【中学受験】大学附属の本命校にチャレンジも叶わず…第三志望でも納得できたのは本人の「やりきった感」

HugKumでは、中学受験に取り組んだ親子6組にインタビューし、本音の体験談をお届けしています。

東京都港区在住で、都内の大学附属男子校に通うKくん(中2/男子/仮名)。勉強に本気になったのは小6の11月。【後編】では、そこから迎えた受験本番の様子を母(Oさん)に振り返ってもらいました。

勉強が本格化する小6からはプロに任せた

―塾以外で「これはやってよかった」という勉強法があれば教えてください。

 社会や理科のような暗記が多い科目は、文字の情報だけでは頭に入りにくいと思ったので、リアルなものを見せるようにしました。具体的には、一緒に買い物に行ってスーパーに並ぶ野菜の産地を端から伝えたり、新幹線で帰省するときに通過駅や県を確認したり。「これも全部勉強だよ」と言いながら、うっとうしがられるくらい伝えていました。

―繰り返し伝えることで、頭に残りそうですね。

 そうだといいなと思ってやっていました。一方で、本格的な受験勉強は、ある程度のレベルからはプロに任せたほうがいいと実感しています。

5までは、家で塾の課題の丸付けなどを私が手伝っていましたが、小6になって過去問や演習問題が増えると、さすがに難しくなってきて。私も考えながら教えるから時間がかかるし、変な教え方をして混乱させてしまっても困る。そう思って、それまでの塾にプラスして、過去問に特化した塾の講座を複数回受講させました。

母親は食事など生活面の管理もするし、一緒にいる時間が長い。その上、勉強まで見ると子どもにとっても窮屈になってしまうかもしれないと思ったのもあります。その分、お金はかかってしまいましたが、我が家としてはプロに任せてよかったと思っています。

受験日程は子どもの性格に合わせて計画

―実際の受験の様子はいかがでしたか?

 受験本番は作戦が大事だとつくづく思います。2月に本命の3校を受けたのですが、一発目に安全圏の学校を受けてもいいし、まずは本命から攻めてもいい。どちらが向いているかは子どもの性格によると思いますね。
息子は2/1にまず安全圏の学校を受けてから、2/2以降に本命に望むことにしました。というのも、1月に練習がてら地方中学を東京会場で受験したところ、1校が不合格で、その落ち込みようが大きかったんです。息子の場合は、先に合格を手にして気持ちの余裕を持ってから本命に望むほうがいいだろうと判断しました。

−受験スケジュールを決めるのも簡単ではありませんね。

 具体的な受験スケジュールは塾と相談して決めていくのですが、難解なパズルのようですね。しかも合否によって入学金の支払いや次の試験の申し込みなど、次のアクションも変わってきます。せっかく合格したのに入学金を支払い忘れたらシャレになりませんから、クレジットカードの上限もチェックしました。直前には「ネットが使えなくなったらどうしよう」なんてことまで考えたのですが、夫に「さすがにそれは大丈夫でしょ」と言われました(笑)。

受験前日の食事は、ゲン担ぎでステーキ

―結果はいかがでしたか?

 2/1の第三志望は受かり、2日目以降に第一・第二志望を受けたものの、残念ながら不合格。受験直前には第一志望にもギリギリながら手が届く偏差値まできていたから本人も相当落ち込んでいました。
それで、もう一度2/4に本命を受けることにしました。それがダメなら今回は諦めようと。4日以降にも試験日程はあったのですが、キリがないと思ったし、本人もそれで納得しました。4日のテスト終了後は、会場から出てくるやいなや「スマホ、買いに行こう!」とにっこり。前々から約束していたんです。終わったことで肩の荷が下りたようで、すっきりした表情をしていましたね。
最終的に、4日も不合格だったのですが、比較的すぐ第三希望の学校へ進むことに気持ちを切り替えていた気がしますね。あらかじめ「ここまで」と決めたことで、自分の中でやりきった感覚があったことが大きいと思います。

捨てる前に使った参考書や問題集と記念撮影。努力の証!

