会社員を辞め、群馬県に移住して子ども3人を育てながら遠隔で「オンライン秘書」。地方でも都会の感覚で仕事ができる!

東京で忙しく仕事をしながら子育てをしていた深川瑞穂さん。「実家に近く、自然の多い場で子育てがしたい」と思い始めました。でも、ネックになるのは仕事。東京を離れると、将来の仕事のキャリアが見えにくくなりそうで……。紆余曲折ありながらたどりついたのが「オンライン秘書」という仕事です。どんな地域にいてもできて、クライアントにも喜ばれ、誇りを持てる。「オンライン秘書」とはいったいどんな仕事?仕事をするにあたり、家庭環境の整え方は?深川さんに聞きました。
(撮影/maii)

地方都市に「移住して仕事を探そう」と思ったけれど、難しい

――深川さんは東京在住時に3人のお子さんをもうけ、仕事と育児の両立に奮闘され、ご実家に近く、自然豊かな中でお子さんを育てようと思い始めました。でも、仕事について悩んだのですよね。

東京都世田谷区で双子の育児を始め、卒園式を迎えた。この後館林市に転居することに

深川さん:群馬県の館林市に移住しました。実家まで車で10分。双子の長男長女と6歳離れた次女の3人の子育てをしながら都会で仕事を両立するのは大変だなぁと思い始めて。でも、ちょっと準備が足りなくて。移住してから転職サイトに登録して探していました。

地方都市ですと、正社員・事務系の仕事でキャリアを積むのが難しいな、と感じました。現地でパートの仕事をするのもいいですけれど、子どもを産む前は商品開発の仕事もしていたので、仕事を通して新しい出会いや学びがあり、キャリアを積める仕事をしたい、という思いが強かったんですよね。でも、地方都市にいきなり引っ越してそういう仕事がいただけるかというと難しかった。

それなら、首都圏の方などともつながれるオンラインの仕事をしようと思いました。移住したのは2023年、まだコロナ禍も残っていて、オンラインでの仕事が定着していた頃でした。

オンラインで動画編集を学んで仕事にしたけれど割が合わず挫折

――オンラインでどんな仕事を?

深川さん:オンラインで仕事をするということ自体、やったことがなかったので、まずは「オンラインの仕事ができる自分になろう」と思って、「学び」から始めました。コロナ禍以降、SNSなどを通じて、仕事の実務を学び、そこで知り合った方々や講師の先生から仕事をいただく、ということが珍しくなくなりました。まずはオンラインで、動画編集を学んで、それで仕事をいただくことにしました。

動画を学ぶのもそう難しくなく、教えてくれた方のツテなどもあって、仕事も割とすぐにいただけました。けれど、ものすごく時間をかけて編集して納品するわりには、仕事の単価が低くて……。今はAIを駆使すればそんなに時間がかからないのでしょうけれど、当時は慣れていないこともあって、「これではお金にならない」と挫折しました。

SNSで知り合い信頼できる人に「オンライン秘書になって」と依頼された

――そこからどうしたのですか?

深川さん:当時はSNSでいろんな方のサイトをフォローしていました。子育てや健康に関することを発信している人や、マーケティングビジネスの解説をしてくれる人。そんな中で経営コンサルタントの方で、ご自分なりのビジネススタイルをしっかり持っている方と深く知り合うことができ、その方から、「深川さんは動画の仕事を請け負うより、自分でビジネスを立ち上げたほうが向いているんじゃない?」と言われたんです。

これまで会社員だったので、そんなことは考えてもみなかったのですが、「とりあえず私の秘書になってくれない? オンラインでやってくれればいいの」と言われ、「月に5万円」という金額も提示されました。

「オンラインで秘書」って何をすればいいのか、どこまでやるのか、まったくわかりません。でも、当時はこれといって収入はなかったですし、信頼できる方でそれなりに長くお付き合いしていた方のご依頼ですから、断る理由もないですし、二つ返事でOKしました。そして、その方を担当した後、いろんな方とお知り合いになり、移住4年目になるこの春には5名のクライアントを担当しています。

オンライン秘書の仕事はいろいろ。自分で作り出すことも

――具体的に今どのような仕事をしているのですか?

深川さん:最初は、秘書と言えば、社長さんのスケジュール管理をして、社長に会いに来る方の手土産を用意する役目かな?みたいに思っていましたが、実際はもっと多岐にわたります。スケジュール管理は当然ながら、決済の状況確認とか契約書の発行とか。私のクライアントさんはみなさんSNSで講座を開いていたり、イベントを開催していたりするので、その企画の内容提案をしたり、企画を立ち上げた後の参加者の管理をしたり。参加者の簡単な質問ならクライアントのかわりに答えることもあります。

――SNSとかシステムなどに強くないとできなさそうですね。

深川さん:そんなことはないです。相談しながら自分のできる範囲でやっています。また、仕事の内容や手間のかかり方で報酬も交渉します。「これだけの時間を使うので少し値上げしていただきたいです」と。また、最初に仕事の範囲と料金を決めてスタートするのですが、途中で「もっとこういうことをした方がいいかもしれません」と提案して、その提案が通ったら最初に決めた金額をアップしてもらえることも、よくあります。

私は会社組織にはしておらず、個人事業主として働いています。

何より「信頼関係を築く」ことが大事。お金はそこからついてくる

――ずっと会社員として働いてきていると、自分の報酬を値上げしてほしいと伝えたり、提案してその分金額を上げてもらうなど、ちょっと気後れしそうです。断られたらどうしようか、など……。

深川さん:信頼関係を築いていれば、「それは今回やめておきましょう」「では別の機会に」などと言われても、気まずくならずにいられます。また、秘書としてお付き合いを続けていく中で自分のスキルが上がって、それを認めていただくことで無理なくアップすることも多いです。オンライン秘書は準備が8割、9割。きちんと準備して確実な仕事をして信頼していただくことが基本、それは会社員も同じですよね。

私自身もずっと会社員で、個人事業主になってまだ4年目です。が、この働き方がだんだんなじんできました。今は私をサポートしてくれる秘書のような方もいるんです。私自身がオンライン秘書にどうしたらなれるかの講座も開催しています。

オンライン秘書はどこにいてもできる、「子育て中」には最適!

