目次
小さな成功体験から達成感を得る
自由研究の目的は、達成感を味わうこと、親子の信頼関係を築くことの2つです。よいものを作ることや、終わらせることの優先順位はあくまでその次でしかありません。それよりも、色を上手に塗れた、朝顔の観察をするために早く起きられた、など、小さな成功体験から達成感を得ることが大切です。それが自己肯定感を高め、自信につながります。そして、うまくできたことを親が褒めてくれると子どもは心から嬉しくなり、親子関係もどんどん良くなっていきます。
①【熱中体験型】いちばんオススメ!子どもの「好き」を活かそう
私がオススメしているのは「熱中体験型」です。好きなことに熱中すると脳からドーパミンが分泌される→幸福度が高まる→自己肯定感が高まる→自信につながる→親子関係もよくなるというポジティブなサイクルが生まれます。さらに、ドーパミンが放出されると、脳の血流が増えてシナプスが増え、地頭が良くなり、IQも高くなるだけでなく、やりたいことを自分で見つけてどんどん挑戦する力や、試行錯誤する力、やり遂げる力などの非認知能力も身に付きます。
ポイント 1: 存分に応援してあげる
好きなことに熱中している子どもたちを、存分に応援してあげましょう。普段、子どもたちは忙しくて好きなことややりたいことを思う存分楽しむ時間がなかなかありません。しかし、夏休みは比較的時間があるので、日頃やりたくてもできなかったことがたっぷりできるチャンス。子どもが熱中して活動に取り組めるように、必要な道具を揃えてあげたり、図書館に一緒に行ったりしてあげることで、子どもはますますやる気になり、夢中になっていきます。
ポイント 2: 子どもの興味を観察する
粘土遊びやブロック遊び、ペットのお世話など、大人から見て「これが研究なの?」と思うようなことでも、子どもが夢中になれるのであれば何でも構いません。お子さんは普段、どんなことに夢中になっていますか? よく観察してそれを見つけてあげてください。
ポイント 3:熱中している様子を写真に撮る
熱中している様子を写真に撮って記録しておけば、「研究」としてまとめて学校に提出することができます。「絵を描くこと」に熱中しているのであれば、絵を描いている姿や、色を塗っている様子、使っている画材、描きあがった作品などを写真におさめておきましょう。「サッカー」に夢中な子であれば、ボールを蹴っている様子や、練習している姿、チームメイトとの交流、試合中の場面などもよいですね。
その記録を提出できる形にするために、写真をプリントアウトしてアルバムに貼り、日付や説明、コメントを添えます。「これはこういうふうに作って、材料集めが大変でした」「ここで工夫しました」などと説明を加えると、熱中したことが目に見える形でまとまり、素晴らしい自由研究が完成します。
②【何かのついで型】旅行や帰省を有効活用
「何かのついで型」は、家族旅行や里帰りのついでに、その記録を写真に撮ったり、アルバムにまとめたりする方法です。旅行先のことを詳しく調べて、その情報を書き込んでいくとよいでしょう。
ポイント 1:計画からいっしょに立てる
旅行や里帰りの計画段階から、次のようなことをいっしょに調べてみましょう。
・行き先
・交通手段
・現地でやること
・行先の名産や名所、歴史など
ポイント 2 :旅行の記録を写真に撮る
旅行記録も立派な自由研究です。「これは〇〇駅です」「ここで変わった電車を見ました」「ドクターイエローを見かけました」など、時系列に沿って記録を残すとよいですね。お盆に里帰りする場合、その地域の研究をするのもよいでしょう。地域の特産品や歴史、文化について調べて、写真と一緒にアルバムに貼り、そこにコメントを書いていけば素晴らしい記録ができあがります。スマホで写真を撮るのも簡単ですし、インスタントカメラ(チェキ)で撮るのも楽しい方法です。
ポイント 3: 無理強いは禁物
無理にやらせると、旅行や里帰りそのものが嫌になり、せっかくの体験が台無しになります。子どもが興味を示さない場合は、無理に取り組ませないようにしましょう。
③【思いつき単発型】市販のキットやグッズをうまく使おう
思いつき単発型は、書店やホームセンターで販売されている実験キットや自由研究用のグッズを使う方法です。
ポイント 1: キットを選ぶ
書店、ホームセンター、インターネットなどで手軽に手に入るキットの中から、面白そうだと感じたものを選びましょう。
ポイント 2:無理なく仕上げられる
キットには必要な材料や手順がすべて揃っているので、迷うことなく進めることができ、自由研究を無理なく終わらせられます。まとめ用のフォーマットがついている場合はそれを活用して提出の準備をします。ついていない場合も、①や②のようにキットに取り組んでいる過程を写真に撮っておき、アルバムに貼ってコメントを書いてまとめれば、さらに充実した自由研究になります。
ポイント 3: 親はイライラしないよう注意!
