【発達障害の子育てサポート】爪かみがひどい小2の娘。エスカレートして定規なども噛むように…

発達障害の子の中には、我慢が難しい、約束やルールが守れない等お子さんの行動に頭を悩ませている親御さんは多いと思います。療育を目的とした「放課後デイサービスLuce」を運営し、発達障害児のサポートに関わる藤原美保さんに、保護者から寄せられたお悩みに具体的な支援の手立てを伺いました。

ADHDの小2の娘。爪噛みがひどく困っています。止めさせたいのですが、どうしたらいいですか。

小学校2年生の女子です。年長の5歳の時にADHDと診断され、現在も投薬治療をしています。通常級に通っていますが、授業で手を上げて、他の子が当てられると怒り出し、泣き出すこともあるようです。日頃から爪かみがひどく、全ての指が噛みすぎて爪の面積が半分ぐらいになってしまっています。そのせいで爪を切ったことがありません。この頃は、鉛筆や定規など大きなものも噛むようになってしまい、お友達からも遠ざけられているようです。どうしたらいいでしょうか。

 

 

「爪かみ」は、診断名関係なく、不安の強いお子さんに多くみられる行動です

この相談は発達障害の子にはとても多い相談です。診断名関係なく、不安の強いお子さんに多くみられる行動です。ネットで検索しても「ストレス」「癖」などで片づけられてしまっています。

小二の娘さんは、体型的にも幼く、動きもゆっくり。手をあげて他の子が当てられると怒り出すというのは、感情の分化がまだ未発達だと思われます。姿勢保持も難しく、授業中もずっと体を触ったり、爪を噛んだり自分の唾で遊んだりしているようです。親御さんは、指しゃぶりや爪噛みに効果があるという、爪に塗るコート剤も使ってみましたが、効果はありませんでした。

落ち着くために「噛む」ことが必要になっているのでは。体に害のない形で口の中の感覚欲求を満たす方法を考えましょう

なぜ爪噛みが始まったのか? なぜ噛むのか? なぜほかのではなくて爪なのか? そしてどうして多くの子が癖になるまで噛み続けるのか?その理由と対処方法を知るために爪噛みを身体的な要因から掘り下げて考えてみましょう。

身体的な「快」のために「噛む」ことも

「指しゃぶり」や「噛む」という行為が、幼い子にとって、身体的な「快」を求めての行動だと考えられます。大人でも「痒い」ところがあって、かけないとイライラしますよね。

また、「噛む」事で集中力が上がるという事を聞いたことがある方もいるのではないでしょうか?大人でも固めのグミが好きだという方や、運転中頭がぼーっとするとガムを噛む人も多いと思います。つまり、「噛む」という行為が、身体的な「快」への欲求を満たすために必要なのです。

「噛む」行為は歯茎への抵抗感(歯ごたえ)や顎関節を使います。発達障害の子の中にも同じような理由で「噛む」事を求めている場合があります。

乳児の頃の原始反射が残っていることが原因の場合も

もともと情報整理が苦手な発達障害の子は、集団の中で、情報過多になり、落ち着けない事があります。さらには発達障害の子には、乳児の頃の、無意識に特定の筋肉などが動く「原始反射」が残存していることもあるため、口腔内の感覚統合が未発達な可能性もあります。

頭がぼーっとする、イライラする…無意識に何か噛みたい時、爪はちょうどいい硬さだったのかもしれません。しかし、これは子どもも無意識なのでお子さんも説明できませんし、自分でやめる事も難しいのです。

ではどうしたらよいのか?お子さんの体に害のないものでその欲求を満たしてあげることができないか考えていただきたいのです。まず、口の中の感覚欲求を満たしてあげてください。

グミなどは摂りすぎると糖分や添加物なども心配です。歯磨きガムやスルメ、おしゃぶり昆布などがお勧めです。

ガムを使って舌の動かし方のトレーニングもおすすめ。安全と衛生に配慮して、噛んでいいものとダメなものを教えておきましょう

もし、できるならガムを使って舌の動かし方などもトレーニングしても良いかもしれません。ガムを右側で噛み、舌でガムを左側に寄せて左側で噛み、を左右で繰り返してみるのもいいトレーニングになります。

もし、お子さんが口に指を入れてガムを移動させようとしたり、頭などを傾けガムの位置を移動させようとしていたら、舌使いも苦手なお子さんです。食べ物を奥歯に移動させて噛むこともおそらく苦手だと推察できます。

 

ガムが食べられない子の場合は、シリコン製のチューイングネックレスやブレス、ゴムの指サックなどもお勧めです。注意していただきたいのは、飲み込まないようにするための安全面と衛生面です。

どこでもそれを見つけたら噛むようになってしまわないように、噛んでいいものと噛んではいけないものをあらかじめ教えておきましょう。

 お子さんによっては、ストレスなどの心理的な要因だけでなく、身体的に「快」を求めて爪噛みをしている場合もあります。お子さんの現状にあった対処方法を見つけ、爪噛みを減らしていけると良いと思います。

記事監修

藤原美保|健康運動指導士、介護福祉士、保育士 株式会社スプレンドーレ代表

発達障害のお子さんの運動指導の担当をきっかけに、彼らの身体使いの不器用さを目の当たりにし、何か手助けができないかと、感覚統合やコーディネーショントレーニングを学ぶ。その後、親の会から姿勢矯正指導を依頼され、定期的にクラスを開催。周囲の助けを受け、放課後等デイサービス施設「ルーチェ」を愛知県名古屋市に立ち上げ現在に至る。著書に『発達障害の女の子のお母さんが、早めにしっておきたい47のルール』(健康ジャーナル社)『発達障害の女の子の「自立」のために親としてできること』(PHP研究所)がある。

イラスト/本田 亮

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