道具で発達を応援するネットのお店tobiraco(トビラコ)の店主が、発達障害の子の「困った感」を解決する道具をご紹介します。今回は、文字の読み書き困難の意外な原因と解決策についてです。
文字の読み書き困難の原因は、実にさまざまです。ここでは、ちょっとしたひと工夫でラクになる道具をご紹介でします。よかったらお試しください。
目次
文字がうまく書けない子に。理想の角度で鉛筆が持てる補助具「ユビックス」
文字をうまく書けない理由のひとつに鉛筆の持ち方があげられます。鉛筆を握るように持ったり、鉛筆を寝かせるようにして持ったり。なんとか直してほしいと思っても、手取り足取り教えるのは意外と難しいものです。あれこれ注意するよりも、持つための補助具を使ったほうが簡単。
「ユビックス」は、子どもに長年書き方を教えてきた「児童かきかた方研究所」(大阪府)が考案した補助具です。同研究所の所長によると文字がきれいに書けるために大事なのは、鉛筆を持った時の角度だそうです。書く面に対して鉛筆の角度は60度がベスト。ユビックスは60度の傾きで鉛筆を支え、持つことができるように設計されています。
鉛筆の持ち方補助具 ユビックス
素材 ポリエチレン 適応サイズ N0.1(4〜5歳) N0.2(小学生) N0.3(中学生、大人女性) 考案 児童かきかた研究所 価格 270円(税込) 販売 株式会社tobiraco
「文字が書きやすい構え」を見える化~「『すわりかた』と『もちかた』お手本マット」
机に対して、体を斜めに構えたり、腕が肩幅よりも広がってしまうと、文字が書きづらくなります。「体はまっすぐ机に向け、腕は肩幅に」が、書きやすい構えです。これを目で見てわかるようにしたのが、「『すわりかた』と『もちかた』お手本マット」。ユビックス同様、「児童かきかた研究所」で使われていたものを、家庭用にアレンジしています。
ポイントは「おへそ」を向ける方向を意識すること
鉛筆の持ち方や姿勢もイラストで見える化。お手本マットに描かれているように、おへそを向ける方向がわかると体も前を向くようになります。小学1年生の子に「おへそを、黒板にむけて」と言って、子どもを前に向かせる先生がいますが、わかりやすい指示ですよね。「前を向いて」だけだと、どっちが前なのかわからない子でも、自分のおへそならわかります。
「すわりかた」と「もちかた」お手本マット
素材 表裏:塩ビ、中面:ポリプロピレン サイズ 縦400mm×横600mm×厚1mm 考案 児童かきかた研究所 価格 3,850円(税込) 発売元 株式会社tobiraco
書き写ししやすく、姿勢も正してくれる書見台「ブックメイト」
ドリルや教科書の書き写しは、左見て、右見てと頭や視線を左右に動かします。この動きに負担がかかってうまく書けない子がいます。眼球の動きや、目と手の協調運動(見ることと書くことを同時行う行為)に課題がある場合が多いようです。書き写しに間違いが多かったり、うまく書き写せないときに「書見台」を使ってみてください。頭をほとんど動かさずに書き写すことができます。
大人にもおすすめ。姿勢がよくなりますよ
もうひとつ。書見台のいいところは、姿勢がよくなることです。前屈みになって机にへばりつくようにして読んだり書いたりせずに、机からほどよい距離で頭をおこして読み書きできるようになります。大人にもおすすめです。
ブックメイト
素材 スチール サイズW175×H210×D11mm(折り畳み時) 重さ330g 機能 角度調整5段階 カラー ホワイト、ライトブルー、ダークブラウン、の3色 価格 2,200円(税込) 販売元・お問い合わせ先 株式会社レイメイ藤井お客様相談室 0120-680131
体幹が弱い子に是非!姿勢をラクにキープできる椅子「ザフ システム スクール」
背筋をピンと伸ばした「正しい姿勢」は、じつは体にとても負担をかけています。人が椅子に座ろうとすると、骨盤は自然と後ろに傾斜します。
背筋を伸ばして座るためには、傾斜しようとする骨盤を起こした状態にしなくてはなりません。お尻の筋肉や腰、骨盤に負担がかかります。体幹が弱い子にとっては、とても苦痛です。姿勢を長時間キープできずに、どうしてもお尻が椅子から迫り出したり、足を前に投げ出したりする格好になってしまいます。怠けているわけでも、だらしがないわけでもありません。体幹が弱くて背中を伸ばした姿勢を保っていられないだけです。
