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目次
Q1. どんな本を選んだらいいの?
A. 子どもが興味を持った本がおすすめ
低学年と同様、読書感想文を書くには、主人公の気持ちに共感したり、ストーリーの展開にドキドキしたりできる本がおすすめです。
また、世代を超えて多くの人々の心に残っている本、たとえば20年以上読み継がれてきたロングセラーの名作なども読みやすく、感想文も書きやすいでしょう。
中・高学年では図鑑好きな子も多いのですが、図鑑は読書として親しむ分には良いものの、読書感想文用の本としては不向きです。物語とは違い、起承転結などスト―リー性がなく「ここが好き」「ここがいい」という焦点を当てにくいからです。感想文を書くなら、図鑑よりも動物の行動や生態などが書かれている科学読み物のほか、『ファーブル昆虫記』『シートン動物記』など物語仕立ての本のほうが書きやすいでしょう。
本選びで迷ったら、その子の「中心軸になっている本」を選ぶのがポイントです。「中心軸になっている本」とは、その子が興味を持っていることや好きなことに関する本のこと。その子の興味関心に応じて本を選びましょう。
興味関心の幅が広がる中学年では、想像力を刺激するファンタジーもおすすめです。高学年は、伝記や歴史本など、自分の生き方や社会との関りなどについて考えるきっかけを与えてくれる本も、ぜひ読んでほしいところです。
Q2. 親が本を選んで与える? それとも子どもに選ばせたほうがいい?
A. 複数の本の中から子ども自身に選ばせたい
自分で本を選ぶのは楽しいですし、子どもの中に「自分で選んだのだから、ちゃんと読むんだ」という責任感のような気持ちも芽生えます。
低学年の場合、親や先生から勧められた本を素直に読む子もいますが、中・高学年になってくると、友達同士で「この本がおもしろい」「あの作家のシリーズがいい」という情報交換して本を選ぶケースも見られます。
「これを読みなさい」「この本で読書感想文を書きなさい」と一方的に押しつけるのではなく、本人に選ばせるスタイルが望ましいでしょう。
読書感想文コンクールの課題図書の場合も、数冊の候補から子ども自身に選ばせると、後で感想文をスムーズに書くことにつながります。
Q3. 親ができるサポートは?
A. 親子それぞれに感想を話し合おう
中学年では、一人で読書する子が増える一方、親子一緒に本を読んだり、親が読み聞かせをしたりすることを好む子も多くいます。子どもの要望に応じて、サポートしてあげましょう。
高学年になると、一人で読書したいと思う子が増えますが、親が同じ本を読んで感想を話し合うのは楽しいと思うようです。
中学年も高学年も、本についての会話は感想文を書くときに役に立つので、ぜひ感想を話し合いましょう。お互いに感じたことを伝えあうと、思ってもみなかった感想や考え方に驚いたり、感心したりするかもしれません。それも、感想文の材料になります。
子どもに感想を聞くとき、一つだけ注意しておきたいのは、子どもが答えやすいように問いかけることです。「どんなふうに思った?」というような漠然とした聞き方だと、子どもはどう答えたらよいかわからないことも多いからです。
おすすめしたいのは、「どこ(どのシーン)が好きだった?」という聞き方です。「どこ?」と聞かれれば、子どもは「ここ!」と答えられますから。では、どうしてそのシーンが好きなのか、心に残ったのか。好きなところとその理由を書けば、それはもう立派な感想文です。
「もし自分だったらどうするか」「逆の立場だったら、どう思うか」など、自分なりの考えを深めるのも、感想文を書く手掛かりになります。
Q4. 読書感想文を書く前に、やっておくとよいのは?
A. 「読書ノート」と付箋が役に立つ
自分が読んだ本の感想を記録しておく「読書ノート」が役に立ちます。読書感想文コンクールには課題図書がありますが、宿題としての読書感想文は自由に本を選べます。
とはいうものの、読書感想文を書きやすい、あるいは「この本で読書感想文を書きたい」と思える本に、すぐに出合えるとは限りません。
そういうとき、「読書ノート」が役に立ちます。箇条書きやメモ程度でも、おもしろかった部分や感動したセリフなどを記録しておくと、それを手掛かりに読書感想文用の本として、もう一度読み直すことで、書きたいことや伝えたいことが見つけやすいのです。
また、印象深いシーンや感動したところに付箋を貼るのも、おすすめです。付箋は「おもしろいと思ったところ」「不思議?わからない?と感じたところ」「納得したところ」などによって、色分けするのもおすすめです。
Q5. 文章を書くために欠かせないアイテムはある?
A. 類語辞典がおすすめ!
類語辞典は、表現の幅を広げてくれる魔法みたいなアイテムです。たとえば「はやい」という表現。類語辞典を引くと、「高速」「駆け足」「すばしっこい」「超スピード」「急ピッチ」などさまざまな言葉に出合えます。ということは、感想文を書くときにも、同じ表現が重ならないよう、しかも微妙なニュアンスも意識して言葉を選べます。
残念ながら、現在、学校現場ではあまりなじみのない類語辞典ですが、読書感想文だけではなく、言葉の力をつけるためにも活用してほしいものです。
Q6. 読書感想文は1日で書ける?
A. 1日ではムリ。じっくり時間をかけて取り組もう
読書感想文は夏休みの中盤~終盤、それも終了間際に慌てて取り組む子も見られますが、とても1日では書けないものと考えておきましょう。
なぜなら、「この本がおもしろかったら、これで読書感想文を書こう」と思える本に出合うまでに時間がかかるかもしれないし、親子で感想を話し合ったり、実際に何を書くか全体の構成を考えたり、下書きや清書をしたりするために、思っている以上に時間が必要だからです。読書感想文には、早めに取り組むことをおすすめします。
Q7. 読書感想文に取り組むメリットはある?
A. 親子のコミュニケーションとして活用を
親としては「読書感想文の宿題を完成させなくちゃ」と焦ったり、なかなかうまくいかずイライラしたりするかもしれませんが、ぜひお子さんとのやりとりを楽しんでください。
同じ本を読み、感想を話し合う、そしてそれを感想文としてまとめる、この過程がすべて、親子の大切なコミュニケーションであり、思い出になると思います。
読書感想文は、小学生夏休みの貴重な思い出
中学生になると、読書感想文の宿題に親子で取り組む機会はないと考えると、小学生のうちに関われるのは、貴重な機会。この夏、親子で本と読書感想文を通じて、コミュニケーションを図り、素晴らしい夏休みにしましょう!
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◆お話を伺ったのは…
鹿児島県生まれ。鹿児島県公立小学校教諭を経て、筑波大学附属小学校国語科教諭。『例解学習漢字辞典』(小学館)編集委員。『例解学習ことわざ辞典』(小学館)監修。全国国語授業研究会理事。「子どもの論理」で創る国語授業研究会会長。主な著書に『子どもを読書好きにするために親ができること』(小学館)『「学びがい」のある学級』(東洋館出版社)等。
この記事でお話を伺った白坂洋一先生による、読書教育に関する様々なアプローチの提案書。我が子によい読書習慣を身につけてほしいと願う親にとっては必読です。巻末の特別付録には、ブックガイド「小学生なら読んでおきたい理想の本棚246冊」が収録されています。