魚もケガをするって本当?
当日はお魚博士である飼育スタッフ、えのすいトリーターの杉村誠さんなどから、「魚のケガ」をテーマに特別にお話が展開されました。参加した61人の親子が興味深そうに聞き入っていましたよ。
杉村さんによると、魚もケガをするとのこと! ケガの理由は複数あるそう。
・縄張り争いによるケンカ
・水槽内の岩や壁に当たる
・寄生虫によるもの
杉村さん「魚同士のケンカでケガをすることもあります。とはいってもケンカするつもりはなくて、じゃれたつもりでカプッとやってしまう場合もあるんです。特に縄張り意識の高い種は、縄張りを守るためにケンカをします。種によってはとても激しく、ケンカが元で起きたケガから病気になってしまうこともあります」

ケガをすること自体、意外ですよね。ところで、ケガをすると魚も痛みを感じるのでしょうか?
杉村さん「かつては『魚は痛みを感じない』と考えられていたものの、近年の研究では、魚にも痛みを感じる神経の構造があることがわかってきました。
実際、ケガをした魚に薬を与えようとすると、嫌がるような反応を見せることがあります。日々、魚たちの様子を観察していると『やはり痛みを感じているのかもしれない』と実感する場面が多いですね」
新江ノ島水族館には、専門の獣医師が在籍しており、えのすいトリーターと連携しながら、魚たちの健康と安全を守っているそう。水中にいるから余計に見えにくい不調やケガですから、魚たちの小さなサインを見逃さないよう、細やかな目配りが欠かせないのだそうですよ。
魚のケガの治し方

ところで、魚がケガをしたら、人間と同じように治療をするのだそう! ケガをした魚には、薬を使ったケアが行われていることが紹介されました。
薬の処置を嫌がる素振りを見せる魚もいるため、えのすいトリーターたちは、その反応にも丁寧に寄り添いながら治療を進めているそうです。
具体的な方法を杉村さんにうかがってみました。
杉村さん「魚に薬を塗るときは、薬は液体ではなく粉状のものをハケで塗ります。そうすることで、水の中でも落ちなくなり、治りが早いです。魚がケガしたときは、体力をつけるために、人工的にご飯を食べさせます」
一般的には、薬浴や淡水浴、隔離水槽での休養などが組み合わされ、魚にとってなるべく負担の少ない方法で回復を促すそう。
新江ノ島水族館では、獣医師とえのすいトリーターがチームとなり、それぞれの魚の状態に合わせたケアを行っているそうです。
水の中の「治療」は言葉の通じない相手との静かな対話のようなもの。えのすいトリーターは、魚の小さな変化を日々の観察から見極め、回復を支えています。
ケガが治った「ムツ」のエピソード

新江ノ島水族館では、実際に「ムツ」という魚のケガの治療をしたエピソードがあります。
杉村さん「水族館にやってきた魚は、病気にかかっていないか、ケガをしていないかを確認し、元気であればエサに慣れ、ほかの魚たちと一緒に泳げるかの確認をしてから展示します。
バックヤードで1か月以上かけて水槽や水温、冷凍の餌料に慣れさせてから展示水槽に移したところ、移動初日に同じ水槽に入っていたウツボにかまれてケガをしてしまったんです。ケガを治すために、まずキズ口に殺菌消毒剤と呼ばれる、ネバネバの薬を塗って消毒をしました。
この消毒剤は、キズ口にしっかり貼り付いて、細菌の感染を防ぐ役割を果たしてくれるんですよ。また毎日、飼育水の雑菌を減らすなどして、ムツのケガは良くなりました」
ムツは現在、オオカミウオと同じ水槽で展示されており、水槽の中でイキイキと泳ぐ姿が見られます。無事に治って良かったですね。
魚にも熱中症はあるの?
続いて、杉村さんに素朴な疑問として、魚にも熱中症はあるのかどうかを尋ねてみました。
杉村さん「魚も人と同じように熱中症になります。水温の変化にはとても敏感で、環境水温が高温になれば、体調を崩してしまい、食欲もなくなり、死に至ることがあります。
そして魚は人間の手の熱だけでも弱ります。魚にとっては火傷するくらい熱く感じるほど。ですから、必ずゴム手袋をして魚を触るんですよ」
熱中症があることに加えて、人の手でも火傷するくらいの熱さを感じるとは・・・驚きますね!

[まとめ]自由研究のテーマにするなら
新江ノ島水族館の魚のケガや治療のお話をご紹介しました。魚たちはとってもデリケートで、いつも元気に泳いでいる姿が見られるのは、えのすいトリーターさんたちのおかげでもあるんですね。
自由研究のテーマにする場合は、ぜひ魚への愛情も大切であるという結論も、取り入れてみてくださいね。
こちらの記事もおすすめ
構成・文/石原亜香利