発達障害の子のなかには、体幹が弱い子が少なくありません。体幹の弱い子には座位保持用の椅子がおすすめ。「ザフ システム スクール」は骨盤の傾斜を支えて、ラクに姿勢をキープできる座位保持用の椅子です。車椅子のシートなどを、独自にシーティング技術で製造しているメーカーが、発達障害の子のために開発しました。
座位保持用椅子 ザフ システム スクール
素材 シート:ポリエステル100%(ナノ撥水素材—水圧で汚れが落ちる強力撥水力) インナークッション:ウレタンフォーム パッド:ウレタンフォーム、アルミパイプ 椅子フレーム:鋼管(粉体塗装)、繊維板・合板
サイズ シート:370×750mm 体幹パッド:高さ180×奥行170mm 外転防止パッド:高さ180×奥行170mm 椅子フレーム Sサイズ:幅360×奥行360×座面高260〜340 mm 適応身長:105〜135cm Lサイズ:幅360×奥行360×座面高300〜460 mm 適応身長:120〜180cm
価格 35,200円〜42,900円(税込)開発 株式会社アシスト 販売 株式会社tobiraco
遊びながら音韻機能が鍛えられる~「絵と文字を結びつけて覚える あいうえおかるた」
文字と単語が結びつかなくて文字が読めない、を遊びながら解決
1文字ずつだと読めるのに、単語という文字のかたまりになると読めなかったり、文字と単語が結びつかなかったりする子がいます。
「らくだ」を例にとってみます。「ら」「く」「だ」を1文字ずつなら読めて、「らくだ」という動物も知っているのに、文字がひとつのかたまりになると、動物のらくだとして認識できない。文字と音と言葉が一致できなくなってしまう。これは、専門家によると脳の音韻(おんいん)処理の機能に不具合が生じているからだそうです。
音韻処理の機能がうまく働くようにするために、作業療法士がすすめるのが、文字と絵を一致させる遊びです。代表的なのは「かるた」。「絵と文字を結びつけて覚える あいうえおかるた」は、文字と絵を一致させることに徹底したかるたです。絵札の裏に文字が、読み札の裏に単語が書かれています。
音韻を意識する遊びとして、かるたの他にも、しりとりなども良いそうです。「リンゴ」→「ゴリラ」→「ラジオ」というように、文字の音と単語を意識しながら遊べます。
ジャンケンに勝った方が前に進めるジャンケンゲームも音韻機能を鍛える遊びです。パーなら「パイナップル」、グーは「グリコ」、チョキは「チョコレート」。文字と音と単語を意識して体を使って遊べます。昔からある、言葉遊びには思わぬ効果がありますね。
読み書き困難の子のための道具満載の本~「みんなでつなぐ 読み書き支援プログラム」
読み書き困難の原因と対策、支援してくれる道具についてもっと知りたいという人にぜひおすすめしたいのが『みんなでつなぐ 読み書き支援プログラム』(井川典克監修 高畑修平・奥津光佳・萩原広道 非特定営利活動法人はびりす/編著 クリエイツかもがわ)です。
読み書き困難には、じつにさまざまな原因があり、ひとりの専門家だけではカバーしきれない面があります。本書には、読み書き困難をさまざまな角度から検証し、支援できるよう、医師・オプトメリスト(目の使い方の支援)・学校教員・言語聴覚士・公認心理師・作業療法士・視能訓練士・理学療法士・保護者・当事者たちがかかわっています。
専門家たちが、読み書き困難の原因が解明しつつ、現場で支援している作業療法士たちが今すぐに役立つ道具や遊びなどを紹介。支援者のための本ではありますが、保護者にとっても役に立ちます。
『みんなでつなぐ 読み書き支援プログラム』
井川典克監修 高畑修平・奥津光佳・萩原広道 非特定営利活動法人はびりす/編著 価格2,420円(税込)発行 クリエイツかもがわ
教えてくれたのは
トビラコ店主
元子育て雑誌編集者。編集者時代に出会った特別支援学校の先生と現場で効果のあった教材を商品化。「tobiraco」というネットショップで販売。ヒット商品は「きいて はなして はなして きいて トーキングゲーム」「見る目をかえる 自分をはげますかえるカード」。「療育アロマ」も快走中。『発達障害の子のためのすごい道具』(安部博志・著 tobiraco・編集 小学館)が好評発売中!