーミングにして、くすっと笑ってしまえるのがいいと思っています。

※エゴの語源は「自己=私」です。この考え方はHappy理論研究所(日常を心地よく生きるための意識の持ち方を研究し、それぞれの型を作り実践しているコミュニティー)の考え方を参考にしたものです。

読むと「気持ちが楽になり生きやすくなった」の声が

『ちゃんと伝わる言葉かけ』を読んだ読者の方からは、「気持ちが楽になった」という声が多いです。いただいた感想を紹介します。 

・受験のとき、二次障害になり、高校で発達障害の診断を受けた息子に、「エゴキンマン」の話など、心のしくみについて話したところ、気持ちの切り替えができたみたいで感謝されました。

・本を読んで、自分が頑張らないと!と思うタイプだったことがわかり、“なんとかなるさ”という考えで過ごしたいと思った。本をお守りがわりに、励ましてもらっています。

・“広い視野”と“柔軟な考え”。まさに固定概念ガチガチだった私のために、息子は産まれてきてくれたのだ‥‥と、胸が熱くなりました。素晴らしい気づきをありがとうございます。

・生きやすくなる本だなと思います。心があったかくなり、伝える親にもパワーを与えてくれます。不要な思い込みを捨て、自分らしく楽しく生きていく、具体的な方法も書かれていて、すぐ実践できる。多くの人に読んでもらいたい本です。

・この本を読むと、「幸せに生きていける道は、いくらでもあるよー」と、やさしく声をかけられている感じがしました。

 

自己否定をしてしまう自分も否定しないで

ユニークな「エゴキンマン必殺技」を通して、自分の思考癖に気づく習慣がつくと、自分を客観的に俯瞰してみることができ、否定的な心の声、不安に支配され続けることがなくなり、生きるのが楽になります。

紹介している事例や言葉かけ、自分にやさしくする自己対話のやり方などを実践し、自己否定することなく、どんな自分にもOKを出してください。自己否定してしまう自分も否定しなくていいです。○○と思っちゃうから、○○と思うんだね。と、自分に寄り添うことが大切です。この本を読むと、「なんとかなるか。大丈夫かも」という根拠のない自身が生まれると思います。頑張りすぎている自分、こうでなければ!と囚われているものを緩めて、自分らしく楽しく生きていきましょう。

 

 

教えてくれたのは

ASD発達支援アドバイザー
Shizu

長男が3歳でASD(自閉スペクトラム症)と診断される。ABA(応用行動分析)を学び、自らの子育てと訪問療育の経験をまとめた、2013年に出版した『発達障害の子どもを伸ばす 魔法の言葉かけ』(講談社)は18万部のベストセラーに。電話コンサルや全国で講演活動を行っている。親子で場面緘黙を経験している。

 構成/江頭恵子

編集部おすすめ

関連記事