学齢期でいちばん多い発達障害が「DCD」。縄跳び・ブランコができない、ボタンが留められない、よく食べこぼす…サインは過度な不器用さ

発達障害の一種にDCD(発達性協調運動障害)があります。あまり広くは知られていないため、「初めて聞いた!」というママ・パパもいるのではないでしょうか。
DCDの主な特徴は、過度な不器用さです。またDCDは、ほかの発達障害と併存しているケースが多く、DCDだけで発症するケースは少ないと言われています。DCDに詳しい、青山学院大学教授で小児精神科医の古荘純一先生に教えていただきました。

ほかの発達障害があって、不器用なときは疑いを

DCD(発達性協調運動障害)は、Developmental(Motor)Coordination Disorderの略で、発達障害の一種です。主な特徴は、過度な不器用さです。

DCDは、下の図のようにほかの発達障害と併存しているケースが多いので、ASD(自閉スペクトラム症)やADHD(注意欠如・多動症)などの診断がついていて(疑いやグレーも含む)、過度な不器用さが見られる場合はDCDを疑いましょう。

資料提供 古荘純一先生

DCDは、自分がイメージした通りに体や手指を動かすのが苦手

DCDは、自分がイメージした通りに体や手指を動かすことが苦手なため、「ぶきっちょ」「おっちょこちょい」「運動オンチ」「とろい」などと思われることが多々あります。

たとえばDCDだと、食べこぼしが多い子がいます。人は通常、食事の際、目で見て食器の位置を確認したり、口までの距離を予測したりして、手先を器用にコントロールしながら、口に食べ物を運びます。無意識ですが自分がイメージした通りに手先を動かして、スプーンやフォークなどの食具を使っているのです。

しかしDCDだと、自分がイメージした通りに手先を動かすことが苦手なため、食べこぼしが多くなりがちです。意識して食べこぼさないようにしようとすると、かなり時間がかかることもあります。

乳児期・幼児期・学童期の主なサイン

DCDは、実は乳児期からサインが見られます。乳児期、幼児期、学童期によく見られるDCDのサインは次の通りです。

【乳児期】

  • ●ミルクを飲んだりするとむせやすい
  • ●寝返りができるようになるのが遅い
  • ●ハイハイの動きがぎこちない

 【幼児期】

  • ●ことばが不明瞭
  • ●姿勢が悪い
  • ●食べこぼしが多い
  • ●三輪車やキックバイクなどにうまく乗れない
  • ●ブランコがこげない
  • ●スキップができない
  • ●物をうまくつかめない、すぐに落とす
  • ●はさみを上手に使えない
  • ●ボタンが留められない
  • ●字を書いたり、ぬり絵が苦手
  • ●友だちとの遊びについていけない  など

 【学童期】

  • ●ボールを投げたり、キャッチすることが苦手
  • ●鉄棒や縄跳びが苦手
  • ●陸上競技や水泳が苦手
  • ●靴ひもが結べないなど、身支度に時間がかかる
  • ●文字がうまく書けない
  • ●黒板の字を写すのが遅い
  • ●整理整頓が苦手
  • ●図形が苦手
  • ●道具をうまく使えない(コンパス、定規、はさみ、家庭科での裁縫道具など)
  • ●楽器を弾くことが苦手 など

学齢期のDCDの割合は510%。ほかの発達障害よりも多い

DCDが最初に報告されたのは1938年です。85年も前に報告されているのですが、いまだに認知度は低いです。しかし学齢期のDCDの割合は510%と言われています。ADHD(注意欠如・多動症)は37%、ASD(自閉スぺクトラム症)は1~2%なので、発達障害の中ではDCDの割合は高いことがわかります。

DCDは診断されにくいため、支援につながりづらいことが課題

しかし、なぜDCDの認知度は低いのでしょうか。理由の1つには、現代の医療では薬で症状を軽減したりすることができないということがあります。

また前述のとおり、DCDはほかの発達障害と併存するケースが多く、併存している発達障害よりも症状が比較的軽いため見逃されがちです。そのため医療機関を受診してもDCDと診断されないこともあります。

