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「できない」と思わず、「失敗するかもしれないけどやってみよう」

「表紙からもう、すばらしい!」と絶賛された永添智之さんの研究作品。時間をかけて復活させたグローブをおじいちゃんにはめてもらって、智之さんと撮った表紙の写真は、智之さんのはじけるような笑顔がとても印象的です。ボロボロのグローブを苦労して新品のように仕上げた過程を研究作品にしていますが、そのドラマに、みんなが感動します。
――智之さんは、おじいちゃんの家から見つかったボロボロのグローブを新品同様に復活させ、その過程を自由研究にしています。普通、小学生だったら「できない」とあきらめてしまうと思うのですが。自分で修理できると思いましたか?
智之さん:最初はぜんぜん思わなかったです。でも、「できなさそうだからやめよう」とは思いませんでした。大人が使うグローブは値段が高いからそう簡単には買えません。修理にもお金はかかるけれど、買うよりずっと安いし、せっかく思い出のグローブが出てきたんだから、失敗するかもしれないけれど、やってみようと思いました。

智之さんのお父さん:このグローブは私が子どもの頃に、父と私がキャッチボールに使っていたものでした。私にとっても思い出深いものだったんです。ちょうど夏休みの自由研究を何にしようかと話していた時期だったので、それならやってようかとふたりで話し合いました。
智之は2年生から野球のチームに入っていて、グローブを実際に使っていましたから、興味もあったと思います。自由研究をするなら、自分の興味があるものがいいと思っていました。ちょうどいい題材が出てきたな、と思いましたね。

どうやって修理していいかわからない…調べよう!専門家に聞こう!
――実際、復活させる方法を知っていたんですか?
智之さん:知らなかったです。だから、図書館に行って、グローブのしくみの本を探しました。グローブの部分がこうなっているとか、そういう構造や、グローブの歴史が載っている本も借りました。
智之さんのお父さん:とにかくグローブのことが載っている本を、使えるかどうかは別として何冊か借りました。そして、グローブの専門家に話を聞こうということになったんだよね?
智之さん:澤井さん(地元のスポーツ店「マイルドスポーツウエステ」店主)に話を聞きに行きました。グローブはぺっちゃんこだったから、グリスという接着剤みたいなものを塗るとしっかりするとか、ボールを受けるポケットができるとか、そういうことを聞きました。グリスを塗るためには、グローブのひもをはずさないといけない。ひももボロボロだったので、ひもは全部新しいのにつけかえることになりました。そのひもは澤井さんのところで買うことができました。
泥汚れと汗汚れ、ペンの汚れは何を使えば落とせるのか、あらかじめ実験
――修理をするために、智之さんはまずグローブをバラバラにして、一気に水洗いしていますよね。

智之さん:その前に、グローブに泥汚れと汗の汚れとフェルトペンの汚れがついていたので、どれをどうやって落とすか確かめました。フェルトペンの汚れは除光液で落ちるなど、インターネットで調べて知りました。
グローブの古い匂いや汚れは洗剤で洗うしかないんじゃないか、ということになって。それがいいのかわからないけれどやってみました。
水洗いしたら縮んでしまわないうちにすぐオイルをつけたほうがいいということも、前もって調べておきました。ゴシゴシ洗ったらペンの汚れも落ちて、かなりきれいになりました!
――色もきれいなオレンジになりましたね。
智之さん:このグローブは以前はオレンジ色だったので、もとどおりにするためにオレンジ色のカラークリームを塗りました。

ひもを通すのがかたくて大変!
――難しかったのはどういうところですか?
智之さん:ひもを通すところです。特に(親指と人差し指の間をつなぐ)ウェブの一番上のところにひもを通すのがかたいし難しかったです。最後はピンセットとかも使いました。そこはお父さんに少し手伝ってもらいました。
智之さんのお父さん:グローブのひもは使っているうちにちぎれやすくなります。ひもの取り替えについては、私自身はやりかたを少し知っていました。私は高校の教員で、野球部のコーチをしています。
ただ、できるだけ手を貸さず、どうしてもかたくて子どもには難しいところだけ、やり方を教えた上で、少し手を貸しました。それと、グリスを入れるのは澤井さんに手伝ってもらいました。あとはほぼひとりでやりましたね。

――ひもをつけ直すところはたくさんありましたよね。かたいし難しいし、いやにならなかったですか?
智之さん:野球が好きで、阪神タイガースのファンなので、試合をよく見に行っていました。高校野球や侍ジャパンの試合も見ています。今はお父さんのチームで大太鼓を叩いて応援団をやっています。
自分が興味があることだから、グローブをなおすのもいやだとか思いませんでした。
智之さんのお父さん:大好きな野球のことだから、できたんじゃないかなと思います。それと、基本的に明るい子で、好きなことはとことん集中してやるほうだと思います。途中で投げ出すこともあまりないので、最後までできるんじゃないかなと思っていました。
一生懸命に修理したグローブでおじいちゃんとキャッチボール

――復活させたグローブでおじいちゃんとキャッチボールしましたか?
智之さん:しました。うれしかったです。おじいちゃんもすごく喜んでくれました。
――この自由研究は、最初にグローブを見つけたところから始まって、疑問を持って調べて、実験して実行して完成するという、時間の流れがすごくよくわかるようになっています。とてもわかりやすく、「物語性がある」と審査員の方から絶賛されていましたが、このように理解しやすく、見る人も感動させるような構成にできた秘訣はどこにあると思いますか?
智之さんのお父さん:まず、自分が好きな野球に関係するものであったこと、日頃から自分用のグローブを使って手入れもしていたという経験があったことが大きな理由かなと思います。まったく普段見たこともないこと、興味をもっていないことだと難しいですね。
――智之さんは、毎年学校の自由研究を熱心にやっているのですってね。
智之さん:1年生のときにはとうもろこしの数を数えるという自由研究をやりました。2年生のときにはクウェートの研究をしました。


智之さんのお父さん:クウェートについては、2024年に神戸で開催されたパラ世界
そのような経験があったので、どうやったら自由研究としてまとまるか、自分でもなんとなくわかってきたのかな、と思います。
グローブを復活させて家族の絆が深まった
――グローブを修理して復活させたことで、智之さん自身が変わったことはありますか?
智之さん:おじいちゃんに喜んでもらえて、すごくよかったと思えました。グローブを復活させるのが少し大変だったので、これからはもっとグローブや野球の道具を大切にしようと思いました。
智之さんのお父さん:今回のことで息子自身が道具がどう作られているかというしくみや、手入れの大切さを深く学べたので、とてもよかったと思います。見ていると、平日でも自分のグローブにオイルを塗ったりしてていねいに磨いているのを見かけます。
また、智之といっしょになってグローブのしくみや特性を調べたりしたことが、私としても楽しかったですね。日頃、教員の仕事やコーチの任務で忙しく、家族とじっくりふれあえる機会が少なかったので、この自由研究を通して、智之と自分、ふたりとも好きなことで共通の時間を持てたこともよかったと思っています。
――おじいちゃんのグローブを修理したことで、智之さんとお父さん、おじいちゃんと、3世代のふれあいができ、復活させたグローブをおじいちゃんにプレゼントできたこともすばらしいですよね。夏休みの自由研究が、家族の絆もしっかりと深めてくれました。
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取材・文/三輪泉 撮影/五十嵐美弥(作品)
