発達障害の子の中には我慢が難しい、約束やルールが守れない等お子さんの行動に頭を悩ませている親御さんは結構いるのではないでしょうか?「放課後デイサービスLuce」を運営し、発達障害児のサポートに関わる藤原美保さんに、具体的な支援について伺いました。
ルールとは、人と人とが気持ちよく生活するための決め事
子どもが社会のルールを理解し守れるようになると保護者はずいぶんと子育てが楽になります。子どもにルールを守らせるには段階を踏んだアプローチが必要となります。
まずは「ルール」を守る事のメリットを教える事が必要になります。
ルールを守るメリットを意識して教える
ルールを守るメリットが理解できれば、発達障害の子でも、多くの子が適応できます。。
発達障害の子どもたちがルールを嫌う原因は、多くの場合、ルールが自分の行動や感情や考えを抑制するものだと思ってしまうからです。
実は、ルールは私たちが社会で生活するうえで人と人とが気持ちよく生活するための決め事で、自分の権利や尊厳を守るものでもあるのです。
定型発達では、ピアジェの発達理論にあるように一度得た知識から他の物を予想し(同化)、似てるけどちょっと違うという(調節)が出来、外の世界の情報を同化と調整を繰り返し環境によりよく適応すること(均等)が出来るので、ある程度の年齢になると自然とルールを守る事の大切さが身につきます。
しかし、発達障害のお子さんの場合は、この「調節」が上手くできない場合があります。
ですから、ルールを守る事のメリットを意識して正しく教える必要があるのです。
ルールを理解できるようになるのは4歳後半くらいから
約束やルールを理解できるようになるのは定型発達でも個人差はありますが、4歳後半ぐらいからです。
社会のルールは子どもにとってわかりづらいものもあります。物事を視覚的に捉えやすい発達障害の子にはとても分かりづらい物も多いのです。
例えば、「どうして順番を守らなくてはいけないの?」という子どもの質問に対して長々と「相手の立場になって考えて…」などと説明しても理解できません。
さらに子どもに「あれはダメ、これはダメ」と多く言うことで、「ルール」は自分の行動や感情を抑制するものだと考えるようになってしまいます。
では、どうやってそれを教えていけばいいのでしょうか?
「交通安全のルール」を使って、自分の安全や権利を守る事を教える
子どもが幼いころに触れるわかりやすい社会的ルールは「交通安全のルール」です。特にわかりやすいのは信号。守る事が自分のメリットになるわかりやすいルールです。
「青になったら渡っていいですよ」「赤は渡ってはいけません」
このルールがなかったら歩行者は車に轢かれてしまう、車に轢かれたら死んでしまうかもしれないことを教えます。
信号や車は視覚的にわかりやすく、自分の日常に密接にかかわっているので子どもにとってイメージが付きやすいのです。
交通安全のルールを例にあげ、ルールというのは自分や自分の大切な家族の安全を守るためでもあるということを話すと理解が進みやすいでしょう。
よく、歩道から飛び出そうとした子どもに「轢かれたらどうするの!」と怒っているお母さんがいらっしゃいますが、発達障害の子は自分の行動を客観視出来ない子が多く、自分が轢かれてしまうことなど考える事が出来ません。
定型発達のお子さんでも、相手の立場になって考えるというのを理解できるのは脳の機能的に9歳ぐらいです。
「ルールを守ること」が「安全を守ること」を実感させる
「ママが交通安全のルールを守らずに信号守らなかったり、道に飛び出したら車に轢かれてしまうよね?」
「車が信号守らなかったら、ママは轢かれて大けがしてしまうかもしれない」
と言うと、自分が大好きなママが交通事故でけがをしたり死んでしまうかもしれないと、具体的にイメージができるのです。
交通安全のルールを守ることは、ママや子どもの安全を守る事でもある大切な事なのだと教えることができます。
ルールはデメリットばかりではなくメリットでもあるということがわかると「ルール」を守る事に対して抵抗が薄れます。
そうすれば説明していられないような場面で「なんで順番を守らなくてはならないの?」など「なんで?」「どうして?」の質問の時にも「ルールだから」と言うと納得することができるようになります。そして時間に余裕のある時に理由を説明すれば良いのです。
子どもにルールを守ってもらう為に、心がけてほしいこと
そしてそのルールを子どもに守ってもらうために保護者が普段の生活で気を付けてもらいたいのは、子どものとの約束を軽んじないでほしいということ。
発達障害のお子さんは臨機応変、応用が理解できません。親の都合で約束を変更すると理不尽さを感じ、約束やルールを守る事の大切さを感じる事が出来なくなってしまいます。
しかし、親だからと言っていつも約束を守れるわけではありませんよね。
大人が約束を守れなかった時には、子どもには誠実な対応を
時にはどうしても約束を守れない事もあります。そのようなときは誠実な対応をしてください。大人が約束を守れなかった場合は、まず、お子さんに謝り、誠実な対応を教えるよいチャンスだととらえてください。
例えば、替え案を提示することや、待つことでのメリットをわかりやすく教えるのも一つです。そして、大人が約束を守ってくれると解れば、子どもは待つことのメリットも理解します。
しかし、子どもがひっくり返って泣いたり暴れたりした場合は対応を冷静にする必要があります。
なだめすかす必要は全くありません。「冷静に話ができるようになったら話をしよう」と部屋を出るのも一つです。子どもが落ち着いて話を聞けるようになるにはクールダウンの時間が必要だと思ってください。
大人がまず子どもとのルールや約束を守る事を示すことで、ルールや約束を守る事の大切さを学んでくれるのです。それは、社会での適切な対応に結び付きます。
教えてくれたのは

発達障害のお子さんの運動指導の担当をきっかけに、彼らの身体使いの不器用さを目の当たりにし、何か手助けができないかと、感覚統合やコーディネーショントレーニングを学ぶ。その後、親の会から姿勢矯正指導を依頼され、定期的にクラスを開催。周囲の助けを受け、放課後等デイサービス施設「ルーチェ」を愛知県名古屋市に立ち上げ現在に至る。著書に『発達障害の女の子のお母さんが、早めにしっておきたい47のルール』(健康ジャーナル社)『発達障害の女の子の「自立」のために親としてできること』(PHP研究所)がある。