何かをもらったとき、「わたしにもらったの」「○○ちゃんからあげたの」などと、ちぐはぐな言い方をしてしまうことがあります。正しい表現をどのように教えればいいのでしょうか
立場によって言い方が変わることば(「あげる」「もらう」など)と、主語をつなげる助詞の選び方が曖昧なために、全く違う意味で伝わってしまうことがあります。子どもが助詞をうまく使いこなすにはどうすればよいでしょうか? (4歳・女児の母)
文法に則してことばを上手に使うのは、子どもにとって難しいこと。時間をかけてゆっくり取り組む気持ちで
お子さんのことばの発達過程では、「生活言語」から「学習言語」へ移行する就学前後の時期によくあるお悩みのひとつです。
生活の場面で、相手と自分の二者が関わるエピソードを説明する文を理解したり自分で組み立てて伝えたりする力(生活言語)は、その後の学校でのお勉強(学習言語)にもつながっていきます。
文法的に「ここがおかしい」とただ添削するだけでなく、伝えたい内容をまずは確認して
「わたしが〇〇ちゃんにもらったの」や「〇〇ちゃんが私にくれたの」のような文を「あげ・もらい文」と呼び、難しい表現です。
例えば、お子さんが「わたしにもらったの」と言ったとき。確かにおかしな文になっていますが、はたして正解は何でしょう?
<に>を<が>に変えて、「わたしがもらった」と言うのがよいでしょうか?
それとも、<もらった>を<くれた>に変えて、「わたしにくれた」と言うのがよいでしょうか?……
このように、いくつかの可能性があり、それぞれ反対の意味になります。
そこでまずは、「お子さんが本当に言いたかったことは何か?」を探っていきます。
子どもが何を言いたかったか、を知ることが大切
「○○ちゃんがくれたってこと?」「もらったのはだれ?」のように、角度を変えてたずね、状況を把握していきます。そのあとで、お子さんが本当に言いたかった内容が反映されていて、文法的にもただしい文章を言い、お手本として聞かせてあげましょう。
生活の中でじっくり時間をかけてやりとりするタイミングがなかなか取れないということもあるかもしれませんが、ぜひ丁寧に繰り返し続けてあげてください。
<が・で・に・を>などの助詞が付くようになったら、ことばの発達は概ね完成時期を迎えると思われがちですが、実はその後も新たな表現の獲得はまだまだ続いていきます。一歩ずつ進んでいくお子さんのことばの発達を応援してあげましょう。
「正しい文で話す力」や「語い力」以外の必要な力にも目を向けて
また、文を正しく組み立てる「文法の力」やいろいろな単語をたくさん知っている「語い力」にばかり注目してしまいがちですが、実は大切なことがそのほかにもあります。
「エピソードを話す」「説明する」ためには、頭のなかでうまくイメージを描くことも、とても大切です。この時期、今、目の前で起こっていること(現前)について話すのは比較的上手ですが、過去のことや未来の予定のことなど、目の前にないこと(非現前)について話すのは難しく、ことば足らずになりがちです。
イメージをことばにするお手伝いをしてあげる気持ちで、子どもの話す番を奪わないよう、さりげなく助け船を出してあげられたらと思います。楽しくお話しできて、「伝えられた!」という経験をたくさん積めるとよいですね。
こちらの記事では寺田先生に「子どものことばの育み方」を伺っています
教えてくれたのは
取材・構成・イラスト/べっこうあめアマミ(https://twitter.com/ariorihaberi_im)