中学受験のお悩みに教育ジャーナリストおおたとしまささんが回答「子どもの進学先の偏差値が低く、友人や同僚もネガティブな反応」今後、どこまで頑張らせるべき?

子どもの中学受験で悩んでいる方にぜひ読んでもらいたいのが、教育ジャーナリスト・おおたとしまささんの新刊『中学受験生を見守る最強メンタル!』です。我が子の中学受験について、迷い葛藤する母たちのお悩み相談に対して、悩みの根っこにある原因を紐解きながら、真理に迫る問いを投げかけてくれる本書。「読んで気持ちが楽になった」「子どもとの関わりについて指針をもらえた」「おおたさんの問いかけにドキっとしながら、深く考えさせられた」など、反響が広がっています。「ああ、わかる」そう思わず共感してしまうリアルなお悩みが満載の本書から、今回は一つのエピソードをご紹介します。

お悩み「これからもやっぱり学歴は重要って夫が言います」

Kさんの場合

【家族構成】夫、長男(中1)、長女(小5)

【今回相談する子どもの状況】

「小3から早稲田アカデミーに通塾中。他、野球とピアノ。今年、長男の中学受験が終了しました。本人の希望する中学に合格して楽しく通学していますが、友達から「お前の行く学校は滑り止めでも受けない」「偏差値いくつ?」と言われたり、夫は会社で「大学を考えたら微妙ですね」と言われたそうです。夫も「学歴社会はなくならない」と子どもたちに教えています。そんなことがあってからの、娘の受験です。私は、子どもに合う学校を見つけることが大切だと信じていますし、中高の6年間を安心して過ごせる場所があることは幸せだと思っています。一方で、やっぱり学歴は高いほうがいいのだろうか?どこまで頑張らせるべきか?について悩みます」

「大学を考えたら微妙ですね」会社で同僚から言われ…

 上の子は、中学受験が終わって友人から「俺の友達、その中学に受かったけど偏差値低いから行かないらしいよ、公立中にしたって」と言われたようです。夫も会社で同様のことを言われたと。夫自身も「やっぱり学歴は重要」ってはっきり言います。そう言われると、私がもっと頑張って、偏差値が1つでも高い学校に入れたほうが良かったのかなって、不安になります。下の子はどうしようって。

おおた 僕も学歴社会はなくならないと思います。より正確に言えば「学歴で生きている人たちの世界」はなくならない。「そういう世界」しか知らない人たちが無理して学歴と関係ない社会で生きていく必要はないですけど、それだけが社会だと思うのは間違い。そうじゃない世界も必ずあるんです。要は家猫みたいなことですよね。外の世界には怖くて行けない。野良猫の生き方を知らない

 自分の子どもにそうなってほしくないと思ったら、学歴社会じゃないところで生きていくことも教えたいですよね。

おおた ここだけが世界だって思わせなければいいんです。「学歴がないと生きていけないよ」と脅して追い込んじゃえば、文字通りの死に物狂いなわけですからパフォーマンスは上がるかもしれないけど、それが幸せかどうかはわかりません。そもそも「勉強やりなさい」ってお尻を叩けば偏差値は上がるのかって問題もありますけど。

信念を揺るがしているものは何なんでしょうか?

 なかなか頑固な息子で、去年もコロナ禍で向き合うことがたくさんあって、私が折れちゃったというか。この子の意思は変えられないと思って。意思を尊重しながら、我慢もしながらやってたんですけど、娘はそこまでの意思がなくて、あれもやりたいこれもやりたいっていう感じで、そんなの全部はできるわけないじゃないっていう状況で。

おおた 一旦は息子さんと向き合って、子どもを尊重する中学受験ができたわけじゃないですか。一方で、息子さんの時に持っていた信念が揺らいでいるのだとしたら、 揺るがしているのは何なんでしょうか

   女の子だからどうしようとかっていう考えも入ってきちゃうところもあって。娘は男の子の中で野球をやっているので、なかなか根性もあるんですけど、今、早稲アカに通っていて、両立はちょっと無理かなって。息子の時は野球も受験も頑張りなさいって言ってたんですけど、娘にはそこまで思えなくて。それで、私自身女性の生き方に偏見があるんじゃないかって悩んでしまったり。自分がそういうふうに思ってしまう部分があるので、そうじゃない学校に入れたいとも思ったり。

