※ここからは川島隆太著『最新研究が明らかにした衝撃の事実 スマホが脳を「破壊」する』より一部を引用・再構成しています。
目次
1日1時間以上スマホを使っている児童は平均点を取るのが難しい
私は東北大学加齢医学研究所で、健康な児童・生徒と発達障害を持つ方々の認知機能と脳の発達について研究をしています。
こちらは、小学5年生から中学3年生までのスマホ保持者3万6326名の、学力・平日の睡眠時間・平日の家庭学習時間のデータを解析したものです。

※2018年度の仙台市標準学力検査および仙台市生活・学習状況調査結果より
平日のスマホ使用が1時間未満の子どもは、毎日机に向かう習慣さえあれば、睡眠時間が極端に短くない限り平均点が取れています。
一方、1時間以上使う子どもは、睡眠時間を十分に確保し、かつ毎日しっかり勉強しないと、平均点にも届かない状況です。スマホの使用時間が子どもの学力と深く関係していることが読み取れます。
内閣府の調査(平成30年度)によると、スマホの使用を1時間未満に抑えられているのは小学生で53.9%、中学生でわずか19.7%、高校生ではたったの3.9%。中学生以上の大多数が、すでに学力に影響が出やすい使用量になっています。

私自身、全国の中学生たちとの会話をする中で、使用時間が1時間未満の子どもたちは、「連絡が必要だから使う」「調べたいことがあるから使う」という目的を持った使い方をしていました。
一方、使用時間が1時間以上になってしまう子どもたちに多いのは「暇だから動画を見る」「ゲームがやめられない」「友達とのやり取りが終わらない」といった声。
スマホを使いこなしているのではなく、スマホに”使われている”状態になっているのです。その差が、学力に大きな差をつけていると考えられます。
このデータから、スマホ利用と睡眠時間・家庭学習時間に相関関係があることが分かりましたが、その原因は何なのでしょうか。
毎日インターネットを使用する子の脳は、成長がほぼ止まっていた

その後、私たちの研究室ではMRIを使い、5歳から18歳の子どもたち224名の脳発達の様子を3年間にわたって観察しました。そこで見えてきたのは、衝撃的な事実です。
図2をご覧ください。赤色のついている領域はインターネット習慣が多いことが原因で大脳灰白質体積の増加に遅れが認められたことを示しています。
赤色が濃いほど、遅れの傾向が強い状態です。大脳灰白質とは、大脳皮質とも呼ばれ神経細胞が集まる部位。成長期の子どもでは年々増加していくのが正常な状態です。
しかし、研究の結果、インターネットの使用頻度が高い子どもほど、3年間でこの灰白質体積がほとんど増加しなかったことが明らかになりました。

また、ほぼ毎日インターネットを使用する子どもたちの全脳の灰白質の発達はほぼゼロに近く、脳の成長がほぼ止まっていました。つまり、勉強をしようがしまいが、学力が上がらなかったと推測できます。
このデータはインターネット習慣との関係を見たもので、スマホとの関係を直接調べたものではありません。しかし、前述の内閣府のデータでも中学生の60.8%、小学生の40.7%がスマホでインターネットを利用していることが分かっていますので、スマホ使用との関係があることが推測できます。
このことから、スマホが破壊していたのは、「学力」ではなく、「脳」そのものであった可能性が高いと言えます。
家庭でもできる身近なデトックス法は「読書」
では、子どもたちの脳を守るために、家庭でできることはあるのでしょうか。上記と同じく子どもたちの脳MRIデータから得られた有力な対処法をご紹介します。
私たちは296名の児童・生徒を対象に、読書習慣と脳発達の関係を3年間追跡した研究も行いました。読書習慣については絵本、マンガ、雑誌を除く本を読む頻度に関して「ほぼ毎日」「週に4~5日」「週に2~3日」「週1日」「ごくたまに」「まったく読まない」の6群に分けて実施。
結果は、読書をする頻度が高い子どもほど、大脳左半球の白質の密度が高く、脳の発達が良いことが示され、特に、言語処理に関わる前頭葉と頭頂葉をつなぐ神経線維束がより発達していました。
また、読書習慣のある子どもは言語理解能力だけでなく、ワーキングメモリ・認知速度・視覚性認知力など、さまざまな認知能力が高いことも分かったのです。

読書習慣と学力の関係も見ていきましょう。仙台市の小学5年生〜中学3年生、4万1223名のデータを解析しました。
図10、11、12をご覧ください。赤色がついている群は平均点を超えている(偏差値50以上)ことを示し、灰色の群は平均点を下回っている(偏差値50未満)ことを表しています。
まったく読書をしない児童・生徒は、毎日1時間以上勉強し、かつ5時間以上の睡眠を確保しても、いくつかの群では平均点をわずかに超えるにとどまりました。
一方、読書習慣がある子どもは、30分以上の家庭学習と6〜8時間の睡眠が確保できれば、ほぼすべての群で平均点を超えています。読書時間が長い子どもほど成績が良いという傾向は、一目瞭然です。以上のことから、読書習慣こそ、家庭でできる脳のデトックスとして有効であると私は考えます。



※ここまでは川島隆太著『最新研究が明らかにした衝撃の事実 スマホが脳を「破壊」する』より一部を引用・再構成しています。
子どもとスマホとの上手な付き合い方を一緒に考えたい
スマホそのものが悪いわけではありません。問題は、目的なくだらだらと使い続ける時間が長くなることです。
子どもにスマホを渡す前に、あるいはすでに持っているご家庭でも、「何のために使うのか」「1日どれくらい使うのか」を親子で話し合ってみてください。そしてその時間の一部を、ぜひ読書にあててほしいと思います。
脳が最も大きく育つ、かけがえのない時期。スマホとどう向き合うかは、お子さんの未来に深くつながっています。
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スマホを長時間使用したことで成績が低下してしまった子ども達の脳には、いったい何が起こっているのだろうか?
本書では、このような疑問に基づいて行われた新たな調査の結果を踏まえ、『スマホが学力を破壊する』刊行以降に判明した事実についてまとめた一冊である。
結論から言えば、スマホの過度の使用は単に学力を低下させるだけではなく、子ども達の脳の発達そのものを阻害し、器質的な変化を生じさせていることがわかった。しかも、子どもだけでなく大人達の脳にも深刻な影響を及ぼしていることが推測されるのだ。
スマホ使用の知られざる真のリスクとはいったい何なのか。そして、我々は今後、どのようにスマホと付き合っていけば良いのか。本書はこれらの問題を考える上での必読書だと言えるだろう。
著者紹介
川島隆太
東北大学加齢医学研究所教授。スマート・エイジング学際重点研究センター長、同研究所所長などを歴任。『脳を鍛える大人の計算ドリル』『脳を鍛える大人の音読ドリル』はシリーズ累計350万部を超えるベストセラーに。『スマホが学力を破壊する』(集英社新書)など著書多数。文部科学大臣表彰「科学技術賞」、河北文化賞など受賞多数
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文・構成/やまもとひろな
