日本生まれ日本育ちなのにネイティブなみの英語力を持つワケは? YouTubeで活躍する3兄弟が語る、家庭でできる「世界が広がる」英語力の身に付け方

「うちの子に英語を身に付けさせたいけれど、何から始めればいいの?」子どもの英語教育について、こんな悩みを抱えているお父さん、お母さんは多いのではないでしょうか。

YouTubeで海外に向けて日本の文化を発信しているチャンネル「SYR Bros.」に、そのヒントがあるかもしれません。登場するのは、Sotaさん(15歳・高校1年生)、Yutaさん(14歳・中学2年生)、Ryotaさん(9歳・小学4年生)の3兄弟。まるでネイティブのような流暢な英語を話すバイリンガルです。しかし、彼らは帰国子女でもインターナショナルスクール出身でもありません。ごく普通の日本の家庭で育ち、公立学校に通いながら、自然に英語を身に付けてきた3兄弟なんです!

今回は、「SYR Bros.」として活動する3兄弟とそのご両親に、どのように英語を身に付けてきたのか、リアルな声を聞かせていただきました。

YouTubeで世界とつながる! バイリンガル3兄弟「SYR Bros.」

――まずは自己紹介と、最近夢中になっていることを教えてください。

Sota高校1年生のSotaです。中学生のときに、いろいろな高校の文化祭などを見る中で、帰国子女が多い学校でやっていた英語ディベートがすごくかっこいいなと思ったことがきっかけで、 最近は英語ディベートにハマっています。学校の部活動ではないのですが、有志でメンバーを集めて活動しているんです。

Sotaさんのディベートの様子

Yuta中学2年生のYutaです。最近は料理にハマっていて、簡単なケーキやスイーツを作っています 。きっかけは、YouTube。料理系のYouTuberさんを見ていて、自分も作りたいなと思いました。

Ryota小学4年生のRyotaです。最近はバスケにハマっています 。友だちがやっていて楽しそうだなと思って始めました。

――YouTubeチャンネルは、どのようなきっかけで始められたのですか? 役割分担もあれば教えてください。

Sotaコロナ禍で、もともと予定していた海外旅行に行けなくなってしまったんです 。それでも、どうにかして英語を生かしたいと考えたときに「SNSだ!」と思い立って、YouTube活動を始めました

Yuta僕は(Sotaさんから)「やろう」って言われて、乗りました。

YouTubeの撮影風景

お父さん編集は次男(Yutaさん)と妻(お母様)がメインで、企画立案や内容は長男(Sotaさん)と僕が中心に考えています。演者は兄弟3人で、撮影は家族5人全員でやっていますね。

――家族全員でのプロジェクトなのですね。最初から注目されていたのでしょうか?

Sota始めた頃の登録者は30人とか40人くらいでした。簡単な作業ではないので、「決めた時期までに100人いかなかったら、もう続けるのをやめよう」と話していましたね。

そんなある日、新宿で動画を撮影している人を見かけたんです。「YouTuberさんかな?」と思って思い切って声をかけてみたら、エジプト人のクリエイターさんでなんと登録者が60万人もいる方でした。その方が、ご自身のチャンネルで僕たちを紹介してくださって。そこから少しずつチャンネルが伸びて、コラボも増え、波に乗れるようになったんです。

――すごいコミュニケーション力! 数か月前に、日本人向けの新しいチャンネルも始められましたよね。

Sota以前から日本の視聴者の方にコメントで「学習法が知りたい」という要望をたくさんいただいていました。でもメインチャンネルは、海外の人に向けて日本の魅力や文化を紹介するのがコンセプトなので、そこで英語の学び方を発信するのは違うかな、と。

日本人向けYouTubeチャンネル「SYR Bros.英語3兄弟」の動画

それで視聴者の層を分けて、新しいチャンネルでは日本人の方に向けて英語の楽しさや学び方を発信していこう、という話になりました 。

特別なことは何もない!? SYR Bros.流「ルールなき」英語環境のリアル

――ご家庭では、具体的にどのような英語環境で育ったのですか?

