【東大王 伊藤七海さん】塾なし・現役合格の秘訣は意外にも「当たり前の勉強法」と「友達の存在」 伊沢拓司さんへの憧れの気持ちも原動力に

小学校のときは習い事で忙しく、宿題は学校で片付けていた『東大王』の伊藤七海さん。中学受験など考えず、公立中高時代もソフトテニスに明け暮れました。が、いつしか「勉強しなきゃ!」のスイッチが入り、高3で猛勉強して東大に現役合格。塾も行かずにどんな勉強をしたのかと聞けば、え、そんな方法!?  伊藤七海さんのインタビュー後編は、「東大に合格する独学法」です。

小学校の友達がいて自転車で通える中学がいい!

――地元福井県では高校までずっと公立の学校に通ったのですね。中学受験は考えませんでしたか?

福井大学の附属中(福井大学教育学部附属義務教育学校。現在は小中一貫校で小学校が前期課程、中学校が後期課程となる)を受けようか、という話もあったんです。母の出身中学で、そこから県立の藤島高校に入学したそうです。けれど、僕は小学校時代の友達と離れたくない、近くの公立なら自転車で通えるし「地元の中学がいい」と言ったんです。父も「そう思っているのにわざわざ受験しなくてもいいんじゃない?」って言ってくれて、受験しないことになりました。

代わりに、というわけじゃないけれど、日本語、言葉が好きだったので、漢字検定を受けました。

小学校の教科書の範囲だと5級が小6くらいだけれど、小4のときに5級、そこから4級3級と小学校のうちにとって 中学で2級に合格しました。

宿題は欠かさずやる、定期試験前には範囲を1周見直すだけ!

――中学時代はどんな勉強法で勉強していたのですか?

普段は宿題をやるだけです。テストは中間、期末、外部の確認テストがありましたが、確認テストはとくに勉強せずに受けていました。中間と期末のテストの場合は、テスト期間は部活動がないので、そこで試験範囲を1周分やるくらいかな。授業をちゃんと聞いていれば、それでだいたい理解できて試験に臨めると思っていましたから。授業をちゃんと聞くのがポイントですかね。それがいちばん効率いいです。

東大王 伊藤七海さん
東大王 伊藤七海さん

――順位などが出る学校でしたか?

はい、僕はだいたい学年で15番くらいでした。定期テストだとしっかり範囲を勉強して高得点をとってくる層がいるんですが、僕は1周するだけだったからそこまでつめられなくて…。ただ、定期テストに注力している人は、範囲が広くて事前学習ができない外部テストを受けると、それほど点数が上がらないようでした。僕は範囲をあまり気にせず勉強していたこともあって、外部テストでは周りが下がる傾向の中、自分は割といい点数がとれていました。気づいたら外部テストでは次第に上がって、かなり上のほうにいました。

丸暗記はダメ! 理屈や状況を踏まえて理解していく

――範囲が広い外部テストで結果が出せるなんて、一体どんな勉強を?

たとえば英語の定期テストは教科書の文章から出題されるから、教科書を丸暗記したら解けるんです。でも、そういう勉強はしていなかった。「ここが過去形なのはこういう状況だからだよね」とか、理屈や状況を踏まえて理解していくというか。間違えたときも、なぜ自分はそう考えたのか、なぜ間違ったのかの原因を考えて、次に同じような問題が出たときに間違えないようにと意識しました

丸暗記ではなく理屈で理解していくことが大切だと言います
丸暗記ではなく理屈で理解していくことが大切だと言います

 社会科の場合は、試験前に友達同士で問題を出し合っていました。みんな競って「きっと答えられない」問題を出してくるので、自分が答えようと必死で勉強し、インプットのいい機会になっていました。自分が出題するとアウトプットの機会にもなるし、友達同士で問題を出し合うのはよかったなと思います。

高校も自転車で通える県立へ。ソフトテニスに明け暮れる

――高校は福井県立武生高校ですね。

父親が武生高校出身で、家から自転車で通える、友達も多い、ある程度進学校である、ということで選びました。福井県で県内1位の実績なのは藤島高校ですが、わざわざ遠くまで通わなくてもいいだろうと判断したんです。

