【お話を伺った先生】
小学館アカデミーにしおぎ南保育園 園長 修行幸枝先生。保育士として小学館アカデミーに入社。主任を経て2018年より園長を務めている。
目次
入園後毎日泣いている我が子。いつになったら落ち着くの?
――保育園に慣れず、毎日泣いているようです。いつ頃に落ち着くのでしょうか?
時間はかかっても必ず慣れます! 他の子と比べないで
修行先生 :初日からおもちゃに夢中で全然泣かない子もいますし、ずっと泣いている子もいます。慣れてきたころにゴールデンウイークがあるので、その後再び泣くようになってしまい、一から出直しになることも。早い子で2週間、その後はゴールデンウイーク明けて1、2週間くらいで慣れてくると思いますね。
時間がかかることはあっても必ず慣れてくるので、先生方を信じていただき、また他の子と比べないで欲しいなと思います。
0歳くらいだと、なにがなんだかわからないままで平気にしている子もいますが、敏感に感じる子はやっぱり泣いてしまう。
泣いてしまうというのは“自分が嫌な気持ちだよ”というのを表現しているので、私たちはそれを「そうだよね、お母さんやお父さんと離れて知らない人と会って、知らない場所に行って、知らない子どもたちに囲まれて、嫌だよね」と受け止めつつ、信頼関係を築いていこうと頑張りますので、是非先生たちを信頼していただければと思います。
――4月は泣いている子ばかりだと思いますが、限られた人数のなかどうやって保育をしているのですか?
職員みんなで体と知恵をフル活用して対応しています
修行先生:何人かの先生で泣いている子を抱っこして、ちょっとでも遊べそうな子から好きな遊びに誘って保育園は楽しいところと感じてもらい、保育園に慣れていくようにしています。うちの園では、人手が足りないときは看護師さんにも保育に入ってもらうことも。不思議なことに、子どもは本能的にお世話する人には懐くんです。まさに生きるすべですよね。
また、保育園には先生が何人もいる分、あやし方、遊び方のバリエーションが豊富。1日の終わりには「あの子はこの遊びが好きだった!」「この先生のやり方では難しかったけど、この先生のやり方だったらうまくいったから明日はみんなでやってみよう」などと知恵を共有しています。相性もあるので「あの子は何をしてもダメだった!」と言えば「じゃぁ明日は私がやってみる」と協力しながら乗り切っていますよ。
――保育園での別れ際、親はあっさり帰った方がいいんでしょうか?
「行ってくるね」と“ぎゅっ”として心配せずに行ってくれれば大丈夫
修行先生:私自身、子どもを預けていた幼稚園のベテランの先生から「お母さんが後ろ髪をひかれていると、子どもがつられて安心して登園できないから、後ろを振り向かず、信頼して行ってください」と言われたことがありましたし、これまでの経験からも、別れ際には「行ってくるね」と“ぎゅっ”として、あまり心配せずに行ってくれれば、大丈夫だと思います。
別れたあとに泣いている子はだいたいお母さんやお父さんが出て行ったほうを見るので、私たち保育士はそこまで子どもを連れて行って「お母さん、お父さんいっちゃったね。じゃぁ保育園で元気に遊ぼうか」と切り替えを促すことも。
ただ、泣いているのになにもしないで引き渡すと、お子さんによってはそれを覚えていて、お迎えに行くまで引きずってしまう子もいて、その場合はその子が納得する方法でお別れしたらいいと思います。
また、親御さんの気持ちはお子さんに伝わるんだと思うんですよね。子どもは、親が支度をしている様子をしっかり見ているので「今日は時間がないから行ってくるね!」と伝えれば、お子さんも察して「そうだよなぁ」と思うし、時間に余裕がある日や仕事が休みの日はお子さんもなんとなくわかってるように見えるので、子どもってすごいなぁと思いますね。
はじめのうちは保育園でなにをしているの?
――それぞれの保育園でも違うかもしれませんが、はじめのうちは保育園でどんなことをして過ごしていますか?
信頼関係を築くために好きな遊びを見つけて一緒に遊んでいます
修行先生:0歳1歳は先生との信頼関係を築くのが1番なので、その子が好きそうな遊びで一緒に遊びます。「パペットが好きかな?」「つみきが喜ぶかな」など、いろいろなものを用意しておいて、この子がなにを好きなのかを理解して、そのおもちゃをいつも置いておくようにするんです。すると、ここに来れば楽しいし好きなものがある、先生は私の好きなことをわかってくれるんだという信頼関係ができてくるので、楽しい遊びをも見つけているというのが答えかなと思います。
――0歳、1歳のうちから、お友だちと遊ぶ機会はありますか?
修行先生:この年齢のお子さんは、基本的には1人遊びをしています。ただ、子ども同士で通じ合うものがあるのか、1歳くらいの子でも「お友だちがやってるから自分もやってみようかな」「お友だちが食べているなら食べてみようかな」と刺激し合うことも。小さいうちから通う、保育園ならではの関わり合いですね。
保育園に慣れるために家庭でできることはありますか?
――保育園に慣れるために家庭でできる声かけなど、なにか出来ることがあれば教えてください。
保育園に近い生活リズムとポジティブな声かけを
修行先生:保育園の生活のリズムが分かってきたら、お家でもそのリズムに合わせて生活していただくと、すごくいいかなと思います。
声かけはなるべく、楽しかったことを思い出すような言葉がいいですね。連絡帳に「今日はこんなことをしました」などが書いてあると思うので、「こんなことしたんだ!楽しかったね」などポジティブな言葉をかけていただくといいと思います。まだ言葉が理解できない年齢だとしても、同様の声かけをどんどんしていただくと、お子さんもなんだか楽しいから行こうかなという気持ちになってくるし、泣いたことではなく楽しかった思い出がよみがえってくるので、おすすめです。
連絡帳に書いた方がいいことは?
