自閉症スペクトラムとADHDの小3息子。ホームスクールを選んだから、両親から手作りの通知表を用意して…

ホームスクール(家庭学習)を選んだ小3の長男、年長の次男、夫、の4人家族で暮らしています。 わが家の小学3年生の長男には自閉症スペクトラムとADHDの診断があるのですが、かなりユニークな人なので、そのおもしろさと関わり方への工夫などを忘れないよう、母からの目線で綴っていきます。

 息子の通知表

小学校からもらう息子の通知表にはほとんど記載がありません。学校に行っていないのだから当然と言えば当然です。最近ではフリースクールなどへの登校している分だけは登校日数として記録されていますが、学習の様子などは白紙、もしくは“評価できず”になっています。白紙の通知表には「まぁそうだよね」と思うくらいの私と息子でした。ただ、通知表をもらったことをきっかけに学校に行っていれば通知表というかたちで息子の頑張ってきたことが記録に残るけれど、学校に行っていなければ記録も残らないんだなぁと改めて実感しました。

息子の成長を記録しておきたい

先生に評価してもらう事も、記録として残っていることもないけれど、息子は日々成長しています。様々なことに挑戦し、経験を積み、学習だって彼なりに頑張っています。だけどそんな息子の頑張りを知っているのは私と息子だけです。時間がたてば子どもの頃の思い出はあいまいになっていくだろうし、記録がなければ現在の日々を思い出すきっかけすらなくなってしまうかもしれない・・・。

それは寂しいなぁと思い、家庭での彼の様子を記録した父と母による彼の通知表を作ることにしたのです。

文章で作る通知表

まだ学校に行っていた頃にもらった息子の通知表は、数字での評価ではなく先生が科目ごとに子どもの様子を文章で伝えてくれる仕様になっていました。これは、私自身がもらっていた数字評価中心の通知表とは違うかたちで、息子の所属が特別支援学級だからかもしれませんし、学校によっての違いもあるのかもしれません。

だけど私は自分がもらった数字評価とは違う息子の通知表がとても好きでした。息子の通知表はがんばっている姿や、達成できたことが文章で書かれており、ポジティブな言い回しを意識して記載されていました。子ども一人一人をしっかり見ていないと書けないこの形は、先生から見た息子の姿や、先生が息子にどんな目線を送っていたのか想像することもできました。本人が後から見直したときに、自分が先生から大切に思われていたことを感じられそうだとも思いました。そこで、私たちの通知表はこの書き方を参考に作ることに決めたのです。

 オリジナルの通知表づくり

わが家では母は息子と一緒に学習や生活をすることが多く、父は息子と外出することが多く、なんとなく母と父で担当科目がわかれています。そこで、それぞれが息子と過ごした時間をふりかえりながら通知表をつくることにしました。

頑張ったことをポジティブに

評価ではなく、彼ができたこと、頑張った事をとにかくポジティブに!今日のことを忘れてしまった未来でも、どんなことを頑張っていたのか想像できるように。いつ、どんなふうに、何をと具体的に書くことを心がけました。日常生活の中で撮影したスマホの写真を見返しながら考えてみると「ああ、これに挑戦したのは今年か!」「そういえばこんなことも頑張ってたな」「そうそう、ここ苦労して泣きながらやってたなー」なんて思い出がざくざくと溢れ出てきます。

なんせ、24時間365日一緒にいるのですから、それはそれはたくさんの思い出があります。思いつくまま勢いよく書いていくうちに国語だけでA4の原稿用紙1ページを軽く超えてしまう分量に!これでは当時小2の本人が読んでくれそうにないので、なんとか内容(とはやる心)を抑えつつも結局5000文字超えの、レポートのような通知表が完成しました!