高校に入ってからは部活動がすごく忙しくなりました。中高でソフトテニス部に入部したのですが、 高校では週7練習があって、休みもほぼなし。「今月は2回も休みがあるぞ」って喜ぶくらいでした。だから中学時代と同じで定期テスト前は範囲を1周。数学は間違えたところを放っておくと大変なことになるので、間違えたところは真剣に押さえていました

ただ進学校で宿題も小テストも結構あったので、学校の勉強やテストに対応しているだけでも、かなり学力がついたと思いますね。

担任の先生に「目指したら?」と言われて東大を意識

――東大を志望したのは……?

自分は大学の情報をあまり持っていなくて、福井という地域柄、行くなら名古屋か京都かなと漠然と思っていました。

東大を意識し始めたのは高2の頃です。高2で担任になった先生が県内No.1の藤島高校から赴任してこられた方で、東大受験生に対する指導経験も多かったんです。それで僕の成績を見て、「東大を志望校にしてみたら?」と言ってくれたんですね。3年生の担任も同じ先生で応援してくれたり、いろんな難関大のイベントに参加したりしているうちに、どんどん意識が東大に向いていきました。

『東大王』に出演する伊藤七海さん(伊藤七海さんXより)
『東大王』に出演する伊藤七海さん(伊藤七海さんXより)

それと、『東大王』の影響もありました。出演していた伊沢拓司さんに憧れて、「自分も東大に入って『東大王』になりたい」というのも、動機として大きかったです。

当時はC判定、化学の大問で0点を取ったことも

――東大模試などをやってみて、手応えはありましたか?

最初はビックリするくらいひどくて、河合塾の東大即応オープン模試では、化学が60点満点でギリギリ二桁に乗るくらいの点数でした。ショックを受けていたら、担任の先生が「まだ終わっていない範囲だし、試験の形式にも慣れていないからあまり気にしなくていいよ」と励ましてくれました。

代々木ゼミナールの東大入試プレや駿台の東大入試実戦模試では、全体でC判定を取ったこともありましたが、「現役生はあとから伸びるから大丈夫、イケるぞ!」と。

当時の東大入試実戦模試(駿台)では理科二類はC判定、三類はE判定(伊藤七海さんご提供)

でもこのままでは合格は遠いから頑張らないとって火がついて、夏の東大模試からはギアを1段階、2段階と上げて勉強を始めました。

友達と問題を出し合うと刺激し合い、みんな成績が上がる!

――大学受験の勉強のスタイルは? 塾なしであることには変わりないのですね?

はい。地方だと塾も少ないし、進度もゆっくりで、受験が始まってもまだ高3の教科書が終わっていないこともザラです。東京の私立中高一貫校とはぜんぜん違う環境です。でも比べてもしょうがないので、今できることを完璧にしようと考えました。

物理と化学は『重要問題集』を解いていたのですが、クラスメイトも同じものを買っていたので、みんなが競うようになって。「オレ、ここまで終わってるよ」とすごく先までやっている友達に触発されて自分も頑張りました。

友達と競い合うことで自分も頑張れたと話します
友達と競い合うことで自分も頑張れたと話します

数学は高2から特進クラスに入ったので、少し進度が速かったんです。

印象に残っている数学の授業で、4人グループをつくり、1人ずつ「問題ごとの担当」を決めて、その担当で議論した内容をグループに持ち帰り、それぞれのグループでまた解法を議論する、みたいなスタイルのものがありました。これがすごくよくて、1つの問題をいろんな角度から考えることができ、様々な解法が身に付き、応用力もつきましたね。

英語は中学のときは苦手でした。長文になると解けなくて。それは、教科書に載っている単語くらいしか知らなかったからで、高校に入って単語や文法をやり始めたら、急に読めるようになり、そこから単語も長文も楽しくなりました。

