【言語聴覚士監修】発達障害の小学生が選べる就学先は?特別支援学級の特徴や就学相談について

発達障害のある子どもたちの就学先には、大きく分けて、通常学級、特別支援学級、特別支援学校の3つがあります。わが子の就学先を選ぶのは親の役割。それぞれのメリットデメリットを比較して、わが子に適したところを選びたいものです。

発達障害の小学生は、3つの進学先から保護者が選ぶ

進学先は、通常の学級、特別支援学級、特別支援学校

幼稚園や保育所は、基本的に統合教育(保育)なので、障害がある子も、発達に凸凹がある子も、一緒に保育してもらえます。しかし、小学校入学を迎えると、我が子をどこに進学させるかは、親の意向が反映されます。

進学先には、通常の学級、特別支援学級、特別支援学校があります。発達に遅れや凸凹がある子は、通常の学級に在籍しながら、専門的指導をうけられる通級指導教室(通級)に通うこともできます。

発達障害の子は小学生になる前、年長になったら「就学相談」を受けよう

その子に適した就学先のアドバイスが

地域にどんな学校や学級があるのか、うちの子にはどこが適しているのかなどを相談できるのが、教育委員会が行う「就学相談」です。就学相談担当者がお子さんの生育歴を聞き取り、様子を観察し、必要に応じて知能テストなどを行った上で、お子さんに適した就学先をアドバイスします。そのうえで、どこの学級、学校を選ぶかを保護者が検討し、その意向を伝えます。

「就学相談」の申し込みはスケジュールの目安

就学までに流れは概ね下記のようになります。詳細は自治体により異なります。地元の教育センターや、教育委員会、療育施設などにお問い合わせください。

6月ごろ 相談の申請

自治体公報誌や保育所や幼稚園を通じて「就学相談」の案内があるので、教育委員会に申し込む

7〜8月ごろから 就学相談実施(保護者面談・行動観察など)

個別面談開始。就学支援委員(小・中学校教諭、特別支援学校の教諭、心理士など)が園に出向いて、行動観察を実施。必要に応じて知能検査なども行い、保護者が適切な就学先を選択できるようにアドバイスしてもらえる。

10月ごろ 就学時健診

学校に申し出れば、個別相談や学校も特別支援学級や通級教室の様子を見学、体験することができる。

12月末まで 保護者が希望を申し出る

希望の就学先を就学支援委員会に伝える。

1月以降 就学先の通知

就学支援委員会の検討結果が保護者に通知される。ただし、どこに通うかには、保護者の意向が反映されるで、園の先生や学校の先生、医師などに相談しながら、よく検討したい。

発達障害の小学生に対応する3つの就学先とは

パパやママは通常学級の生活しか知らないことがほとんどでしょうから、他の学級や学校を選ぶのには勇気がいります。就学相談や就学時健診の際に、地域の特別支援学級や特別支援学校を見学させてもらって、現場の先生の話を聞いて、じっくり検討することをおすすめします。それぞれの特徴は下記の通りです。

通級

教師1人に対して生徒40人が定員の通常学級に在籍しながら、週に1回程度、通級指導教室が設置されている学校に通い、専門的な指導を受けられます。在籍する学校に通級指導教室がある場合もあります。

特別支援学級(固定級)

教師1人に対して生徒8人。小学校、中学校の中に設置される学級で、教育上、ほかの生徒とは違う、特別な支援を必要とする子どもが在籍できる。「なかよし学級」など、学校独自の名称をつけているところが多いです。

 

特別支援学校

教師1人に対して生徒6人(重複障害の場合は生徒3人)。障害児、病弱児、虚弱児に対して、教育と自立を図ることを目的に、知識や技術の習得を行う学校。小・中学校などに準ずる教育を施すとともに、障害による学習上、または生活上の困難を克服し、自立を図るために必要な知識技術を授けます。

小学生の発達障害には、その子に合った勉強のペースを確保してあげたい

将来を見越して、我が子に合う居場所を見つけよう

発達障害の子の中には、知的能力が高い子もいて、その場合は大学進学も踏まえて学習をさせたいと思うのが親心。その場合は選択肢は通常級となりますが、苦労もあるかもしれません。いっぽうで、特別支援学級や特別支援学校は、子どもひとりひとりの苦手や特性に合わせた指導があり、将来を見据えたサポートをしてもらえます。

どこを選んでもメリットとデメリットがあるので、先のことを見越して選ぶこと大切です。

通常級に在籍し通級利用をする場合のメリットとデメリット

メリット

通常級に在籍するので友達が多い

幼稚園や保育所で一緒だった子と一緒に過ごせる

抜き出しで、苦手な部分をフォローする専門的指導がうけられる など

デメリット

勉強についていけないことがある

場合によっては友達からのいじめ、仲間はずれがある

先生の指導力が足りない場合は、クラスの中での居心地が悪くなる など

 

特別支援学級に通う場合のメリットとデメリット

メリット

少人数で手厚く、丁寧に指導してもらえる

その子らしさを発揮できる

クラスが小さな家族みたいになり、居心地よく過ごせる など

デメリット

担当する先生の力量に左右される

生活週間をつけることや社会性や体力作りなどを優先され、勉強させたい場合、物足りなく感じることがある

保護者の送り迎えが必要 など

 

特別支援学校に通う場合のメリットとデメリット

メリット

クラスの人数が少なく手厚く指導してもらえる

複数担任制なので、先生との相性が悪い場合にも他の先生を頼れる

就労までを見据えた一貫した教育をしてくれる など

デメリット

住んでいる地域から離れた場所に通うことになり、就学前までの人間関係が断たれる

大学に行きたい場合は大検を受ける必要がある など

 

監修/中川信子先生

言語聴覚士。「子どもの発達支援を考えるSTの会」代表。「サポート狛江」代表。東京都狛江市を中心に1歳6か月健診、3歳児健診後のことばの相談や、就学前の時期に発達の遅れなどについて相談を受けている。『発達障害とことばの相談』(小学館)など著書多数。中川信子公式HP

 

もっと詳しく知りたい人はこちら!

『発達障害あんしん子育てガイド』

発達障害の子に必要なのは、本質的な特性を理解すること。そして、それを知って寄り添っていくことで、その子のもって生まれた能力を生かす道が開けます。発達障害のある子どもをいかにサポートしていくかを、専門家の具体的な援助の手立てを含めて紹介するとともに、就労支援の情報までを網羅しました。
幼児から思春期までのかかわり方を子どもの発達段階に沿った構成で、発達障害の子の子育てに生かせる知恵が詰まった、今日から役に立つ1冊です。同じ子育てに悩むママたちの声も収録しています。発達障害の子に寄りそう子育てバイブルです。
本体1,200円+税(小学館)

 

イラスト/海谷泰水 取材・文/江頭恵子

編集部おすすめ

関連記事