小学5年生が「おしっこの研究2022」で内閣総理大臣賞!「肉ばかり食べるとpHはどうなる」など気付き満載の研究の裏側に、母のサポートも

昨年、福岡県福岡市立馬出小学校5年生の蒲池泰大(やすひろ)くんは「おしっこは、野菜を過剰摂取した時はアルカリ性、肉を過剰摂取した時は酸性になる」ということを知り、自由研究のテーマにしたそう。おしっこは毎日の食事のメニューや質量で変化するため、お母さんの協力は必須だったそう。どんなサポートをされたのか、将来の夢などを蒲池さん親子に伺いました。

「おしっこの自由研究」をしようと思ったきっかけは?実験方法も

蒲池泰大さんは小学5年生のときに「おしっこの研究2022」で旺文社主催 全国学芸サイエンスコンクール(※)において、内閣総理大臣賞を受賞。研究は斬新なアプローチや緻密な実験など、プロの研究者も驚く内容。では、なぜ、おしっこの研究をしようと思ったのでしょうか。蒲池さん親子に詳しくお話を伺いました。

※全国学芸サイエンスコンクール……児童生徒のみなさんがそれぞれの得意分野で制作した作品をご応募いただける旺文社主催の総合コンクール。

おしっこの研究をしようと思ったきっかけ

蒲池泰大くんのお母さん:おしっこの研究に至る前に、息子が小学2年生のときの「うんちの研究」がありました。そのうんちの研究の流れで、14ヶ月、土に埋めて発酵させた息子のうんち堆肥を使用して小学4年生のときの自由研究ではブロッコリーを育てました。すると息子の予測に反し、うんちを入れなかった方の土の方が夏休みの間ブロッコリーが良く育ちました。それに疑問を持ったときに、ブロッコリーが弱酸性の土と相性が良いことを知り、pHという存在に気が付いたのです。

夏休み後、そのpHの存在が気になっていた息子は、調べ物をしたようで、「おしっこは野菜を過剰摂取するとアルカリ性に、肉を過剰摂取すると酸性になる」という情報を見つけ、小学5年生の夏休みに自分の体でおっしこを検証してみたいと思ったのがきっかけです。

おしっこの実験方法は?

蒲池泰大くんのお母さん:実験方法は単純です。おしっこが出た時に、匂い、色、pHなどを調べました。おしっこを調べるときは、そのままトイレで出してしまうと計測ができないので、紙コップを使用して計測しました。

毎朝、おしっこを紙コップに入れ、質量を測定する。
毎朝、おしっこを紙コップに入れ、質量を測定する。

実験は大変だった?

泰大くんにもお話を伺いました。

蒲池泰大くん:研究の計画をたてている時は、「肉ばかり食べていると、おしっこpHはどうなるのかな?」「肉なし生活をするとどうなるのかな?」「旅行中のおしっこはどうなるのかな?」など考えるだけでワクワクしました。

でも、実際に1週間肉なし生活をすると、いつもお腹が空いて体がきつくなり、「どうして自分はこんなことをしているんだろう」と思いながら続けていました。

また、毎日のおしっこの計測も大変で、「見た目でpHを予測できるかな?クイズ!」とゲーム感覚で楽しめるよう工夫して計測もしました。

後は、寝ます。悲しかったり、苦しかったりしたら、一度寝ると忘れるので寝るようにしています。

表彰式でスピーチする泰大くん
表彰式でスピーチする泰大くん

気を付けたことは?

蒲池泰大くんのお母さん:絵を描くということです。というのも、息子が小学校2年生だったときに参加した福岡県科学コンテスト授賞式時の審査員の方のアドバイスで「絵を描くことで、よく観察するようになる」とおっしゃっていたからです。

おしっこの絵を真剣に描いている蒲池泰大くん
おしっこの絵を真剣に描いている蒲池泰大くん

今回、小学4年生のときに、自分のうんちを土に混ぜ堆肥した経験から、おしっこのpH値を調べるだけにとどまらず、発酵食品におしっこを混ぜて発酵するかも検証もしました。

発酵食品に混ぜたおしっこはペットボトルに入れたので、蓋がしてあり匂いがないことで、絵を描きやすかったようです。

R1ヨーグルトと混ぜたおしっこの臭いをかぐ蒲池泰大くん
R1ヨーグルトと混ぜたおしっこの臭いをかぐ蒲池泰大くん

さらに、発酵させたおしっこを土に混ぜて堆肥を作り、ブロッコリーの生育の違いを調べる検証実験もしました。

発酵させたおしっこを土にかけ堆肥を作りをする泰大くん
発酵させたおしっこを土にかけ堆肥を作りをする泰大くん

お母さんはどのようなサポートを

お子さんの自由研究に悩んでいる親御さんは多いかと思います。夏休みの苦行という声もちらほら聞きます。蒲池さんのお母さんにどんなサポートをされたのかも伺いました。

蒲池泰大くんのお母さん:レポートには、「どんな1日を過ごしたときに、どんなおしっこが出るのか」ということがわかるよう「その日に行った場所」や「感情」を書き留めるようにアドバイスしました。