ソフトテニス部の同期の1人が英単語がすごく好きで問題を出してくるんですよ。答えられないと悔しいし、「次は相手が分からない単語を出そう」とがぜん英単語に身が入りました。部活動で忙しかったけれど、休憩時間にそんなことができていたし、雨の日はトレーニングになるので、筋トレしながらふたりでまた「これどういう意味だっけ?」なんてやっていました。

東大に入れたのは「友達がいたから」

思い起こせば、友達と勉強することで刺激をもらい、自分も頑張ろうと思って東大にたどり着いた一緒に勉強できる友達がいたのが、僕が東大に入れた要因かもしれません。

◆『東大王』の伊藤七海さんが塾なしで東大に合格した勉強法

・英語は単語数を増やし、しっかり覚えると長文に強くなる

・学校の宿題と小テスト、定期テストにはしっかりと対応

・模試では目先の点数や判定に一喜一憂せず、黙々と勉強を

・単語や社会の暗記ものは友達と問題を出し合い、インプット&アウトプットを高める

・数学は複数の解法をチームでディスカッション

『東大王』後藤弘さんの会社で子どもたちに「分かる!」楽しさを伝えた

――現在、伊藤さんは、同じ『東大王』である後藤弘さんの会社bestiee(ベスティー)に所属されているのですよね。母校で教育実習をされ、「福井で教師になるのが夢」と聞いていましたが。

福井で教員になるという選択肢は今も持っていますが、それは今後チャンスはあるかな、と。『東大王』で結束してきた仲間と一緒に教育に携わるほうが、自分が影響を与えられる人数は多いと思い始めたのです。

株式会社bestieeが提供する「ベストティーチ」という家庭教師のシステムでは、単発から気軽に優秀な家庭教師を派遣しています。今はオンラインキャンペーンも始めており、首都圏以外の、塾が少ない地域の子どもたちにもアプローチできる。東京の受験事情やベストティーチ独自の勉強法を、あらゆる地域に還元できることに魅力を感じています。両親も応援してくれています。

「ベストティーチ」のキャンペーンで勉強を教える伊藤七海さん
「ベストティーチ」のキャンペーンで勉強を教える伊藤七海さん

また、故郷で教員をしている同級生たちにも、いろいろな情報を授けることができる。自分の可能性を広げられます。今は、SNSのマーケティングに携わりながら、キャンペーンで教えに行くこともあります。教師として、企業人として幅広く活躍できる今の環境に満足しています。

たくさんの人にアプローチでき、個別にもリーチしていける今の仕事に情熱を注いでいきたいですね。

前編では「先取り学習はしない」「先生の言いつけを守る」など幼少期の家庭での教育方針を伺いました

【東大王 伊藤七海さん】小中高と公立・塾なし、現役で東大合格! 両親の教育方針は「先取り学習はしない」“自分で努力する力”が育ったワケ
2歳、あいうえおカードで「チジョウのホし中島みゆき」 ――伊藤さんは1999年6月、福井県のお生まれだそうですね。 僕は福井県...

「東大王」後藤弘さんと一緒に運営する「ベストティーチ」が気になる方はこちらもチェック

【東大王 後藤 弘さん】開成中学時代、尊敬する筑駒生の言葉がきっかけで学年1位の成績に!その実体験を元に築いた事業とは?
大企業への就職はせずに自ら家庭教師派遣の起業を ――後藤さんは、東大在学中は『東大王』の番組に出られたり、2023年のミスター東大に選...

お話を伺ったのは

伊藤 七海(いとう ななうみ)
1999年、福井県生まれ。小さい頃から日本語の文字や言葉に長け、東大入学後、TBSTV放映『東大王』に出演。「日本語の絶対王者」と呼ばれ人気を博した。現在は、同じ『東大王』である後藤弘さんが代表を務める家庭教師サービス「ベストティーチ」を共同で運営中。
X @nanaumi110
Instagram @nanaumi110

ベストティーチ>>公式

取材・文/三輪泉 撮影/五十嵐美弥

編集部おすすめ

関連記事