DCD(発達性協調運動障害)は乳児期から兆候があることも!ミルクや離乳食でむせる、おすわりが遅い…。早期発見のためのチェックリストとサポートのための運動遊び

発達障害の一種のDCD(発達性協調運動障害)は、子どもの発達障害の中で最も割合が高く、乳児期から兆候が見られることもあります。DCDと乳幼児の発達支援に詳しい、弘前大学大学院教授 斉藤まなぶ先生に、乳幼児期のDCDのサインやDCDを疑ったときにしたほうがよいことを伺いました。

年齢別DCDのサインとは!?

DCDの特徴は、年齢に見合わず過度に不器用なことや運動が苦手なことです。年齢別の主なサインは、次の通りです。

0歳代

・母乳やミルクの飲みが悪い・むせやすい

・離乳食を食べるとむせやすい

・寝返り、はいはいがうまくできない

・はいはい、おすわりができたのが遅い など

 1~2歳代

・歩き始めたのが遅い

・寄りかからずに座ると、倒れやすいなど不安定

・人のまねをして動くのが苦手 など

3~5歳代

・平坦な場所でも転びやすい

・歩き方や走り方がぎこちない

・階段の上り下りがぎこちない

・三輪車やキックバイクに乗れない

・疲れやすくて、姿勢が悪い

・食べこぼしが多い

・ボタンやファスナーが苦手

・字を書くことに興味がない

・豆など小さな食べ物を指先でつまめない

・箸や鉛筆がうまく使えない

・着替えや移動などに時間がかかる など

就学後

体育(球技、体操、走るなど)が苦手

・靴ひもが結べない

・箸がうまく使えない

・コンパス、分度器、鉛筆削り(手動)などの学習道具が器用に使えない

・文字をマスに合わせて書けない など

国も早期発見や発達支援の実施を推奨する動きに。気になる様子があるときは頻度をメモして、乳幼児健診で相談を

上記のサインを見て「もしかして、うちの子もDCD?」と思ったときは、乳幼児健診で相談しましょう。「むせやすい」「転びやすい」「食べこぼしが多い」などの場合は、頻度をメモしておくといいでしょう。

また1歳6カ月健診のときに、歩けない、「ママ」「ブーブー」など意味のある言葉が出ないときは必ず担当の小児科医や保健師さんに相談してください。

以前は、乳幼児健診で、保護者が相談しても「もう少し様子を見ましょう」と言われ、経過観察となることが多かったのです。
20171月 総務省が『発達障害者支援に関する行政評価・監視 結果報告書』を発表し、「適切な支援が行われない場合、発達障害者に、社会生活への不適応、不登校、鬱病等の二次障害が発現することも有り得るとされており、早期の発見及び発達支援の実施が重要である」として、乳幼児健診でも早期発見をして適切な支援につなげるように、各自治体に呼びかけています。もし「経過観察」と言われた場合は、いつまで様子を見ればよいのか確認しましょう。

DCDは、ほかの発達障害と併存するケースが多い

DCDは、ASD(自閉スペクトラム症)やADHD(注意欠如・多動性障害)、LD(学習障害)など、ほかの発達障害と併存するケースが多いのも特徴です。5歳で、DCD単独の子は、23%ぐらいと言われています。

またDCDは、ほかの発達障害のように広く知られていないうえ、特性も目立ちにくく個性と思われることも多いので、園や小学校の先生が気づきにくい傾向もあります。「うちの子、手先が不器用すぎるかな?」など気づくのは、ママ・パパのほうが多いです。

そのため発達障害の診断がついていて(疑いも含む)、過度に手先が不器用であったり、運動が苦手な場合はDCDを疑って専門家に相談しましょう。

DCDが原因で登園や登校を渋るケースも

なかには「運動が苦手だったり、手先が不器用だったりするのは個性と考えてはダメなの?」と思うママ・パパもいるかもしれませんが、DCDが原因で登園や登校を渋るようになる子もいます。実際にあった14歳の男の子の例を紹介します。

【体験談】保育園ではお遊戯が、小学校では運動が苦手。中学校から登校を渋るように

A君は小さいころから運動の模倣が苦手で、保育園でのお遊戯会でダンスを踊ることができませんでした。小学校では、走ることや球技が苦手でした。

中学のクラスで球技のチーム分けがあり、チームごと一人ずつメンバーを選んでいきました。A君は順番を待っていましたが、最後までどのチームにも選ばれませんでした。その出来事があってから、体育で球技がある日はおなかが痛くなり、学校を休むようになりました。 保護者が「学校で嫌なことがあるの?」と聞くと、A君は小さな声で「体育の授業を受けたくない」と言いました。保護者は A君が小さいころから運動が苦手なことは知っていましたが、A君が悩んでいるとは思いませんでした。

こうしたケースは、幼児や小学生でも見られます。

子どもの感覚や発達を促すためは、いろいろな遊び・運動にチャレンジを!

発達障害は、完治するものではありませんが、適切なサポートをすることで苦手なことが少しずつできるようになったりします。

DCDのサポートで大切なのは、手指や体を使った遊びや運動です。「保育園(幼稚園)に通っているから、うちの子は十分、運動している」「小学校の休み時間は校庭で遊んでいるから大丈夫!」と思うママ・パパもいるかもしれませんが、「おにごっこなどで走ることが多い」など運動が偏っていることもあります。

またママ・パパに「お手玉を投げて、キャッチする遊びはできますか?」と聞くと「そうした遊びはしたことがありません」と言われることもあります。子どもの感覚や発達を促すためは、いろいろな遊び・運動にチャレンジさせることが大切です。

気になる子におすすめの遊び&運動を紹介します。

【おすすめの遊び&運動】

1 デコボコの道を歩いたり、重いものを運ぶなど体幹の筋肉を刺激したり、バランスをとる動きを意識して行いましょう。

 

2 ブロック遊びやシールを貼る・はがす、穴にひもを通すなど手先を使った遊びをさせましょう。指先を使う遊びが苦手な子は、箸やはさみを使うなど日常生活の中で手先を使う機会を増やしてください。

3 走る、ジャンプするなどのダイナミックな動きばかりでなく、ゆっくり歩く、ゆっくり階段を上り下りするなど、ゆっくりした動きも意識して取り入れましょう。ゆっくりした動きができるようになると、感覚のバランスが整っていきます。

子どもが自信を失わないために、周りの子とは比べない子育てを

DCDの特性がある子は、成長とともに自分が苦手なことを自覚して、ちょっとしたひと言に傷つくこともあります。また自信を失うと、新しいことに挑戦する意欲がそがれることもあります。

そのためママ・パパに大切にしてほしいのは、周りの子と比べて評価しないことです。苦手でもいいから楽しく体を動かしたり、手先を動かしたりする環境を作ってあげてください。

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記事監修

斉藤まなぶ先生|弘前大学大学院保健学研究科・同大学医学部心理支援科学科教授
医学博士。公認心理師。日本精神神経学会精神科専門医・指定医、厚生労働省認定認知行動療法スーパーバイザー。著書に『吃音?チック?読み書き障害?不器用?の子どもたちへ 保育所・幼稚園・巡回相談で役立つ“気づきと手立て”のヒント集』(共著・診断と治療社)ほか。MTXスポーツ・関節クリニック非常勤医師。

取材・構成/麻生珠恵

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