「僕自身が不登校で教育を知らないまま大人になったから、子どもの教育に“しなきゃいけない”はない」起業家・家入一真さんがわが子の12年間一貫教育校を見て思うこと

新型コロナウイルスの流行を機にご自身の会社をフルリモートに変え、長野県へ移住された起業家 家入一真さん。3人のお子さんは、幼稚園から中学生までの12年間一貫教育を行っている、探究学習を中心とした私立の学校に通われているそう。毎日、何をするのかは自分で決めて、自由に学ぶことができるという革新的なその学校の魅力や、なぜそのような学校を選んだのかお話を伺いました。

「型にはめる」「はめない」ではなく、子どもの変化に柔軟な教育を

ーーお子さんが探究学習を中心とした12年間一貫教育の自由な学校に通われていると伺ったのですが、「型にはめない」教育を選ばれたのはなぜでしょうか。

家入さん 単に「型にはめる」とか「はめない」ということは特に意識しているわけではありません。それぞれの子に合った教育があると思っているので、そういう視点から子どもの興味があることに集中して学ぶことができる教育を選んだという感じです。

コロナをきっかけに僕の会社が完全なフルリモートになりました。そうなると東京に住んでいる意味があまりなくなってきてしまって、どこか別の場所に拠点を移そうと考えはじめました。
僕は25歳で東京に出てきて、そこから20年近く東京にいました。子どもたちも東京の学校に通わせるつもりで考えていたのですが、妻も東京での暮らしにちょっと疲れてきたようなことを言っていたので、どこか別の場所に移住しようと。


自分の地元でもある福岡なども検討しましたが、新幹線で1時間で東京に行けるという環境に魅力を感じて、軽井沢への移住を決めました。そこで探究学習を中心とした12年間一貫教育の自由な学校に出合いました。

子どもたちを見ていると成長と共に興味が変化していると感じていますし、その都度柔軟に対応してくれる学校ならば楽しく通えるのではと思って決めました。
僕自身は中学2年生で不登校になってしまい、それ以降の教育について知らないまま大人になってしまったので、教育に対して”こうじゃなきゃいけない”という想いがあまり無いのも、その学校を選んだ理由かもしれません。

『探究』とは自分に向き合うこと

ーーお子さんはどんなことに興味を持っているのですか?

家入さん 長女を例にお話しすると、入学したての頃は、科学の実験に興味があったようです。「科学者になりたい!」と言っていろいろな実験をしていましたね。
授業は黒板に向かって座る学習スタイルではありません。しかし、教科書のカリキュラムはこなさないといけないので、森の中で理科の学習に繋げられることをしたり、工夫したりして学習を進めているようです。

他には、国語に力を入れている学校なので、”作家の時間”という授業があり、文章を書く機会は多くあるようです。娘は特にその時間が好きだと言っています。星新一の作品にハマって、『ショートショート』を真似た作品を書いていたりもします。
学校には、絵本を作る子もいれば小説を書く子もいます。ライブラリーが充実しているので、一日中読書をして過ごす子もいるようです。

子どもたちはまだ、自分の方向性が定まっているわけではありません。楽しいこと、興味のあることを追いながら、自分に何が合っているのかを模索している状況こそが探究であると思うので、見守っています。

子どもが育つ過程でいろいろな大人に触れてほしい

ーー軽井沢に引越し、転校したお子さんに変化はありましたか?

家入さん 現在の娘の学校には“クラス”はないのですが、異年齢で構成されたグループがあります。そのグループ単位で学習を進めたりするので、同じグループの友達の話はよく聞きますね。もちろん、同級生の友達もいますが、同じグループのお姉さん・お兄さんの話を聞くのは面白いなと思います。
長女に限らず、三姉妹みんな割と人見知りするタイプだったのですが、今の学校に通うようになって、異年齢であったり、先生方をはじめいろいろな保護者と接する機会が増えたりしたことで、オープンマインドになった気がします。

コロナが流行したことをきっかけに、僕自身が人とのコミュニケーションは重要だと再認識したこともあり、子どもが育つ過程ではいろいろな大人に触れるべきだと考えています。なので、意識的に自分の職場や登壇するイベントに子どもを連れて行くようにしています。自分とは全然違う価値観に触れることって大切ですよね。

普通に生活をしていると、子どもたちが普段接するのは先生や保護者くらいになってしまいますよね。そうすると、身近な大人が言うことだけが正しいと思ってしまいがち。
娘の学校は自由な学びを求めて入学している家庭ばかりなので、保護者の方もいろいろな価値観を持っている人がいます。そんなところもいい刺激になっていると思います。

多様な価値観を受け入れられる柔軟性は、どんな時代においても幸せに生きていける力だと考えています。

また、子どもたちだけではなく妻も変わったように感じます。東京に住んでいた頃よりも、積極的に学校に関わっていますし、とても楽しそうに感じます。

安心できる環境が物怖じせずに発言できる姿に

ーー学校では3歳〜14歳までの生徒が一緒になってミーティングをする機会があるとのことですが、どんなミーティングなのでしょうか? 子どもたちの様子はどうですか?