受験最中に弟が帯状疱疹に……

―2/1~2/4は合否を確認して一喜一憂だったのですね。

 はい。合格すれば、その日のうちに入学金の振り込みがあるし、結果次第では翌日以降の受験の申し込みも必要。なかには合格証書を学校まで取りに行かないといけない学校もあり、夫に会社を休んでもらったこともありました。
そういう手続きをこなしつつ、長男にはごはんをちゃんと食べさせて、翌日のテストに備えて機嫌よく寝させなければならず、頭がパンパン。必死になりすぎて、その間すっかり次男はほったらかし。弟も兄の大変さを察して、何も言わなかったんですよね。私がそれをいいことに、「早くお風呂に入って寝なさい」とか「そんなの自分でやって」と言い続けていたら、2/3に弟に帯状疱疹ができたんです。それを見て初めて、弟がどれだけ我慢して、ストレスを溜めていたかに気づきました。本人だけでなく兄弟のケアも大事だと反省しましたね。

受験はママ友同士でもセンシティブな話題

―受験については家族以外に誰に相談していましたか?

 話をしていたのは一番仲のよいママ友一人だけで、相談は基本的に塾にしていました。やっぱりみんなどこか探り合いだから、ママ友と受験の話はしにくい気がします。
実は受験の翌週に、あるママ友から電話がかかってきて、「Kくん(息子)が、うちの子がどこを受けたか言いふらしている」と怒られたんです。よくよく聞けば、たまたま会場で見かけて、それを別の友だちに軽く話しただけ。それが「あちこちで言いふらしている」と話が大きくなっていて。その子は不合格だったから、なおさら受験したことを知られたくなかったんでしょうね。やはり受験は繊細な話題だと再認識しました。

入学はゴールではなく、むしろ始まり

受験の経験を糧に、自ら勉強する日々

―入学してからの様子はいかがですか?

 附属校なので、普通にいけばこのまま大学まで進めるので、受験はこれで終わりかもしれません。でも決してここがゴールではない、むしろ競う学びがあらためてスタートした感がありますね。

第三志望の安全圏の学校といえども、とくに上位にいるわけではありません。これが第一志望・第二志望ならギリギリだったので、入ってから相当苦労したのかなと。みんなしっかり勉強してきた人たちだということを息子も理解していて、とくに何も言わなくても勉強していますね。

学校の姿勢としても、文武両道を重んじていて、成績不振者は部活を休ませたり、赤点なら夏休みに補習があったりとフォローが手厚いのも好印象。スポーツが盛んな男子校で、息子の性格にも合っています。

息子との濃密な時間。一緒に頑張った経験で絆が強くなった

―中学受験から約2年。今振り返ってどんなことを感じますか?

 塾通いから始まる中学受験は、ビジネスとして確立していて、ある種の課金ゲームだったなと(笑)。
それはそうと、今振り返ると、長男とは毎日ぶつかったり、励ましたり、同じ目標に向かって試行錯誤した、ものすごく濃密な時間を過ごしたと思いますね。

長男とは性格が似ているから、やりたくないことや言われたくないことも手に取るようにわかるんです。とはいえ、親として言わなくてはならないこともあるから、結果ぶつかってしまう。もちろん私が息子を追い詰めたいわけでも、嫌いなわけでもないことは本人もわかっていたし、受験が一人で乗り切れるものではないことも理解していたはず。それでもどうしようもなくイライラしてしまう。それが私にもわかるから、辛かったですね。やりきれなくて鉛筆を投げるなどモノにあたっていたこともあり、あとで本人も「あれが自分の反抗期だった」と言っていますね。実際の反抗期はこれからだと思いますが。
当時、ぶつかってどうしようもないときは、気分転換がてら近くのコンビニに弟を誘ってでかけて、イートインスペースで弟にはアイス、自分はビールでひと息ついて帰ってきたこともあります。ひどいですよね(笑)。

―それで気持ちがリセットできるのならアリだと思います。

 ただ、あの日々があるから、この先何があっても大丈夫と思える、それくらい強固な親子関係が築けたのは確かです。一緒にがんばったあの経験があれば、ここから先は一人でもやれるはず。これからも新たな道をどんどん進んでいってほしいと思います。

 

中学受験を通して、この上なく強固な絆を手にしたOさん親子。中学受験の目的や意味は、決して第一志望の学校に入ることだけではありません。子どもと真剣に向き合えば向き合うほど、中学受験で親が得るものも大きくなりそうです。

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文・構成/古屋江美子

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