DCDと診断されないために、療育に通ったり、園や小学校で子どもの特性に理解を示してもらえないなど支援につながりづらいのがDCDの課題です。

学習面に影響が出たりする場合は受診を

DCDは診断されにくい」と言うと、「それでは受診は不要なのでは?」と考えるママ・パパもいるかもしれませんが、受診が不要というわけではありません。とくに、次の4つに該当する場合は医療機関を受診しましょう。

DCD受診の目安

幼児期早期(~2歳)】 歩行がぎこちなく転びやすい、けがをしやすい

【幼児期後期(3~5歳)】  お絵描き、折り紙、遊園地、公園での遊びが、うまくできない

【就学後(6歳~】ノートをとると時間がかかりすぎ、正確さに欠けるなど、学習面に影響がある

【二次障害につながる兆候(幼児期~就学後)】苦手なことが原因で、登園や登校を渋る、からかわれるなどして、友達関係がうまくいかない

診断が腑に落ちないときは、医師に「DCDではないでしょうか?」と伝えてみてください

医療機関を受診するときは、ママ・パパから「DCDではないでしょうか?」と医師に聞いてみてください。先ほども話しましたがDCDは認知度が低いため、ママ・パパから「DCD」という言葉を出さないと、見落とされる可能性もあります。診断に疑問を感じるときは、セカンドオピニオンを受けましょう。

他の子と比べない、そして、無理強いは禁物です

子どもに過度な不器用さがあるとき、ママ・パパに注意してほしいのは次の2点です。子どもを追い込まないことが大切です。

1 まわりの子と比べない、プレッシャーをかけない

「みんなは、できているよ!」「〇〇ちゃんは上手だよ」「〇年生なのに自分でできないの?」など、まわりの子と比べたり、プレッシャーをかけるようなことばかけはNG

 2 子どもが嫌がることは無理強いしない

たとえばダンスやサッカー、野球、スイミングなどの習い事についていけずに、子どもが「辞めたい」と言うときは、無理強いは禁物です。子どもの意思を尊重しましょう。無理に続けると「自分だけ上手にできない」と追い込まれてしまうこともあります。

苦手なことを把握して、丁寧に教えるとできることも

DCDの子は、苦手なことでも丁寧に教えてあげると少しずつできるようになることもあります。そのためママ・パパは「どこが苦手なのか?」をよく観察して、優しく、根気よく教えてあげましょう。

教えてあげることで、自分でブランコがこげるようになったり、キャッチボールができるようになったりする子もいます。

また1つ苦手が克服できたからといって、すぐにステップアップしようとするのはNG。たとえば縄跳びの前跳びが1回できたら、「次は5回跳べるように頑張ろう!」といきなり目標を高くするのではなく、その回が定着してできるようにしてあげてください。

DCDの子には「頑張ればできる!」などの根性論は逆効果です。ハードルを低くして成功体験を積み重ねることで、自信をつけさせてあげてください。

苦手をサポートする便利グッズを使おう

苦手をサポートするためには、便利グッズや支援グッズを使うこともおすすめです。たとえば鉛筆が上手に持てないときは、専用の補助具があります。ノートのマス目から字がはみ出す場合は、マス目に凹凸加工を施したノートなどもあります。

ママ・パパだって、日常生活の中で便利グッズは使っていますよね。たとえば野菜を刻むのが大変だったり、上手にできないときはフードプロセッサーを使ったりしているのではないでしょうか。子どもの苦手をサポートする便利グッズや支援グッズを特別視しないでほしいと思います。

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11月23日にDCDをテーマにした古荘先生のトークイベントが開催されます

古荘純一先生が、DCDについてわかりやすく解説するトークイベントが開催されます。オンラインの参加もできます。

日時:2023年11月23日(木) 19:00~20:30(受付18:30~)*オンライン配信あり

会場:ブックハウスカフェ(東京都千代田区神田神保町)

主催:本の街でこころの目線を合わせる実行委員会(ブックハウスカフェ・公益財団法人 共用品推進機構・合同出版)

参加費用:1,000

古荘純一先生|青山学院大学教育人間科学部教育学科教授
昭和大学医学部小児科学教室専任講師などを経て現職。小児精神科医。専門は、小児科学、小児神経学、小児精神神経学、児童青年精神神経学、てんかん学。『なわとび跳べないぶきっちょくん ただの運動オンチだと思ったら、DCD(発達性協調運動障害)でした!』(監修・合同出版)など著書多数。

取材・構成/麻生珠恵

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