Sota物心つく前から朝から晩まで、ずっと英語の音が流れている感じだったと思います。朝起きたときから英語の歌が流れていて、車の中でも常に英語が流れていました。テレビも英語で見ていましたし、寝る前には母に英語で絵本を読み聞かせてもらい、英語の朗読CDを聴きながら眠りにつく、というような環境でしたね。

Ryota僕にとってはそれが普通だと思っていたので、何も意識していませんでした。「家に帰ってきたから英語にしなきゃ」という感覚もなくて、もう(英語を話すことが)自然なことだったので。

Sotaさん3歳、Yutaさん1歳の頃

――まず、その環境を作ったご両親の覚悟がすごいですよね。本当にこれでいいのかな、と迷って途中で辞めてしまう親御さんも多いと思うので。

お母さんそこは貫きました(笑)。私たち親もテレビで日本のドラマなどを見ることもしなかったので、覚悟は必要かなと思いますね。

――学校では日本語、家では英語と、頭の切り替えに違和感はありませんでしたか?

Sotaとくに違和感はなかったです。ごく普通の公立の小学校に通っていましたから、学校ではずっとまわりも日本語ですし。

Yuta僕もあまり違和感はなかったですね。学校では日本語、家では兄弟と英語、というように、自然と脳が切り替わっていたような感じです。

Sotaあと、家の中でも基本的に両親との会話は日本語、僕たち兄弟間の会話は英語、と自然に切り替えています。

お母さん親である私たちは英語が苦手なのですが、「何か親には聞かれたくないことを話しているな!?」というのは伝わるんですよ(笑)。

――兄弟間で英語で話すようになったのは、何かきっかけはありましたか?

Sota気が付いたときにはもう弟とは英語でしゃべっていたので、きっかけというのはよく覚えていないんです。

ただ、小さい頃、よく兄弟一緒に海外のアニメを見ていて、そのアニメに出てくる子どもたちが英語で話しているのを見て、自分たちもそのセリフをまねしてキャラクターになりきって、ごっこ遊びをよくしていました。そういうことがきっかけになっていたかもしれません。

家の外では英語を話す機会がほとんどなかったので、兄弟間でアウトプットできる環境があって本当に良かったと思っています。

Sotaさん4歳、Yutaさん3歳の頃

――英語中心の生活で、日本語の習得が遅れるといった心配はありませんでしたか?

Sota:それはなかったです。どれだけ家で英語に触れても、日本に住んでいて学校に行けば、外では必ず日本語を聞きますし、話しますから。そこで日本語の力が衰えるということはなかったと感じています。

「勉強」と思わせたら負け。子どもが英語を“大好き”になる魔法の習慣

――お子さんに、英語を楽しみながら身に付けてほしいと願う親御さんは多いです。ご自身の経験から、いちばん大事なことは何だったと思いますか?

Sota子どもがそのときに興味を持っているものと、英語を結びつけることがいちばん重要だと思います。

Yuta僕は5歳くらいの頃に恐竜やサメにとても興味があったんですが、そのときには母が、恐竜やサメに関する英語の本を見付けてきて、まわりに置いておいてくれていたんです。それを夢中になって、ボロボロになるまで何度も繰り返し読みました。

Sotaその時々でハマっているものに関するものを英語で与えてもらうことで、僕たちにとって英語は楽しいことと関連づけられていました。

Sotaさん4歳、Yutaさん3歳の頃

――つまり、英語は「勉強」ではなかったのですね。

Sotaはい。英語は、ノートや教科書に向かってやるものではなくて、「生活の中に当たり前にあるもの」という感覚でした。もう、自分たちの日常生活の一部になっていたと思います。

お母さん確かに「さあ、今から(英語を)始めましょう」みたいなことは、一度もやったことがないですね。

――そのように「勉強」という形を取らないアプローチを徹底されていたのは、何かご両親のお考えがあったのですか?

お父さん今の時代、小学校の早い段階から英語が始まりますよね。そこで「英語は苦手だ」という意識を持ってしまうのがいちばん心配でした。下手をすると、小学生の時点でもう英語嫌いになってしまう可能性もある。だからこそ、最初の「入り口」がすごく大事だと思っていたんです。

最初は「勉強」という形ではなく、「遊び」のような感覚で、好きなことと絡めて英語環境を与えてあげるのがいいかな、と考えていました。

――すでに日本語が確立している年齢のお子さんの場合、良い入り口はありますか?