自由研究のキットは、学年に応じた難易度が設定されていても、実際にやってみると「え?これが2年生用?」と思うことも。意外と難しく、子どもが苦戦する姿にイライラして、𠮟りつけてはいけません。大人でも挑戦してみたら思った以上に難しかったことはよくあります。子どもを責めるのではなく、別のものに変更するなど、冷静に対処してあげてください。
④【コンクール応募型】応募フォーマットを活用!
本格的な自由研究に挑戦したいのであればコンクールに応募するのもよいでしょう。コンクールのフォーマットは決まっているので、それを埋めていけば自然と完成するのもお手軽でいいですね。
ポイント1: 応募フォーマットを活用する
自由研究をコンクールに応募する際には、決まったフォーマットを活用することが効果的です。私のHPでも自由研究楽々まとめフォーマットを紹介していますが、多くのコンクールが用意しているフォーマットに従うことで、自然と研究内容が整理され、応募しやすくなります。
◎こんな風に書くとよい
タイトル:植物の成長条件
名前:HugKum花子
研究を始めたわけ: 植物がどのような条件で最もよく成長するかを知りたかったため。
研究の目的:異なる光のあたり方が植物の成長にどう影響するかを調べること。
予想:植物は日光が多い場所で最もよく成長するだろう。
方法:
1. 同じ種類の植物を3つのグループに分ける。
2. それぞれのグループを異なる光条件で育てる(直射日光、間接光、暗い所)。
3. 各グループの成長(高さや葉の数)を毎日記録する。
結果:直射日光のグループが最も成長し、暗い所のグループは成長が遅かった。
まとめ:植物は日光が多い環境で最もよく成長した。この研究から、植物を育てる際には適切な光をあてることが重要だと分かった。
ポイント2: 熱中体験型の子どもはハマる!
コンクール応募型は少しハードルが高いですが、まさに科学的研究そのものであり、科学的な思考力と追究力がみにつきます。またコンクールで評価されれば、自信とやる気が一層高まるでしょう。子どもにとって大きな励みとなり、次の挑戦への意欲にもつながります。
最初に方向性のすり合わせを
「どのタイプの自由研究にする?」
自由研究に取り組む前に、本格的にやるのか軽く済ませるのか、親がどれくらい関わるのかなどを決めておくとよいでしょう。そうすれば、いたずらに焦ることもなくなります。「コンクール応募型」に取り組む場合で、特に子どもが慣れていない場合は、親の根気強い関わりが必要です。一方、軽く済ませたい場合は、「何かのついで型」や、「思いつき単発型」でも構いません。もちろん、軽く始めたものが予想以上に楽しくなり、途中から本格的に取り組むことになった場合は方向転換すればよいのです。
「いつやる?」カレンダーに書き込む
次に、自由研究をいつ始めるかを決めましょう。書き込めるカレンダーを用意し、夏休みを次の4つの期間に色分けします。
・7月25日~31日…青で囲む
・8月1日~10日…緑で囲む
・8月11日~20日…ピンクで囲む
・8月21日~夏休み最終日…赤で囲む
そして、どの期間に自由研究をやるのかを夏休みの初めに決め、カレンダーに書き込みます。自由研究はなかなか取りかかりにくいので、計画を立てずにいると、夏休みの終わりになって慌てることになりがちです。最初に話し合って、計画的に進めるようにしましょう。
調べたことをまとめて書くのが苦手な子はどうする?