おおた  確かにお母さんの中のジェンダーバイアスの影響もあるかもしれません。でも大事なのは娘さんがイキイキしているかどうかですよね。テストで点数を取るのが得意で、学歴で生きていくんだっていうのは一つの生き方だけど、それがその子に合っているかどうかですよね。

  うちの子に関してはそっちじゃないしなって。

おおた  男の子に交じって物怖じせずに野球を楽しめるなんて、すごく個性的に育っているじゃないですか。それをいかに潰さないかですよね。

「テストの点数が悪かったら野球に行かせないぞ」という夫と意見が合わない

「テストの点数が悪かったら野球に活かせないぞ」という父と意見が合わず……。

そうなんですけど、夫と意見が合わなくて。私はそこまで頑張ってるんだったら野球頑張ればって思うけど、夫は「テストの点数が悪かったら野球行かせないぞ」って言うんです。長いスパンで考えたら、私立に入るほうがいいから言ってるんでしょうけど、私は今やっていることを大切にしたいと思っていて、そこがなかなか……。

おおた お母さん自身がお父さんとの関係の中で板挟みになってるのかな。

K   気持ちは板挟みなんですけど、態度は子どもに寄り添ってますね。でも、それがいいのかどうかわからないから。

おおた そんなこと言わないでしょうけど、「お前が責任取れるのか」って言われたら、ねぇ。

K   そうなんですよね。子どもを育てていて、赤ちゃんの時に「この子ってこういう子だな」って思ったことって変わらないんだなって。だから多分これでいいんじゃないかっていう勘はある。娘の個性を生かして一生続けられる仕事を見つけてほしいと思っていて、そのために中高でできる友達ってすごく大事なんじゃないかなって思っていて、それもあって私立に行って欲しいっていうのもあって。

おおた 個性や特技でメシが食えるのかって批判が昔からあるんですけど、それって「独りで生きていく」発想なんですよね。どういうことかというと、例えば私は絵が好きだと。でも、昔の親御さんが言ったのは「そんなの筆一本で食べていけるわけないでしょ」って。それは絵の技術だけで生きていこうとすることですよね。画家とか。でも、これからは絵が上手な人とITの得意な人が組んだら、何かイノベーションが生まれるかもしれないし、農業や林業、医療と組むかもしれない。自分にしかできないことがあることによって、どこかのチームに加わることができる。“自分が持っていない才能を持っている人とチームになる力”って僕は言うんですけど。そう考えると、ニッチでもいいから人にはない能力を持っていることが大事。つまりスペシャリストになっていく必要がある

K   夢とかも学校で書かされるけど、息子は、書くことがないって。私もなかったので。それなのに、子どもには夢を持ってほしいって思っちゃうんですよね。

おおた 子どもが夢を語ってくれたら親はひと安心ですから。でもまだお兄ちゃんだって中1でしょ?

K   じゃあ、何かのスペシャリストになってほしいと思った時に、親がすべきことって何なんですか?

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お悩みに合わせたストレッチポイントを紹介

 本の中で、著者のおおたとしまささんは「どんな親の心にも魔物が住んでいる」という話をしています。「自らの内なる魔物に打ち勝てるかどうかが、中学受験の親にとっての試練」ともいっています。相談者自身の内にあるものをじっくりと聞き出しながら、自分でも気づいていなかったことに気づかせてくれるおおたさんの問いかけは、心の柔軟体操という意味で「ストレッチポイント」として紹介されています。自分自身に問いかけながら読んでみると、あなたの内なる魔物の正体を知る手がかりになるかもしれません。
「読んでよかった」という反響が広がっている話題の一冊。もし受験や子育てで、「子どもを見ることができなくなっているかも」……そう感じたら、ぜひ手にとってみてください。

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おおたとしまささん プロフィール

教育ジャーナリスト

1973年東京生まれ。育児・教育ジャーナリスト。麻布中学・高校卒業。東京外国語大学英米語学科中退。上智大学英語学科卒業。リクルートを脱サラ独立後、育児・教育をテーマに取材・執筆・講演・メディア出演などを行う。中高の教員免許を持ち、小学校教員の経験もある。著書は『ルポ塾歴社会』、『名門校とは何か?』、『ルポ教育虐待』、『ルポ父親たちの葛藤』、『なぜ、東大生の3人に1人が公文式なのか?』、『21世紀の「男の子」の親たちへ』『21世紀の「女の子」の親たちへ』など計60冊以上。おおたとしまさオフィシャルサイト

構成/HugKum編集部

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