日々めざましく成長していく赤ちゃん。その発達過程で、動くものを目で追ったり、手足をばたつかせたり、様々な変化や特有のしぐさを見ることができます。中でも、赤ちゃんが自分の手をじっと見つめるハンドリガードには、どんな意味があるのでしょうか。
今回は、広島の産科・婦人科「藤東クリニック」院長の藤東淳也先生に、ハンドリガードの意味、ハンドリガードをする理由、いつからいつまで行うのかなど、ハンドリガードで気になることを教えていただきました。
ハンドリガードとは
赤ちゃんが自分の手を不思議そうにじーっと見つめている様子を見たことありませんか。これは「ハンドリガード」と呼ばれる赤ちゃん特有のしぐさのひとつです。リガード(regard)は訳すると「じっと見つめる」という意味の英単語で、自分の手を見つめている赤ちゃんの様子を表現する言葉として使われています。
ハンドリガードの動作
ハンドリガードの動作としては、じーっと見つめるだけでなく、見つめていた手をお口に持っていきパクッと口に入れたり、舐めたりします。また、指先を開いたり、拳をあげる、拳を左右に揺らす、手を組むなどもハンドリガードの動作の一種です。
ハンドリガードをするのはなぜ?
ハンドリガードをするのはなぜでしょうか。ハンドリガードの動作が見られる意味について説明します。
目で見る力(視覚)の成長
手をじーっと見つめるには、見つめる手に焦点を合わせる必要があります。新生児の段階でも、光を感じて瞬きをするなど、目の動きは見られますが、焦点を合わせることはできません。手を見つめる、動いた方に視線を動かすことができるようになるのは、目で見る力(視覚)の成長の現れということになります。
体を動かす力(運動機能)の成長
生まれたばかりの赤ちゃんは、自分の体を動かすことができません。日々の成長していくにつれて、自分の体を動かせるようになっていきます。寝たままで自分の体を動かすことができなかった赤ちゃんが、手を見つめて手を動かし、くわえたり舐めたりするようになるのは体を動かす力(運動機能)が成長してきたから。
目で見る力(視覚)の成長と、体を動かす力(運動機能)の成長が合わさって、ハンドリガードのしぐさが見られるようになります。
好奇心
自分の手を見つめるハンドリガードは、目で見る力(視覚)の成長と、体を動かす力(運動機能)の成長以外に、好奇心の現れでもあります。自分の手を動かすことから始まり、興味の対象がどんどん広がっていきます。ハンドリガードは、赤ちゃんの世界が広がる機会の第一歩です。
ハンドリガードをするのはいつからいつまで?
ハンドリガードの動作が見られるようになるのは、いつからでしょうか。また、その動作を見ることができるのは、いつまででしょうか。
ハンドリガードは生後2ヶ月頃から始まる
個人差もありますが、ハンドリガードの動作は生後2~3ヶ月頃から見られたという声を多く聞きます。ちょうどその頃から、目を開けて起きている時間が多くなっていきます。おっぱいを飲んで寝ているばかりだった赤ちゃんが、ハンドリガードをすることで、ママパパにとっては何とも言えないほほえましい気分になりますね。
中には、「生後3ヶ月なのにハンドリガードが見られない」などと悩むママパパもいますが、気が付いていないときにこっそりしている場合もあるので、目撃できたらラッキーくらいの大らかな気持ちでいた方がいいでしょう。
ハンドリガードは1~3ヶ月くらい続く
ハンドリガードの動作の終了時期も赤ちゃんそれぞれです。多くの場合、ハンドリガードの動作は、始まってから1~3ヶ月程度続くようです。赤ちゃんの成長は早く、興味が広がる速度も早いので、気がついたらいつのまにかしなくなっていたということもあるので、終了時期についても赤ちゃんそれぞれといえるでしょう。
また、赤ちゃんが手を動かせるようになるので、ハンドリガードで自らの顔をひっかいてしまうことも。手袋やベビーミトンで、それらを防止することもできます。
手袋やベビーミトンが赤ちゃんの成長の妨げになることはないのですが、なぜひっかいてしまうのかの原因を考え、ひっかかないように対処することが重要です。
こんなハンドリガードは大丈夫?
赤ちゃんが見せるハンドリガードの中には、気になる動きを見せることがあります。「こんなので大丈夫なの?」と気になってしまいそうなハンドリガードについて説明します。
ハンドリガードをしない、片手しかしない
生後2~3ヶ月過ぎてもハンドリガードの動作が見られないと、心配になってしまうママパパもいるかもしれません。しかし、成長には個人差がありますし、その子にとって適切な時期がくればハンドリガードが始まることもあります。ママパパが見ていないときにこっそりやっていた場合もあるので、大らかな気持ちで考えましょう。
また、片手ばかり目で追ったり、片手だけ舐める場合も気になってしまうかもしれませんが、そのときに動かしやすかったり、向きやすい方向だったなどの理由も考えられます。「利き手なのかもしれない」と思われるかもしれませんが、そうとも限りませんので、あまり気にする必要はないでしょう。
手ではなく足を見ている
赤ちゃんの中には、手ではなく足を動かす(フットリガード)子もいます。他の赤ちゃんと比べ、「何で手を動かさないのだろう」を心配する必要はあまりないでしょう。成長の過程で見られる動作のひとつと認識していれば問題ないと考えられます。
ハンドリガードをしだしてから寝なくなった
ハンドリガードの動作を見せるようになったということは、周りのものに興味を持ち始めたということです。今まで寝てばかりだった赤ちゃんが、自分の身の回りを認識しだした影響で、寝る時間が少なくなることも。ハンドリガードが原因ではなく、生活リズムや環境の変化など、他に原因がある場合も多いので、まずは赤ちゃんの生活環境を整えてあげることが大切です。
一度しなくなったハンドリガードが再開
赤ちゃんの興味が他のものへ移ると、ハンドリガードをしなくなりますが、一度しなくなったハンドリガードを再開することもあります。生え始めで歯がかゆい、指しゃぶりで安心感を得たいなどの理由もありますので、手指を清潔にしてあげる、飲み込んでしまうものを周囲に置かないなど、気を付けて見守ってあげましょう。
ハンドリガードは、赤ちゃんの成長を見守りながら
ハンドリガードは赤ちゃんの成長過程のひとつですが、必ず行わなければいけないというものではありません。開始や終了の時期や、こんな動きをしているなど、他の赤ちゃんと比べて心配したり不安になっているママも多いかもしれません。しかし、赤ちゃんの成長の進み方は一人ひとり違って当然です。長い目で見守り、子育てを楽しみましょう。
記事監修
藤東 淳也(ふじとう あつや )
広島県生まれ。O型。東京医科大学卒業。米国カンサス大学留学後、東京医科大学講師として、婦人科内視鏡手術・がん治療に専念。2010年より広島で「産科・婦人科 藤東クリニック」を開業。専門知識と専門技術を活かし、「根治性を高め、機能温存を図り、さらに、容姿・美容の維持を図る医療」を提供するために努める。
藤東クリニック
文・構成/HugKum編集部