Sotaいちばん怖いのは、子ども自身が「わざわざ英語じゃなくていいじゃん」と感じて、英語が苦痛になってしまうことなんです。そうならないためには、いきなり本などではなく、アニメや音楽から入るのがいいかもしれません。

Yuta日本語版がなくて、英語でしか見られないアニメやコンテンツだと、「英語で見なきゃ」となりますよね。

Sotaあとは、YouTubeで自分の興味があるジャンルを検索して、それを発信している海外の人の動画を見てみるのもいい方法だと思います。

英語を話すと自分が「ジョン」になる? 言葉が開く、無限の可能性と世界

――日本語と英語、話すときでご自身に何か違いはありますか?

Sota声の出し方や気持ちの込め方も違うし、性格もちょっと変わると思います。気持ちとしては、英語をしゃべっているときの自分は「ジョン」なんです(笑)。漢字の「颯太」ではなくなります。

Yuta日本語をしゃべっているときは、敬語などもあるので少し丁寧で、かしこまった感じ。英語にはそれがないので、僕も、もうちょっとフレンドリーで陽気なキャラクターになっていると思います 。

2020年のクリスマスの様子。クリスマスケーキは毎年3人で手作りして好きなようにデコレーションしているそう

――英語が話せることで「世界が広がった」と感じたエピソードがあれば教えてください。

Sota:いちばんは、街で困っている外国の方を見かけたときに、「いざとなったら助けてあげられる」と思えることですね。以前、よみうりランドで携帯電話をなくして困っている海外のお子さんを助けたり、複雑な新宿駅で電車の乗り方が分からずにいたご家族を手伝ったりしたことがあります。

お母さんYouTubeがきっかけで日本に来てくださった海外の視聴者の方と、実際に会うという機会も何度かありました。

お父さん以前、プエルトリコの方がポケモンのイベントに参加するために来日した際に、子どもたちに会いたいと連絡をくれて、一緒にお祭りに行ったこともありました。

Ryota一緒にポケモンイベントに行けて、楽しかったです。

――普段、楽しんでいるエンターテインメントなども変わりましたか?

Sotaはい、見られるコンテンツの範囲が大きく広がったと思います。自分たちが海外に発信するだけでなく、海外のコンテンツを楽しめるのは大きなメリットですね。

Yuta映画も、吹き替え版で見るより、俳優さん自身の声で聞くのでセリフの細かいニュアンスまで感じ取れます。

Sota音楽も、歌詞の意味が直接分かるのはうれしいです。

3人の近影

――将来の夢に、英語はどのように関わっているでしょうか?

Sota将来、どんな仕事に就くとしても、海外のいろいろな人と関わる仕事をしたいと思っています。

Yuta日本に住むにしても、海外に住むにしても、英語が使えることで将来の選択肢が格段に増えると思います。まだ具体的な夢は決まっていませんが、英語を使ってできることが増えるかな、と考えています。

Ryota僕はまだ夢を考えているところですが、バスケ選手になるなら海外の選手とも話せるし、役立つと思います。

――最後に、これからチャレンジしたいことや、英語を学ぶ子どもたちとその親御さんへメッセージをお願いします。

Sota僕が伝えたいのは、「英語は他の勉強とはちょっと違うんだよ」ということです。これからの時代、どんな仕事をするにしても、英語があって困ることは絶対にありません。英語が自由に使えれば、世界中の人とコミュニケーションが取れるし、得られる情報も格段に増えます。将来の可能性も確実に広がると思います。

Yuta新しく始めた日本人向けのチャンネルでは、英語の楽しい学び方や、どうすればマイナスイメージを持たずに英語を身につけられるかを紹介していきたいと思っているので、ぜひ見てみてください。

Ryota僕は、日本のグミとか、独特のお菓子を紹介する動画を作りたいです。

Sota英語を話せることによって、どれだけたくさんの人と関われるようになるか、そして、どれだけ自分の選択肢が増えて、見える世界が変わるのか、というのを、僕たちの活動を通して伝えられたらうれしいですね。

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話を伺ったのは…

SYR Bros. YouTuber

長男で高校生のSota、次男で中学生のYuta、三男で小学生のRyotaの3兄弟で、外国の視聴者向けに、日本の伝統行事・食文化・観光地などを英語で紹介するYouTubeチャンネル「SYR Bros. from Tokyo to the World!」を運営。サブチャンネル「SYR Bros.英語3兄弟」では、日本の視聴者向けに英語の勉強方法などについて発信している。

取材・文/ミノシマタカコ

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