低学年、中学年の子で、調べたことをまとめて書くのが苦手な場合は、以下の方法をやってみてください。
フォーマットを細かくする
市販のキットにはフォーマットがついていますが、より具体的な内容を引き出すために、「なぜそう思ったのか」「難しかったことは何か」といった質問をそこに追加します。従来の6〜7つの質問をもう少し細かくすることで、子どもも書きやすくなります。
親子でおしゃべりする
親子で自由研究についておしゃべりし、そのやりとりを筆談日記にまとめます。例えば、「これをやってどうだった?」「予想していたのとちがっていた?」など、子どもに質問しながら会話をすすめるのです。同様に、内容を録音しておくのもよい方法です。録音したものを聞きながら文章にまとめると、スムーズにまとめられるでしょう。
文字は少なめ。写真とイラストをふんだんに
コンクールに応募しない場合、書く部分は少なくても構いません。子ども自身が撮った写真や描いたイラストをノートやスケッチブック、模造紙にペタペタ貼っていき、そこに短い説明やコメント、感想を添えるだけで仕上げます。写真やイラストをふんだんに使うことで、視覚的にも楽しめる自由研究になります。
こちらもおすすめ。図鑑とトレーシングペーパーでオリジナル作品をつくろう!
図鑑とトレーシングペーパーがあれば、オリジナル作品が作れます。例えば、昆虫が好きな子どもの場合、
①図鑑の昆虫の絵にトレーシングペーパーを重ね、四隅を留める(2隅でも構いません)。
②鉛筆で輪郭をなぞり、目や羽根の模様を描く。
③絵を大まかに切り抜き、色鉛筆で色をつける。
の手順で進めます。トレーシングペーパーはなぞるだけなのでとても簡単。絵が苦手な子でも大満足のいく作品が作れます。
アルバムやカード、かるたも
トレーシングペーパーで描いたヘラクレスオオカブトの絵の下に、名前や生息地、特徴を書き加えてアルバムに貼ったり、厚紙に貼ったりすれば、昆虫アルバムやカードが作れます。それを絵札にしてカルタを作ってもおもしろいですね。
「かっこいい」がテーマのオリジナル図鑑にしても
自分でテーマを決めてオリジナルの図鑑を作ることもできます。例えば、「かっこいい生き物」をテーマにして、昆虫図鑑からかっこいい虫、鳥の図鑑からかっこいい鳥、恐竜図鑑からかっこいい恐竜、魚の図鑑からかっこいい魚を選びます。これらをアルバムに貼り付けていくことで、「かっこいい」というテーマの元、横断的なテーマのオリジナル図鑑が完成します。
みんな大好き。トレーシングペーパー
多くの子どもはトレーシングペーパーを使って絵を写すのが大好きです。何といっても簡単で上手に描けますから。絵が苦手な子でも、「これならできる!」と、なぞるだけで達成感があり、色を塗ると予想以上に綺麗な仕上がりで大満足するのです。
親が手を出しすぎるのはNGと心得て
よくあるのが、自由研究や宿題で親が頑張りすぎること。しかし、それで賞を取っても子どもの達成感は得られません。親はあくまでサポート役に徹し、最終的に子どもが「僕が頑張った!」と感じられることが重要です。これにより、子どもは自分で達成感を味わい、自信を持つことができるのです。
大切なのは、「待つ」と「共感」
自由研究のサポートはマニュアル化できるものではありません。子どもの様子を見ながら、その子に合ったサポートをすることが大切です。そのためには、親が子どものペースに合わせて待つことが大切です。必要以上に口出しせず、子どもが自分で考えたり行動したりするようになるまで待ってあげてください。
もう一つ重要なのは、共感することです。「何やってるの?そうじゃないでしょ?」や「説明を読まなきゃダメでしょ?」などの否定的な態度や言葉は子どものやる気をそいでしまいます。代わりに、「頑張ってるね」「できたね」「難しいよね」といった共感する言葉をかけてあげましょう。親自身もアンガーマネジメントを心がけ、イライラしたら深呼吸を。「待つ」と「共感」を心がけ、自由研究を達成感と親子の信頼関係を育むチャンスにしてください。
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教えてくれたのは…
親野 智可等先生
教育評論家。本名、杉山桂一。長年の教師経験をもとに、子育て、しつけ、親子関係、勉強法、学力向上、家庭教育について具体的に提案。人気マンガ「ドラゴン桜」の指南役としても著名。Twitter、Instagram、YouTube、Blog、メールマガジンなどで発信中。全国各地の小・中・高等学校、幼稚園・保育園のPTA、市町村の教育講演会、先生や保育士の研修会でも大人気となっている。『子育て365日』(ダイヤモンド社)、『「自分でグングン伸びる子」が育つ親の習慣』(Kindle版)など、著書も大人気。公式ホームページ「親力」
取材・文/黒澤真紀