ぶっちぎりのロケットスタートを切った『すずめの戸締まり』
皆様、日本列島に『すずめの戸締まり』旋風到来です。本作は『君の名は。』(16)、『天気の子』(19)に続く、新海誠監督3年ぶりの最新作ということで、公開前から熱い視線を浴びていましたが、公開初週の数字を見るかぎり、前作を凌ぐ社会現象級のホームランヒットとなりました。
『すずめの戸締まり』は、日本各地の廃墟を舞台に、災いの元となる“扉”を閉めていく旅をする少女・すずめの解放と成長を描く冒険ファンタジー。「新海誠監督作史上最高の仕上がり」と呼声の高い本作は、映像や音響の設備が行き届いた映画館で“体感したい”1本といえるでしょう。そんななか、映画ファンである子育て中のパパママに朗報です。
TOHOシネマズでは、“子育てをするすべての方”を対象に、赤ちゃんと一緒に気兼ねなく映画を楽しんでいただきたいという想いを込めた「ベイビー クラブ シアター」というサービスが11月24日(木)よりスタート。今後は月1回開催されますが、その1本目が『すずめの戸締まり』となりました。
公開3日間興行成績がモンスター級だった!
もはや新作を待ちわびる日本屈指のヒットメーカーとなった新海誠監督。公開初日の11月11日~13日までの公開3日間興行成績の数字がえぐかったです(笑)。
全国420館(IMAX 41館含む)で公開されましたが、1,331,081人を動員し、1,884,215,620円をマーク。これはどえらい数字です。公開3日間で『君の名は』(2016年公開/興収250.3億円)対比で観客動員数138.7%、興行収入147.4%を、『天気の子』(2019年公開/興収141.9億円)対比で観客動員114.9%、興行収入114.7%をマーク。
当然ながら、新海誠監督作品史上No.1のロケットスタートとなりました! さらに、鑑賞者のアンケートによると、映画の満足度94.5%という、これまたぶっちぎりの高い数値をたたき出しています。
さらに本作は、新海誠監督作品史上最多となる世界199の国と地域での配給も決定しているので、今後は世界を股にかけた息の長い興行が期待されそうです。
「ベイビー クラブ シアター」とはどんなサービス?
TOHOシネマズでは、2003年より子育てしながらでも映画を鑑賞しやすい環境を提供すべく、同じようなサービスを展開していました。でも、新型コロナウイルスの感染拡大による小さなお子さんへの影響も鑑みて、2020年4月より実施を見合わせていたんです。
でも、映画館は言わずとしれた感染対策を徹底している施設ですし、なによりも同サービスの再開を希望する観客の声が多かったとか。そこで現状の感染状況、およびSDGsへの取り組みとして、サービス名称を「ベイビー クラブ シアター」と変更し、再スタートすることになりました。
鑑賞環境の配慮としては、赤ちゃんを抱きながら移動する、赤ちゃんに安心してもらえるという理由から、映画館内の照明を通常より明るくしています。また、赤ちゃんを驚かせないように、映画の音量も通常より小さめにしつつ、赤ちゃんの体調を考え、冷暖房の空調設定も調整。鑑賞中はベビーカーの保管もしてもらえます。
このサービスは、六本木ヒルズ、日本橋、池袋、立川立飛、ららぽーと横浜、仙台、ららぽーと磐田、赤池、なんば、セブンパーク天美、西宮OS、ららぽーと福岡、熊本サクラマチと、全国のTOHOシネマズ13劇場にて実施。
1本目の上映作品が『すずめの戸締まり』で、11月24日(木)に開催されます。以降は毎月1回、原則木曜日に実施されるので、小さなお子さんのいる映画ファンのパパママは、ぜひチェックしていただきたいです。
『すずめの戸締まり』の驚くべき見どころとは?
『すずめの戸締まり』の主人公は17歳の女子高生、岩戸鈴芽ですが、今回もごく普通の女の子が紆余曲折を経て本当の愛に目覚めていくという冒険譚となっています。いつもながらダイナミックで美しい映像、声優陣の熱演、心躍る音楽と、すべてにおいて行き届いていて、安定感がすごい。いや、今作ではワンランク上のステージに上がったかもしれません。
オーディションで選ばれた原菜乃華が九州で暮らす17歳の女子高生・岩戸鈴芽役を、SixTONESの松村北斗が“災い”をもたらす扉を閉める「閉じ師」の青年・宗像草太役を演じていますが、声優初挑戦とは思えないクオリティーにおののきました。いつもながらオファーした新海監督の目利きにも感心!
また、『君の名は。』、『天気の子』と、これまで日本における災害をテーマにした作品を手掛けてきた新海監督ですが、今回の『すずめの戸締まり』は、かなり直球で東日本大震災を描いています。そこは、この災を風化させてはいけないという新海監督の熱意と覚悟を感じました。
そして、パパママ的に感情移入しそうなのは、亡くなった鈴芽の母親の妹で、九州の漁協で働きながら、鈴芽と一緒に暮らす叔母・環(たまき)でしょうか。劇中で、いろんな想いを吐露するシーンがとても生々しいですが、そこの表現において決して逃げなかった点が良いです。演じたのは深津絵里で、彼女も声優初挑戦でしたが、こちらもお見事!
鈴芽や草太、環など、登場人物の心の機微がとても丁寧に描けているので、物語が絵空事ではなくリアルに響いてきて、より一層感情移入できそう。だからこそ、クライマックスの展開では、涙腺もビンビンに刺激されるので、ハンカチは必携かと。
また、個人的には草太が劇中で「椅子」になってしまうというまさかの“とんでも展開”がツボでした。もちろんただの椅子ではなくて、ちゃんと草太という人格を成立させているところがすばらしい。勝因は「ハローキティ」や「ミッフィー」のようにフラットな表情にしたことでしょうか?はたまた四脚ではなく三脚にしたことでしょうか? いずれにしても実に愛くるしいんです。
でも、中身は草太なので、なめてもらっちゃ困ります。彼がこれまたすごいウルトラC級のアクションを魅せていて、たまげました。椅子がですよ(笑)。まさに想像の斜め上を行く活躍ぶりに拍手!となりそう。
いずれにしても、観終わったあと、「これぞ映画館で観るべき映画だ!」と、映画の総合芸術ぶりのすばらしさをかみしめました。皆様もぜひ劇場でご覧ください。
取材・文/山崎伸子
原作・脚本・監督:新海誠
声の出演:原菜乃華、松村北斗、深津絵里、染谷将太、伊藤沙莉、花瀬琴音、花澤香菜、松本白鸚……ほか
音楽:RADWIMPS 陣内一真
公式HP:https://suzume-tojimari-movie.jp/