前編では、4月に揺れやすい子どものメンタルの対処法について伺いました。
目次
■イラっときたら…深呼吸や運動が有効。「大丈夫!」と自分自身に言い聞かせよう
ーー新学期になり親のメンタルも不安定になってしまうことがあると思います。気持ちを整える方法はありますか?
親野先生:私がいつもお伝えしているのは、まず深呼吸をすることです。現代人は呼吸が浅くなっているので、深呼吸にはすごく効果があるんですよね。イラッとしたときは特に、深呼吸を1回するだけでもかなり違います。できれば習慣化して、最低1時間に1回は深呼吸をしてみてください。呼吸が深くなると副交感神経が働き、脳への酸素供給や血流も良くなり、ストレスを和らげる方向に体が働きます。
それから、今注目されている「ジャーナリング」もおすすめです。ノートと鉛筆を用意して、自分の頭の中にあることを書きまくるんです。「不安だな」「でも幼稚園でも乗り越えた」など、思いつくままに書いていくことで自己カウンセリングになり、心が整理されます。

あとは運動も効果がありますね。ソファーに座って悩み続けるより、体を動かすほうが不安を和らげやすいです。少し散歩するだけで呼吸も変わりますし、血流も良くなり、「幸せホルモン(セロトニン)」も分泌されます。朝、日光を浴びながら散歩するのがいいですが、筋トレでもジョギングでも掃除でも好きな方法で体を動かしてみてください。
ーーすぐに取り入れられそうな習慣ばかりですね!
親野先生:子どもだけでなく、親も不安になるのは当然のことです。不安になるのは愛情と向上心の表れでもあるので、「不安になって当然」と受け止めて味わうことも大切です。言語化して「大丈夫、大丈夫」「なんとかなる」とポジティブな言葉を声に出して言うのもいいですね。自分の声をいちばんよく聞いているのは脳です。脳は自分の言葉の影響を受けやすいことが脳科学でわかっています。

子どもを信じることも大切です。「あの子なら大丈夫だ」と信じる気持ちを持ってください。あまり親が不安になっていると、その不安感や心配は、子どもにも伝染してしまいます。親の言葉や表情から、子どもも入学に対する不安が出てきてしまうので、そういう意味でも、しっかり深呼吸して、肯定的な言葉を口にして、子どもを信じる。それを心がけてみてください。
振り返ってみればそんな不安も子育ての中の貴重な時間だったと思える日がくるはずです。
■つい他の子と比べてしまう…そんなときは「両面思考」を
ーー入学時は、周りの子と比べてしまいがちです。親の不安を整える考え方は?
親野先生:比べてしまうのは、人間として本能的なことなので、仕方がない面もあります。そして、比べると常に隣の芝生は青く見えてわが子はイマイチに見えてしまいます。ただ、それを子どもには絶対に言わないようにしてください。それと、比べてわが子の短所が気になったとき、そこで終わらずに、わが子の長所も思い浮かべてみてください。たとえば、以下のように「両面思考」をしてみるんです。
- 「字がまだ書けない」→「でもおしゃべりが得意」「笑顔が素敵」
- 「何をやっても遅い」→「自分のペースで動ける」
- 「宿題より遊びたい」→「自分のやりたいことがある」
- 「だらしない」→「おおらか」
- 「ふざけてばかり」→「楽しむのが上手」「盛り上げ上手」
- 「人前で話すのが苦手」→「慎重派」
こんなふうに見方を変えると、不安な気持ちも和らぎ、落ち着いた気持ちで子どもと接することができるようになると思います。
ーー苦手な部分も裏返せば長所になるということですね。

■学校生活で不安があるとき…「クレーム」ではなく「悩み相談」を
ーー学校で不安なことがあるとき、先生への伝え方や相談のコツがあれば教えてください。
親野先生:まずは連絡帳に簡単に相談の内容を書き、「相談したいのですが、お電話でもよろしいですか」「お時間をいただけますか」とアポを取って話すのがよいと思います。急ぐ場合は直接電話でもOKです。「モンスターペアレントに思われるかも…」と心配される親御さんもいますが、話し方に注意すれば大丈夫です。
まずは深呼吸して、「いつもお世話になっております」とあいさつし、「先生のことが大好きで、楽しく学校に行っています」「授業が面白いと言っています」などと伝えてみるのもおすすめです。その上で、「クレーム」ではなく「悩み相談」の形にします。
たとえば「給食のことで悩んでいて…」という言い方ですね。「幼稚園のときに無理に食べて戻してしまったことがあって…」「給食が原因で幼稚園に行けなくなったことがあって…」など、あくまでもクレームではなくお悩み相談というニュアンスで伝えましょう。
給食がきっかけになって行き渋りや不登校になるケースも少なくありません。さすがに今の時代に全部食べることをあからさまに強制するような先生は多くはないと思いますが、「今日は○人が完食できました」と発表して微妙な強制をする先生はいます。また、「食べ物がなくて困っている人たちもいる」「せっかく作ってくれた人に申し訳ないよ」など、子どもたちに罪の意識を感じさせて微妙な強制をする先生もいます。もしそういうことがあれば、相談のような形で先生に相談してみるとよいと思います。

親野先生からのメッセージ。家の中に写真を貼って自己肯定感をアップする「ほめ写」を!
ーーこれから入学、進級を迎える親子にメッセージをお願いします。
親野先生:ぜひやってほしいのは「ほめ写」です。入園式・卒園式・入学式、七五三、旅行、友だちと遊んでいる写真など、スマホの中にある写真をプリントアウトして、子どもの目の高さに貼ってください。リビングでも玄関でもトイレでもOKです。子どもはそれを見るたびに、家族の愛情を実感して自己肯定感が底上げされます。これはエビデンスがちゃんとあるんです。それだけでなく、親の自己肯定感も上がります。「私も頑張ってきたな」「このときは大変だったけど乗り越えたな」と思えるからです。

最後に、いちばん大事なことを。新学期に向けて、「できないと困るよ」「叱られるよ」と子どもを脅すのはやめましょう。そうすると「学校は怖いところ」になってしまいます。保育園や幼稚園での楽しい思い出、頑張ったこと、できるようになったことを、写真や動画を見ながら「楽しかったね」「できるようになったね」とプラス思考で振り返ってみてください。そうすると子どもはきっと「学校でも頑張ろう」と前向きになれるはずです。
「ほめ写」については>>こちら
お話を聞いたのは
教育評論家。本名、杉山桂一。教師経験をもとに、子育て、しつけ、親子関係、勉強法、学力向上、家庭教育について具体的に提案。『親の言葉100』『子育て365日』『反抗期まるごと解決BOOK』などベストセラー多数。人気マンガ「ドラゴン桜」の指南役としても著名。Threads、Instagram、X、YouTubeなどでも発信中。全国各地の小・中・高等学校、幼稚園・保育園のPTA、市町村の教育講演会、先生や保育士の研修会でも大人気となっている。オンライン講演も可。公式ホームページ「親力」
取材・文/平丸真梨子
