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旅行先でつかまえたカニを飛行機で持ち帰る
私がヒライソガニを見つけたのは、和歌山の海でした。水族館の磯体験のようなもので、岩を裏返したらいたカニ。カニは2人1組になって、一人が岩をどけた瞬間に、もう一人がカニを素早くつかまえるのがいいようです。
※漁業権に抵触するカニは採れないのでご注意!
ヒライソガニは日本各地で見られる、比較的育てやすいカニ。海水ガニですが、潮だまりに生息するので、雨のような淡水が少し混じってしまった過酷な環境でも、多少生きていられます。
まずは、旅行先の海から、国内とは言え、飛行機に乗って家に帰らなくてはいけません。
水族館の先生に教えてもらったのは、小さめのプラスチック容器に、海水を浸したクッキングペーパー(キムワイプなど)を入れて、カニを入れて持ち帰る方法。1時間に1回ぐらい、途中でフタを一瞬ぱっとあけて酸素を入れてやれば大丈夫だそうです。暑さにもご注意を。
海水ガニと淡水ガニでは、飼い方が違った
うちに連れ帰ったら、早速水に入れてやりましょう、水槽に水道水をジャーッと入れてカニをポン……なんて死んじゃいますので気を付けて。海水のカニは海水か、カルキを抜いた人工海水が必要なのです!
最初に飼い方をネットで調べようと思ったのですが、いやあ出るわ出るわサワガニと食べられるカニの情報ばかりが。「水を浅めに入れて、陸地を作る」というのは、サワガニの飼い方のようです。
海水のカニは、砂利をしいて(同じ海岸の砂利を採ってくると楽)、カルキ抜きをした水に、人工海水の素を規定通りの濃度で水量多めに入れます。私が使ったのは、GEXの「SEA WATER」というカルキ抜き不要の商品。これ便利。
命綱の海水の素とエアポンプのみは持っていたので、とりあえず大き目の水槽と砂利と隠れ家にできそうなものを買ってきて、セッティング。エサはカメのエサで代用できるよと聞いていたのですが、水量が多いために全部浮いてしまい、結局沈下性のザリガニのエサが常食に。基本はなんでも食べる雑食性ですが、腐るものをあげると水質悪化につながるので、おやつ程度にしています。
メスが抱卵。赤ちゃんガニが孵化!
驚いたのは、我が家にやってきて1週間後、カニが赤ちゃんを産んだ(孵化した)ことでした! どうやら既に抱卵していたようで、お腹に粒々したものがついているなあ、病気?と思っていたら、日に日に大きくなり、粒々が不規則に動くようになり、ある朝水槽に無数の赤ちゃんが放たれておりました! どうやら満月の晩に孵化するらしく、この後1カ月後にも再度抱卵して、お腹を刺激して赤ちゃんを旅立たせる親カニの様子が動画で撮れました。感動……!
うちに顕微鏡があったので、赤ちゃんを見てみると、ちゃんと目があって、しっぽのようなもの(成長すると収納されてお腹になる)で泳いでいる様子が確認できました。倍率が高くなくてもここまでしっかり見えるとは! スマホのレンズをくっつけて撮影もできます。赤ちゃんガニを育ててみたいと思ったのですが大変難しいらしく、数日で全滅してしまいました(泣)。
ヒライソガニの孵化
死んでる…と思ったら脱皮でした
さらに1週間後、朝水槽をのぞくと、横たわったカニの姿が。死んでしまったのか!とツンツンしてみると、ふにゃっとしたカラだけでした。脱皮です。本体は、脱皮後しばらくは隠れたところでじっとしています。
カニは、脱皮後に共食いされることが多いと聞いて、慌てて別の小さい水槽を買ってくることにしました。体が安定するまでの数日は、じっとしていることが多いようです。
飼ってみてわかったのですが、脱皮や孵化が近くなるとカニはエサを食べなくなり、じっとしていることが多くなります。神経質になって、人影が見えるだけでひっこんでしまったりするので、ちょっと心配になりますね。
ネズミか…と思ったら脱走ガニでした
さて、カニはよく脱走します。ある晩、部屋の床をカサカサ動く音がしてゴキブリ!?とおののき、奥からカリカリかじるような音も聞こえたのでネズミ!?と暗い気分になったのですが、翌朝カニがいないことに気づいて探し回ったことがあります。けっこう広い範囲を移動するのでご注意を。
こんなところ登れるの?と思うような、フィルターの棒などを足掛かりにのぼってしまい、フィルター装置の中から救出したこともあるほどです。カニはかなり力持ちで、強いハサミで大きなものも持ち上げてしまいます。夜も動き回るので油断は禁物です! 軽いフタなら重しをのせておき、隙間と足掛かりを作らないようにしましょう。
脚がなくなっても、奇跡の生命力
カニはケンカや共食いをするので、1匹ずつ飼う方がいいとは聞いていましたが、また抱卵するかもしれないし、2匹で飼っているほうが動きがあるので、大き目の1水槽に、2匹飼いをしていました。
ところがうちへ来て2カ月が経つ頃、カニが珍しく、フィルターの吸い込み口の上の方にしがみついているではないですか?
よく見ると、足が半分ない。大事なハサミも2本ともない。砂利の上に脱皮のようなものが落ちています。事情はわかりませんが、脱皮の最中失敗したか、脱皮中にもう一匹に襲われたかというところでしょう。
これはもう助からないかもしれないと思いつつも、急いで別水槽へ移しました。歩いてもバランスが悪く、水流にのみこまれるとくるくるまわってしまう。問題はエサを自分で採れるのかというところです。もう数日ももたないだろうと予測していたのですが、一匹の悠々自適な生活になったからか、なぜか元気。意外と平気そう。もう2週間を過ぎても、元気でおります。生物って不思議ですね。個体差も大きいようで、体力のあるカニのようでした。
いざ生き物を飼うとなると、わからないことがいっぱいで、図鑑やネットにお世話になりました。基本的な飼育方法は、図鑑の方が正確。ただネットは裏技がたくさん載っているので、うまく自分のカニとあったものを見つけると役立ちます(自己責任で)。
観察して、いろんなことを調べることで生態がわかり、自分なりの飼育マニュアルができてくるのがすごくおもしろいです。子どもたちにもそうやって、観察したり、失敗したりしながら探求心をのばしていってほしいなと思っています。
文・構成/日下淳子
構成/HugKum編集部