家入さん 年齢が上の子たちが中心になっているとは思いますが、堅苦しい感じはありません。みんなが思い思いに学校への要望を発表したりしています。
普段から自由に過ごしているので、安心感があるのでしょう。校則みたいなものもあまり聞かないので、人前でも物怖じせずに発言する姿がありますね。

また、探究学習が中心の学校なので、年間何回か発表の場が設けられています。発表するしないも自由ですが、そこで自分が作った作品などを披露します。そういう機会があるので、人前で話すことにはあまり抵抗がないように感じます。

進学先はさまざま

ーー探究学習の授業が中心の学校だと、その後の進学先はどういう学校を選ばれる方が多いのでしょうか?

家入さん 新しい学校なのでやっと卒業生が出はじめたくらいなので、進学先の事例もまだ少ないと思います。
娘の学校ではいわゆる受験勉強の対策はないので、私立や公立の一般的な高校受験を検討している子は、進学塾に通ったりして何らかの受験対策は取っていると思います。
自由な毎日を過ごしているので、海外への留学を検討している子も多いのかもしれません。我が家も娘が行きたいと言えば、留学すればいいと考えています。

万能な学校は存在しません!

ーー学校のお話を伺っていると、とっても魅力的で素晴らしく感じるのですが、向いていない子もいると思いますか?

家入さん もちろんいると思います。
娘の学校は時間割も存在しないので、登校時間も自由です(何時くらいまでにと言う目安はある)。めちゃくちゃ早くから登校して遊んでいる子もいれば、ゆっくり登校してくる子もいます。その日に(学校で)することを自分で決めるので、何をして過ごしたいのかが決まっている子や、そういうことを考えるのが好きな子には学校が楽しい時間になると思います。でも、毎日何をするのかを考えるのが苦痛な子もいるそうです。そういう子だと、自由すぎることが逆につらくなってしまうので楽しむことはできないようですね。

親世代が受けてきた教育とは全く違う学び方なので、最初は納得して入学させたけれど、徐々に保護者の方が不安を感じ、結局途中でやめてしまう子もいます。逆に保護者は魅力を感じていても、子どもがその環境に馴染めずにやめてしまうというパターンもあります。
”探究学習”や”自由な校風”というキーワードだけに飛びついて入学してしまうと、入学してから親子で戸惑うことになってしまうのだと思います。

僕は誰にでも合う万能な学校というのは存在しないと思っています。だからこそ、いろいろな教育方針の学校があるべきだと思うし、きっとその子その子に合う学校があるはずだと思っています。

僕は子どもたちに「こうなってほしい」と望むことはなく、ただ楽しく生きていってほしいと願っています。そう思える環境として、探究学習の12年間一貫教育を選んだということです。

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お話を伺ったのは

家入 一真 起業家

1978年福岡県出身。不登校・引きこもりを経て、2003年paperboy&co.(現GMOペパボ)創業。JASDAQ最年少上場を経て、2011年CAMPFIREを創業。2012年BASEを共同創業、東証マザーズ(現グロース)上場。2018年ベンチャーキャピタルNOW創業。Forbes Japan起業家ランキング2021にて3位に選出。2025年MIKAWAYA21の共同代表に就任。他にも、リバ邸やさとのば大学、N高起業部など、起業や教育、地域の“居場所づくり”に取り組んでいる。

この記事を書いたのは

鬼石有紀 ライター

教育学部を卒業し、幼稚園・小学校教諭免許を取得するも、教師は母の希望だったため教師にはならず。自分自身の経験から、子どもは矯正せずにありのまま育てるのが一番だと思っている。勉強は嫌いだけと、学ぶことは楽しいと大人になって気づく。趣味は腸活と音楽を聴くこと。最近は子どもの影響で城・神社、世界遺産巡りにハマっている。

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