――家庭から連絡帳を書く際、園からの視点で「こういうことを書くといいよ」ということはありますか?
子どもが好きなことを具体的に書いてもらえると参考になります
修行先生:こんな遊びをしましたとか、おうちでこんな風に遊んでいますなど、お子さんの好きなことを書いていただくと、保育園でもやってみよう!と、園での過ごし方の参考になります。好きな手遊びでもいいですし、絵本が好きな子は家にある絵本が園にもあると安心するようなので、お気に入りの絵本を教えてもらえるといいかなと思います。
土日の出来事も書ける範囲で書いていただけると、それを見て「どこどこに行ったんだね!」などと子どもに話すことが出来ますし、子どもも“先生はこんなことまで知ってくれているんだ”と嬉しいみたいで、コミュニケーションのひとつになります。
月曜朝になるとぐずる我が子。週末に心がけることはありますか?
――月曜日の朝になるとぐずることが多いです。親子ともに気持ちよく月曜日を迎えるため週末に心がけた方がいいことはありますか。
ぐずっても大丈夫!前日から準備をしたり先生に聞いて楽しみを作っても
修行先生:月曜朝にぐずる子はうちの園でもすごく多いのですが、対策があるとすれば、週末も出来る限り生活のリズムを崩さないでいただくことでしょうか。ただ、月曜朝が憂鬱なのは大人も同じですよね。なので「そうだよね、嫌だよね。お母さんもおうちにはいたいけど、一緒に行こうか、頑張ろうか」と声をかけていただく。
あとは日曜日の夜くらいから「明日は保育園だね。これ準備しておこうか」と、準備を一緒にするとか、0歳さんでも「保育園バッグに明日のお着替え入れとくね」と話しかけるなど、明日は保育園に行くんだと言う心の準備をしておくといいかもしれません。
以前、「わかるなら月曜日にやる遊びを教えて欲しい」という保護者の方がいらっしゃいました。子どもが行きたくないと言ったときに、「先生が〇〇やるって言ってたよ」と伝えると、行きたい気持ちになったそう。このときは凧揚げでしたが、こんな風に先生に聞いてみるのもいいかもしれません。
また、例えぐずってしまっても、私たちは「月曜日だからしょうがないよね」と思っていますので、お母さんやお父さんも同じように月曜日だからしょうがないと、あまり気にしなくてもいいのかなと思います」
お友だちを泣かせてしまうことがあるのではと心配です
――今後、お友だちを叩いてしまった、泣かせてしまったなどのトラブルが起こるのではと心配です。この場合は我が子に対してどんなふうに対応すればいいんでしょうか。心構えのために教えてください。
まずは先生に事情を確認するのが一番
修行先生:もしお友だちをたたいてしまった場合、状況にもよりますが、当園では叩かれてしまったお子さまにはその時の状況とケガの程度、その後の対処(叩かれてしまったところを冷却して様子をみていたなど)を伝えなければならないのでお話しますが、叩いてしまった側にはお伝えしていません。園の中で起きたことは、園の責任という意味合いからです。
ですが、子どもが帰宅後に、「お友だちを叩いちゃった」などと話すことがあった場合、まずは先生に事情を聞いてみるのがいいと思います。
叩くこと自体はよくないことですが、嫌なことを言われてとか、使っていたものを取られて反射的になど、子どもにも事情があるもの。我が子に対して問い詰めるのではなく、「どうしてそうしちゃったの?」と聞いてみる。あまり最初から悪いことをしたと決めつけないほうがいいと思います。
そして、気をつけようね、と言っても繰り返すのが子どもなので、長い目で見守ってあげましょう。繰り返しになりますが、こういったことはそれぞれの事情、子どもによっても違ってくると思いますので、なにかあればまずは先生に相談してみてくださいね。
体調を崩すのが心配で。家で気を付けることはありますか?
――入園後、環境の変化から体調崩してしまうのではないか心配です。家での生活で気をつけた方がいいことがあれば教えてください。
生活リズムやバランスのいい食事。それでも体調は崩すのでご両親は休んだ場合の準備を
修行先生:同じような答えになりますが、生活リズムを整えること。あとはバランスのとれた食事ですね。
集団生活が始まると、どうしてもいろいろな菌をもらってきてしまいます。でも、小さなときから菌をもらって免疫をつけていくことは大事なこと。どちらかと言うと私たちが心配しているのは、子どもが体調を崩すことで親御さんが仕事を休まなければいけなくなることです。
そうなるとイライラすることもあると思いますし、お母さんとお父さんとで仕事をどっちが休むかでもめることがあれば、子どもは「僕のせいで」と心を痛めます。
子どもが体調を崩すことは仕方がないことなので、おじいちゃんおばあちゃんの手を借りたり、お金はかかりますが病児保育を利用したり、休みやすいような職場環境を整えるなど、対応できるような準備をしておくのがいいのかなという風に思います。
子育てに悩んだら、保育園をどんどん活用して
修行先生に、いろいろなお悩みにこたえていただきました。最後に「保育園では複数の先生が、これまでの経験を踏まえながらいろいろな案を出し合い、その子にあった対応の仕方、遊び方を見つけながら保育をしています。お母さんやお父さんも、迷ったら先生に“どうやったら泣き止んだんですか”など、どんどん聞いてみてください!」とアドバイスをくださいました。
修行先生のアドバイスは、どれも具体的で、困った時にはすぐに取り入れられそうなものばかり。慣れない保育園生活で困ったとき、悩んだときはぜひ参考にしてくださいね。
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文・構成/長南真理恵