“災害級”の猛暑!「暑さに負けない」外遊び&運動の前後に摂るべき食べ物とは【専門家直伝】

気象庁によれば今年の夏も、大変な暑さだと言います。外遊びなどにわが子を出かけさせる際には熱中症が心配ですよね。こまめな水分補給や帽子の着用などはもちろんですが、暑さに強くなる(強くさせる)日ごろの工夫はないのでしょうか。
そこで今回は、立命館大学スポーツ健康科学部・教授の後藤一成さんに、わが子を暑さに強くするための食習慣を聞きました。

暑さに強くなる栄養素は「糖質・たんぱく質」

暑い日には、水分と塩分を補給する、ほとんどの人が知っている対策だと思います。しかし、それ以外にも、暑さに強い体をつくるために必要な栄養素があるとご存じでしょうか。

立命館命館大学スポーツ健康科学部・教授の後藤一成さんによると正解は、

  • 糖質
  • たんぱく質

なのだとか。過去(2010年)の研究でも、糖質とたんぱく質を含んだ飲料を毎回の運動後に飲ませた被験者グループと、そうでない被験者グループを比較したところ、血しょう量が前者は増え、深部温度の増加も抑えられたとの話です。

血しょう量とは平たく言えば血そのものの量。運動をして脱水すると血管の中の血も量が減り、血液の粘り気が増すと後藤さんは言います。血管の中の血が減って粘り気が増せば当然、心臓をはじめとした臓器にも負担がかかります。

そこで、糖質とたんぱく質を摂取し、血そのものの量を増やす習慣を、本格的な夏に入る前から続ければ、暑さに強い体をつくれるのですね。

暑い環境での運動後の「糖質+たんぱく質摂取」の効果
図表作成:立命館大学スポーツ健康科学研究科/後藤一成

運動後、速やかに口にさせたい食べ物

では、具体的にどの程度のたんぱく質と糖質を、どのタイミングで口にさせればいいのでしょうか。

後藤さんによると「運動後、速やかに」との話。例えば、おにぎりとゆで卵をセットで食べさせれば、糖質とたんぱく質が同時に摂取できます。

ゆで卵1個あたりには6グラムのたんぱく質が含まれています。摂取すべきたんぱく質の目安は、体重当たり0.18~0.36グラム。

体重20キロの子どもであれば3.6~7.2グラム、体重30キロの子どもであれば5.4~10.8グラム、体重40キロの子どもであれば7.2~14.4グラムが目安になります。

「糖質+たんぱく質」の一例としての、おにぎりとゆで卵。バナナと牛乳でもOK。

体の大きい子の場合、ゆで卵1個では足りませんので、コップ1杯の牛乳を水分補給を兼ねて運動後に飲ませたり、おにぎりの具材を工夫したりするといいはずです。

たんぱく質の摂取は筋肉量の増大にも役立ちますから一石二鳥ではないでしょうか。

▼こちらの関連記事もチェック

五輪選手をサポートする食の専門家直伝!子どもの成長にいい「黄金おにぎり」レシピとは?
習い事の送迎時に食べさせたい「おにぎり」のレシピ 運動系の習い事をしていると、平日の場合は学校終わりの夕方から夜までの練習...

遊ぶ前に食べさせたいアイススラリーとは

さらに、運動前のちょっとした食習慣の工夫も。

夏場に、運動をしたり外遊びしたりする前に、アイススラリーなどを口にさせると、深部体温(直腸温)の増加を抑えられると実験で確認されたそうです。

アイススラリーとは、スムージーとシャーベットの間のような飲み物。

アイススラリーとは、液体に微細な氷の粒が混じったシャーベット状の飲み物で、冷蔵庫から出した飲み物が4℃くらいなのと比べて、マイナス1℃と低温。細かい氷の粒に液体が混じった流動性のある飲み物のため、体に浸透しやすく、効率よく内側から体を冷やせるという特徴もあります。

画像引用:大正健康ナビ|体を内側から効率よく冷やす『アイススラリー』とは?

(出典:大正健康ナビ|大正製薬 製品情報サイト

後藤さんによれば、スポーツドリンクを凍らせ、ミキサーで攪拌(かくはん)しても似たような飲料を自作できるそうです。

それこそ、用意がない場合は、かき氷やアイスクリームでも、一定の効果が期待できるとの話。

夏本番の外遊びや運動の前には、アイススラリーに似た冷たい何かを口にさせ、深部体温の増加を抑える工夫をすればいいのです。

灼熱環境での運動のアイススラリー摂取の効果
図表作成:立命館大学スポーツ健康科学研究科/後藤一成

ちなみに、アイススラリーを口にしても、筋肉の温度は下がらないため、運動のパフォーマンスに悪い影響が出るわけでもないのだとか。

その意味で、スポーツ系の習い事の試合など大事な場面でも口にさせて問題ないとの話でした。あわせて参考にしてください。

こちらの記事もおすすめ

【医師監修】小学生も熱中症に注意! 症状・対処法から予防法、お助けアイテムまで解説
小学生も注意したい熱中症 気温が上がってくると心配なのが熱中症です。 小学生はまだ体が未発達なうえ、自分で熱中症を注意したり、予防し...

取材・文/坂本正敬 協力/立命館大学

【取材協力】

後藤一成さん
立命館大学スポーツ健康科学部・教授。日本学術振興会 特別研究員、早稲田大学スポーツ科学学術院助教、立命館大学スポーツ健康科学部准教授を経て、2017年より現職。

岡本紗弥さん
立命館大学スポーツ健康科学研究科在学中。アスリートを対象に、体温の日内変動を用いたコンディション評価に取り組む。実験室での基礎研究に加え、トップレベルのアスリートに対する科学的サポートでも活躍中。

 

編集部おすすめ

関連記事