不登校になっても、学びの選択肢はある? 学校以外の学びの場「オルタナティブスクール」とは【不登校の苦しみから抜け出す処方箋】

「不登校という概念をこの世からなくしたい」との想いから、企業や保育園・幼稚園にて不登校を理解するための講演などを行っている蓑田雅之さん。これまでの多くの保護者の方と接してきた経験をもとに、不登校の苦しみから親子で脱するための処方箋をお届けします。今回は、子どもが不登校になった際、学校外で学ぶ方法についてです。

不登校で心配になる教育。学校以外に学びの道は?

2024年の文部科学省の発表によると、今この日本で不登校になっている児童生徒の数は34万人を超えているそうです。中学校ではなんと16人に1人が不登校の状態に。1クラス30人で考えると、クラスに2人は不登校の生徒がいる計算になります。ものすごい数ですね。

さて、これだけ学校に行けない子が増える中で、親として心配になるのは、やはり子どもの教育のことでしょう。学校に通えなくなった子はどうすればいいの? どこで学べばいいの? 社会のレールから外れて、この先ずっと家にこもってしまったら…などなど、心配の種は尽きません。

でも、安心してください。学校に行かなくても、学ぶ道は他にもあります。今回は、筆者の子どもの経験も踏まえて、学校以外の教育機関で学ぶ方法についてお伝えしましょう。

もう一つの選択肢「オルタナティブスクール」

「オルタナティブスクール」というものがあるのをご存じですか。オルタナティブとは「もう一つの」という意味を持つ英単語。直訳すれば、「もう一つの学校」という意味になります。

何に対して「もう一つ」なのかというと、言うまでもなく日本にある普通の「学校」です。文部科学省に認可されていない義務教育制度の外にある学校を、“もう一つの選択肢”という意味で、オルタナティブスクールと呼んでいるのです。

海外には、公立の学校かオルタナティブスクールかを選べる国も

オルタナティブスクールには、いろいろな種類の学校があります。ドイツで生まれたシュタイナー教育を実践する学校や、オランダで発展したイエナ・プランの学校、筆者の息子が通っていた探究的な学習を行うタイプの学校や、サドベリースクールのような自由な学校もあります。また、フリースクールや自宅で学ぶホームスクールも、広い意味でオルタナティブスクールの一部と考えていいでしょう。

ニュージーランド・オークランドのシュタイナー学校 Photo by Michael Park.CC 表示-継承 3.0, Wikimedia Commons

こういった学校外にある学びの場は、日本でこそマイナーな存在ですが、海外では公立校と並んで義務教育の一環として位置づけている国もあります。たとえばオランダでは子どもが小学校に上がるとき、公立の学校とオルタナティブスクールを自由に選ぶことができます。

デンマークでも教育選択の自由が保障されていて、オルタナティブスクールやホームスクールが認められています。シュタイナー教育を行う学校は、日本にはわずかに10数校しかありませんが、世界には1000校を超える数のシュタイナー学校があります。日本では無認可扱いされていますが、世界の多くの国々ではメジャーな教育として認可されているのです。

義務教育制度がある中で、どのようにして通えばいいの?

では、実際にどのようにしてオルタナティブスクールに通えばいいのでしょうか。ここからは筆者の事例をもとに説明していきたいと思います。

校長先生や教育委員会へ相談

筆者の子どもは小学校の2年生まで地元の公立校に通い、3年生の春から探究学習を行うオルタナティブスクールに転校しました。この間、私はいろいろ教育制度について調べ、「義務教育」とはいうものの、子どもに就学の義務があるわけではないことを知りました。法律上では、必ずしも国が決めた学校に通う必要はなく、無認可の学校に通うことも制度上は可能なのです。

そこで私は在籍校の校長先生に、こういう理由で「子どもを転校させたい」という意志を伝えました。最初はよい返事を得られませんでしたが、子どもの性質などを含めて粘り強く伝えた結果、自治体の教育委員会に行ってほしいと言われました。

そこで今度は教育委員会に出向き、オルタナティブスクールへの転校を申し出ました。ここでもすぐに許可は降りませんでしたが、やはり粘り強く説得した結果、ようやくお許しをいただき、晴れて転校することができました。

大切なのは、学籍のある地元の学校との関係を良好に保つこと

一般的にオルタナティブスクールには、地元の学校に籍を置いたまま通うことになります。筆者の子の場合は、在籍の学校と相談して、オルタナティブスクールの出席を在籍校の出席扱いにしていただきました。

月ごとにスクールが作成した出席証明書を封筒に入れ、担任の先生宛てに郵送し、それをもって学校の出席と見なしてもらったのです。多少手間はかかりますが、これをやっておくといつでも学校に戻れますし、公的な学校の卒業資格を得ることができます。

このような細かい約束事は、ひとつひとつ学校と相談して決めていきます。在籍の学校と子どもとの面会頻度も、月に一回という学校もあれば、年に一度顔を見せてくれればいいという学校もあります。

ただ、ここで気を付けたいのは、学校とは決別せずに良好な関係を保っておくこと。子どもが不登校になると、どうしても学校と対立しがちになりますが、学校と対立してもいいことは一つもありません。学校側にもさまざまな事情があるので、そこはお互い冷静に話し合って、子どものためによりよい方法を見出すようにしていきたいものです。

学びの環境を変えるだけで、イキイキと動きだす子どもがいます

ところで、「学校外の学び」「オルタナティブスクール」などというと、ものすごく特殊なことをやっているように思えますが、実際は学びの環境が少し違うだけで、子どもは普通に育っていきます。特別すぐれた人間になるわけでも、偏った人間になるわけでもありません。

※写真はイメージです

筆者の息子は、小学校は探究学習を行うNPO法人のスクールに通い、中学校の3年間は授業がなく、先生もいないサドベリースクールに通いました。かなり特殊な環境ですが、その後は高卒認定試験を受けて通信制の大学に進学し、途中から編入試験を受けて4年制の大学に編入し、今は普通の大学生になってキャンパスライフを楽しんでいます。

冒頭でも紹介しましたが、今この日本では34万人の児童生徒が不登校となり、苦しんでいる子もいます。すんなり学校復帰できればよいのですが、それが難しい場合は無理に通わせずに、学校外の学びの場を選択してみてはいかがでしょうか。

文部科学省に認可された学校だけがすべてではありません。学びの環境が変わるだけで、水を得た魚のように、イキイキと動きだす子どもがたくさんいるのです。

息子さんの通ったサドベリースクールについての記事はこちら

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この記事を書いたのは…?

蓑田雅之 コピーライター

一般社団法人 楽習楽歴 代表理事長。子どもをサドベリースクールに通わせた経験から学校教育のあり方に疑問を持ち、教育分野の研究に着手。「不登校という概念をこの世からなくしたい」という思いから、「おはなしワクチン」の活動を開始。企業や保育園・幼稚園にて、講演を行っている。著書に『もう不登校で悩まない! おはなしワクチン』『「とりあえずビール。」で、不登校を解決する』(びーんずネット)がある 。

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