※『5歳の壁 語彙力で手に入れる、一生ものの思考力』(和田秀樹・著/小学館)の一部から引用・再構成しています。
目次
「読み聞かせ」が子どもの人生を変える
和田秀樹さん(以下、和田さん):幼児教育というものは高いお金をかけなくてもできるものです。
今回は、就学前の子どもの言語力を鍛えるために、家庭の読み聞かせでできる3つのレッスンを紹介します。親御さんが家庭で子どもとの接し方を変えるだけで、子どもの知的能力を伸ばしていくことができます。
たとえば寝る前の読み聞かせの時間を少しだけ長くして子どもと対話する時間を増やすとか、可能なら幼稚園や保育園から帰った後に少しずつ読み書きの練習をさせるのもいい。
またお祖父さんやお祖母さんに協力を仰ぎ、一緒に本を読んだり、言葉遊びしたりするのも一つの方法です。
和田さん:とにかく周りの大人全員が子どもの能力を育んでいく努力を惜しまないことが大切です。
子どもが小さい頃に親が読み聞かせをしたかどうかが、子どものその後の学力向上に関わっていることは、国内外の研究で明らかになっています。
就学前に読み聞かせをしていた子どもはそうでない子どもと比べて、読む力や書く力、さらに算数の成績でも優れているという調査結果があるのです。
レッスン1:読み聞かせで子どもの言語発達を促す
和田さん:小学校入学までにやっておきたいのは子どもに言葉や文字に対する興味・関心を持たせることです。中でも大事なことは、以下の3つです。
・たくさんの言葉を知る(語彙力をつける)
・話の筋を追えるようになる
・自分で平仮名が読めるようになる
まずは絵本の読み聞かせから
和田さん:まず絵本などの「読み聞かせ」から始めるといいでしょう。2歳からでも3歳からでも構いません。
和田さん:子どもに本を読んであげることは、子どもが文字を読む力を身につける前に、文字に対する興味を育てることにつながります。
はじめは平仮名で書かれた短めの絵本を勧めます。
子どもにも絵本の絵と文字を見せながら読み聞かせると、子どもや徐々に文字を覚えていくようになります。子どもは記憶力が優れているため、物語自体を先に覚え、その後に頭の中で文字と音を一致させていくのです。
繰り返し読み聞かせることで、子どもは言葉と物語を自然に暗記するようになります。
わからない言葉は一緒に調べてみて
和田さん:またわからない言葉が出てきたら、辞書やインターネットなどで一緒に調べて教えてあげます。
和田さん:ただ言葉の意味を教えるのではなく、その言葉を使う場面やシチュエーション、例文などを示すことで、子どもの深い理解につながります。絵本を通じて会話を重ねることでその言葉がどのような場面で使われるのかが自然にわかるようになっていくのです。
こうしたコミュニケーションを通じて、子どもの国語力が鍛えられます。
また読み聞かせは親が子どもに愛情を伝える良い機会でもあります。
愛情がともなった読み聞かせは親子のスキンシップを増やし、子どもに安心感や信頼感を与え、情緒の安定につながります。本を読んであげることは、「親から愛されているという感情(快情動)」と「勉強を教えてもらうこと」を結びつける効果があるのです。
レッスン2:読み聞かせた後は、子どもを「話し手」にする
和田さん:本を読み聞かせたり、自分で読ませたりした後に、そこにどんなことが書いてあったのか、誰が出てきて何をしたのかを子どもに聞いてみます。
そうやって子どもが要約した内容が、物語の本質やストーリーをきちんとつかんでいるかを確認し、子どもがよくわかっていない部分があったら、親子でもう一度ページをたぐりながら物語を追ってみます。
そんなふうに親がサポートして、文章理解のきっかけをつくってあげることが子どもの読解力を伸ばす第一歩になるのです。
「あおむしが月曜日に食べたものは何だっけ?」(絵本『はらぺこあおむし』)、「さるは誰にやっつけられたの?」(絵本『さるかに』)といったように、子どもが慣れないうちは、クイズのように出題してみるのもいいと思います。
和田さん:また話の本筋を追うだけでなく、文章には表現されていない主人公の気持ちを表現させてみたり、主人公以外の登場人物の気持ちを想像させてみたりなど、一つの物語をさまざまな角度から自由に読み解くことができるのも本の魅力。子どもの想像力や表現力を養うこともできます。
読み聞かせを通して、子どもを聞き手にするのではなく、話し手にしてあげることが大事です。
レッスン3:読み聞かせながら、子どもに字を読ませる練習をする
和田さん:まずは絵本の平仮名で書かれた文字を見せながら、ゆっくり読んであげてください。子どもが興味を持って「これはなんていう字?」と聞いてきたら、「これは『あ』だよ」と丁寧に教えてあげると良いでしょう。
字という概念を持っていない幼児にとっては字を覚えていくのは根気が必要な作業です。しかし字が読めるようになるということは子どもにとって最初の学びの大きなステップであり、「自分で字が読めるようになった」ということは、子どもの自信形成に非常に重要な意味を持っていると考えられます。
子どもが文字に興味を持つようになったら自分の名前を教えてあげましょう。たとえば「わだひでき」と声を出しながら何度も字を見せているうちに、子どももこれが「わ」で、これが「だ」だということが少しずつわかってくるようになります。
そのように少しずつ字を覚えさせたら、今度は子どもに絵本を読んでもらいます。
最初は親が一定の長さの文章を何回か読み聞かせたら、「じゃあ次は、○○ちゃん読んでみようか」と言って、読ませてみます。
和田さん:そこで読めなかったら、また親が読んで聞かせます。その過程を踏みながら、子どもは頭の中で文字と音を一致させていきます。そうやって次第に子どもは字を覚えていくのです。
まずは「字」に興味を持つきっかけを
和田さん:しかし急がせてはいけません。大切なことは、たくさん読めることや完璧にできることではなく、文字の数は1つでも2つでもいいから「自分で字が読めるようになった」という感覚を持てることです。字に興味を持てれば、そのうち徐々に自分から読もうという意欲が出てきます。
また物語や小説が好きではない子どももいます。子どもの興味の持つ分野で、その子の能力を伸ばしてあげることが重要です。動物が好きだという子には動物図鑑、乗り物が好きな子には乗り物の本、恐竜が好きな子は恐竜の本を読ませればいい。マンガでも構いません。文字を読むトレーニングにもなりますし、物語の流れを読み取る力や語彙力もついてくると思います。
とにかく物語、図鑑、子ども向けの新聞、幼児向けの百科事典、辞書、マンガ、学習マンガ、歴史マンガなど、どんな本でもいいので、まずは文字に触れる機会を増やすことが大事です。
※ここまでは『5歳の壁 語彙力で手に入れる、一生ものの思考力』(和田秀樹・著/小学館)の一部から引用・再構成しています。
『5歳の壁 語彙力で手に入れる、一生ものの思考力』(小学館)
子どもの人生を左右する「壁」は5歳にあり。壁突破のキーワードは「語彙力」──受験学習法・幼児教育のプロである和田秀樹さんが、5歳までに語彙力を飛躍的に伸ばす具体的なおうちレッスンを紹介。家庭での幼児教育への向き合い方を伝えます。
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構成/国松薫