というのも、以前、私は仕事である商品の意識調査をしたことがあったのです。その時に依頼されたことは、「どんな1日を過ごしている人が、リサーチしている商品を欲しいと思っているのか」というものでした。その経験を息子に提案したのです。

タンパク質を意識した1週間の記録(泰大くん記載)
タンパク質を意識した1週間の記録(泰大くん記載)

サポートした7つのポイント

蒲池泰大くんのお母さんによると、下記7点に気を付けてサポートしたそう。

  1. 常に質問する
    →「〇〇やりたい」というときは、「いいね、どうやってやるの?」「どうしたらよいと思う?」「私(母)の考えを言ってみても良い?」など投げかけています。
  2. 写真を撮る。
    →スマホは私しか持っていないので、写真撮影を手伝いました。何かに夢中になっている息子の写真を撮りたかったので、写真を撮っていました。
  3. 比較検証。
    →今までは自分のうんちだけでしたが、今回はおしっこだったので、比較検証として、私のおしっこも提供しました。色や匂い、その日食べたもの、飲んだものなども自分のものは自分で記録し、その情報を提供しました。
  4. 本購入。
    →参考になるような本を、図書館で借りたり買ったりしました。
  5. 予算提供。
    →pH測定アースチェック液634円、pHデジタル測定器(780円)、紙コップ(550円くらい)
  6. グラフ表作成。
    →毎日の記録を付けるための大枠の表(記録帳のようなもの)を作成することに協力しました。
  7. 好きな飲み物を断つ。
    →私もおしっこの提供をしたので、「コーヒーやアルコールを飲まない日を作ってほしい」ということだったので、そういう週を作り、検証に協力しました。
お母さんから予算を提供されて買ったpH測定アースチェック液、pHデジタル測定器、紙コップ
お母さんから予算を提供されて買ったpH測定アースチェック液、pHデジタル測定器、紙コップ

自由研究を進めるうえで心がけたこと

蒲池泰大くんのお母さん:子どもの意思を尊重します。やりたいならやればよいし、やりたくないならやらなければよい。本人がどうしたいのかをまず質問するようにしています。

質問をすると、息子が自分の本当の気持ちと向き合う時間になるので、その時間を大切にしています。自分がどうしたいのか、それに向けて前に進めるように質問をすることが私の役割です。

将来の夢は

小学生でこれほどの研究をする蒲池泰大くん。将来の夢が気になり、最後にお聞きしました。

蒲池泰大くんのお母さん:今のところ将来の夢はないみたいです。というのも、息子は小さな目標を達成してくことが好きで、やりたいことがあるとすぐやってみたくなる性格なんです。

最近では、自転車で35kmの島を一周したり、香川県に夏旅行に行く前に「うどん作りをしたい」と言って、実際に家で作ったりもしました。

以前は、「火星に土地を買いたい」と言っていたのですが、さすがにこれはサポートが難しいと思いました(笑)。将来の夢を聞くこともあるのですが、コロコロ変わるので、へーという感じで聞いています。

自転車で島を一周する泰大くん
自転車で島を一周する泰大くん

自由研究は子どもが成長する絶好のチャンス

今回、研究に取り組む泰大くんの様子やお母さんのお話から、泰大さんが自由研究を通して、成長している姿が目に浮かびました。筆者にとっては苦行でしかなかった自由研究。子どもが成長する絶好の機会なのかもしれません。

また、蒲池さん親子のお話を聞いて、筆者は子どものことを真剣に考えていないと、真に役立つサポートはできないと思い、まずは、子どもと向き合って対話しようと思います。

泰大くんの小学2年生、4年生のときの「うんちの自由研究」についてもお話を伺いました。こちらもぜひご覧ください。

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※全国学芸サイエンスコンクールは、現在、第67回の作品募集も開始しましたので、公式サイトにてご確認ください。(応募締め切りは2023年9月22日)

【主催者からひと言】

前回(第66回)研究部門の受賞作品は、日々の生活の中で身近な事柄に疑問や興味、関心を持ったことをテーマにした研究作品が多くありました。
今年は、思い切って野外に目を向けたり、楽しくグループで集まって研究し、ぜひ得意なことや好きなことにチャレンジしていただきたいです。
「旺文社 全国学芸サイエンスコンクール」は、サイエンスジャンル4部門(理科系・社会科系の各研究分野)と学芸ジャンル8部門(絵画、書道、小説、詩、読書感想文、作文/小論文、写真、ポスター/デザイン)の全12部門を設け、児童生徒の皆さまの誰もが参加しやすいコンクールを目指しております。

全国学芸サイエンスコンクール公式サイトはこちら>>

取材・文/峯あきら

夏休み☆自由研究ハック

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