――オンライン秘書の仕事のよさってどういうことですか?

まず、パソコンとWi-Fi環境があれば、どこでもできるのが最大のメリットです。私は群馬県館林市に住んでいますが、東京や関西のクライアントさんの仕事もしています。なんなら、海外のお客様の仕事もできますよね。逆に、東京にいても、東京の自宅から東京のクライアントさんの仕事もできるわけです。

子どもがいる方には本当にやりやすいと思います。横で子どもが泣いていても、熱が出て保育園を休んでいても仕事をすることができます。また、ルーティンの作業みたいなことは自動化して任せてしまい、自分はもっと発展的な仕事ができるのもいいところです。

当初の1年くらいは会社員時代のお給料とはほど遠かったですが、最近はかなり満足できる売り上げになってきています。

時間管理」がしっかりできる人はオンライン秘書に向いている

――でも、確実に昇給するとは言えないですし、忙しさの波もありそうですね。

深川さん:はい。土日も働かないといけないときもあります。でも逆に、「今日は子どもの学校の行事があるから半休する」とか、「地域の知り合いの方と食事会をするから、昼間の時間は中抜け」みたいなことが自分の裁量で決められます。つまり、自己管理能力が必要ですね。

この地域では、私みたいな動きをしているのはレアケースだと思います。周りのママさんたちはパートで働いている人が多いです。それだと時間をきっちりと区切って仕事ができるメリットがあり、そうした意味のワークワイフバランスはとれますよね。ただ、私のような仕事の仕方だと、家にいながら自己成長がしやすいところがいいかな、と思います。

子どもたちが過ごしやすい環境を選択

――仕事を充実させるには、ご家族との生活の基盤も安定していることが大事かなと思いますが。

最近になって館林市に家を建てた。家族5人でゆったり過ごせる。左から小学校4年生の長男、深川さん、夫、4歳の次女、小学校4年生の長女

そうですね、特に子どもたちが元気に過ごしてくれているかどうかが大事ですよね。幸いにもうちの子たちは新しい場にもすぐに慣れてくれました。ただ、学校選びには少しだけ気を配りました。私自身が地域の小学校で人数が少なく、ずっと6年間1クラスだったんですね。中学校も同じメンバーで人間関係がちょっと大変かなと思っていたので、2クラス以上ある学校に入学できることを考えて、住まいのエリアを探しました。

上の双子は1年生からずっと3クラス。下の子は今4歳なんですが、この子が入るときは2クラスになるかな。それでもクラス替えがあるからいいかな、と思っています。

住んでいる地域の発展にも貢献したら「移住」の意味が深くなる

――一方で、2時間の通勤も大変そうですが……。

深川さん:夫は通勤に2時間かかり、スーパーマーケットの運営会社という仕事柄、土日が休みでないこともあり、とても忙しいです。疲弊しないかなと少し心配ですが、もし仕事に疲れたら、館林市の中で、あるいはここから通勤しやすいところに転職することもあるのかなと思っています。

私は館林でとても気持ちのいい方々と知り合うことができました。年上の女性たちもいろいろ教えてくださったりとか外で会ったときにご挨拶して立ち話したりとか。そういうつながりが面倒だと思うタイプの方は、地方への移住は大変かもしれませんが、私は地域に受け入れてもらえて本当に楽しくやっています。

深川さん:実は今、地域でも少し仕事をさせていただいています。地域の中小企業は、そのよさを発信しきれていない気がするんです。いろいろと知り合う中でそれに気づいて、なにかしらサポートできないかなと思っています。この地域に移住してきて地域にも貢献できるようになれば、引っ越してきた甲斐があるな、と思っています。

――「オンライン秘書」という新しい働き方。会社員とはまったく勝手が違い、自己管理能力が大事になってきますが、子どもがいながらビジネスのまっただ中で力を発揮したい人は、考えてみてもいいかもしれません。

前編を読む

東京で子育てと仕事の両立に疲れ果て…「なりたい自分」を目指し、親子で群馬県に移住、「オンライン秘書」で働くまで
大学在学中にアルバイトしていた会社で夫と知り合い、5年後に結婚 ――深川さんは栃木県佐野市で育ち、高校を卒業して上京したのですね。 ...

お話を聞いたのは

深川瑞穂さん オンライン秘書

大学卒業後、スーパーマーケット運営会社に就職、同じ会社に勤務する男性と結婚、双子を含む3人の子の母親に。子育てと仕事を両立させながらの都会の生活に疲れ、移住を決意、オンラインでできる仕事を探す。現在は個人事業主として個人や中小の企業の「オンライン秘書」を仕事にし、群馬県館林市で夫、3人の子どもとともに生活している。

取材・文/三輪泉

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