夫と私、それぞれが息子と過ごした時間を改めて再確認

 夫の作った通知表と私の作った通知表を交換して読んでみると、こんなことあったね。ああ!これできるようになったよね!と、夫婦で成長を分かち合え、夫から見た息子の姿を知ることもできて新鮮でした。夫婦で同じことを同じように成長として喜んでいたり、私が思いもしなかった息子の一面に夫があたたかな目線を持っていたり。普段の会話ではお互いの息子への想いを深く知る機会もあまりないので、我ながらいい企画を思いついたと思ったものでした。

 通知表を息子に渡す

「今日は通知表を渡します!」そんな私の宣言に、当時小2だった息子は「それ何?」と薄い反応を示してくれました。作るところから盛り上がっていた親の熱量と子の興味の薄さ。だけど、この記録が意味を持つのは今ではなくずっと未来だろうと考えているので、これでよしです。

だけど、興味の薄い息子は渡したところで読んでくれそうになかったので、母が音読してあげることにしました。息子は何か説教でもされるのでは?と「読まなくていいよ~」と警戒していますが。読みたい!お母さんは読みたいのです!!

子どもは照れる 自分はウルウル涙が止まらない

 国語、算数・・・科目ごとに頑張ったことを読み上げていきます。褒めることしか書いていないので、延々と褒められる息子は照れてどうしようもない様子です。学習についての内容が終わると、今度は生活について。家事をよくやっているので、ここは新しく身に着けたことだらけの褒めポイントの宝庫!やがて弟とのほほえましいやりとりや、公園で遊ぶ姿、夢中になっていた昆虫採集のはなし。旅行先での頑張りに、果ては「テレビゲームの完全攻略おめでとう。粘り強さにびっくりしたよ!」なんてことも立派な褒めポイントです。

 読み上げていくうちに、本当にたくさん成長したなぁと私の中でこみ上げてきて。真っ赤になって照れる息子と嗚咽を漏らす母という混沌っぷりでしたが()

今では年に2回。写真で成長アルバムを作るように、文章で本人に渡す通知表を作ることがわが家の習慣となっています。 

通知表づくりで得られたもの

通知表を書くつもりで、日々を振り返ってみると、毎日を一生懸命生きている子どもの姿に改めて気付くことができました。普段は親としてつい、あれもこれもできるようになって!と欲張りたくなりますが、どう考えたって子どもは1年前よりも成長していて、夢中になっているテレビゲームですら上達し、興味の内容も変化していきます。私が通知表に書き留めたものは、息子が不登校を選ぶことがなければ意識もせず流動的に過ぎ去っていった時間だったのかもしれません。そこに気づくことができた通知表づくりは私にとってとても価値のある時間となりました。

増えていく親からの通知表

学校からの白紙の通知表と、親からの通知表は毎年増えていきます。それは息子が学校に行っていないことを示していて、学校に行っていたら当たり前に得られた体験を息子が失っている証明でもあります。だけど、だからといって彼の成長が止まるわけではありません。学校に行こうが行くまいが、息子は彼なりのペースで日々成長していきます。そして、学校へ行っていないからこその体験を積み重ね、経験値を蓄えていきます。 

未来の彼が、今の自分の選択をどう受け止めるのかは私にはわかりません。人の気持ちや考えは成長で変化するものですし、その日その時に置かれた状況次第で揺れ動くものだから・・・。コレで良かったと思える日もあれば、後悔する日もあるのかもしれません。

そんなとき、幼い自分が幼い自分なりに、自分の選択をまっとうしようと日々を一生懸命生き、育っていく姿を知ることが、それをそばで見つめている私たちの目線を知ることが、未来の彼を勇気づけてくれたらいいなと私は思っています。

 

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ウチノコさんの日々、前回の記事はこちら

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もっと外に出る機会を作りたい 不登校当初は元気をなくしていた長男ですが、家でゆっくり休むうちに好奇心旺盛に日々を楽しむ、本来の姿を取り戻し...

文・イラスト・構成/ウチノコ

構成/HugKum編集部

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note連載中 https://note.com/uchino_co/

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