僕が僕として精一杯やっていったらそれが一つの形になる
――おっとりした優しい印象の福さんですが、エッセイを読むと小さい頃から負けず嫌いな一面もあるのかなと感じました。
鈴木福さん(以下、敬称略):はい。ただ、“楽天的な負けず嫌い”だと思います。前向きというか、長く引きずらないというか。例えばオーディションに落ちて悔しくて泣いても、次に向かっていける切り替えはすぐにできるタイプだと思います。割と母がそういうタイプなので、似ているのかもしれません。
お芝居に関してもできないことはまだまだ多いし、バラエティやコメンテーターのお仕事でも「あのとき、もっとこういうことが言えたな」とか、振り返って反省することもありますが、次に活かせたらいいかなって思うんですよね。本当に発言がズレていたりとか、絶対に言っちゃいけないことを言ったりしていなければいいかな、と。
――「あまり(自分を)人と比べることがない」とも書いてありましたが、たくさんの個性が集まる芸能界で、SNSも発達している今、自分と他人とを比べずにいられるのもすごいですよね。
鈴木:昔から、なんとなく「すごい人になりたい」みたいな、ほわっとしたタイプで。運動会で1位になれなかったらもうダメだとか、野球でレギュラーになれなかったら終わりだとかいうことでもないし、「自分の中でやりたいようにやれていればOK」だと思っているんです。
それこそ、たくさんの個性が集まる芸能界にいるからこそなのかな、とも思います。周りの先輩たちを見ていても、この人になりたいし、この人もすごく好きだし、この人もすごく素敵だなって思える人がたくさんいらっしゃるんですよね。そういう人たちのすごいところを全部持っている自分になりたいと思うから、比べてしまって悩むことはなくて。たくさんの好きな人たちのいいところを吸収していけたら、きっと最強の人になれるんだろうなと思います。
何かの賞で評価されたりとか、何とかランキング1位とか、そういうわかりやすい評価はもちろんあるけど、そうじゃないところでの評価もある世界だから、人と比べないでいられるのかもしれません。自分らしさをわかっているから、僕が僕として精一杯やっていったら、それが一つの形になるのかなと思います。
――素敵な考え方ですね。今は役者だけでなく報道番組のコメンテーターもやられていますが、新しいタイプのお仕事に飛び込むのは怖くはないですか。
鈴木:最初にコメンテーターとしてのお仕事をしたのは、フジテレビのニュース番組「イット! 」のこどもの日の企画だったと思います。子どもとして出演したので、素晴らしいコメントを期待されていたわけではありませんでした。
その後「真相報道バンキシャ!」に出たときも、「コロナ禍の中での学生生活の状況を教えてほしい」というのがメインでした。そのときも、学生として自分のリアルなお話をすればいいだけだったので、まったく問題はなかったです。ただ、だんだんと(自分の状況以外の)他の話題が振られるようになってからは、常に不安になりながらやっています。
――お芝居の仕事とはまた違った面を求められると思いますが、そのあたりに対しての葛藤などは?
鈴木:今でこそ、ちょっとあります。現在、「ZIP!」に準レギュラー的な位置で呼んでいただいていますが、板に付いたら終わりだなということは思っていて。
どういうことかと言うと、やっぱり俳優の鈴木福としてやっていきたいと思っているので、俳優としての成長が、コメンテーターとしてのイメージよりも超えていかなきゃいけないということはいつも考えていますね。
コメンテーターのお仕事は、最近になってからだと思われがちなんですが、実はもう始めてから4年ぐらい経つんですよ。世間的な4年間というのはあっという間かもしれませんが、僕の中では中学生から大学生になるくらいの期間なので、けっこう長かったなと感じていて。それでも、「最近、コメンテーターのお仕事をしているよね」と思われているうちは、みんなが新鮮に感じてくれているということなので、大丈夫かなと思います。
――エッセイを読んでも、話を聞いていても、福さんは本当に好青年だなと思うんですが、ウィークポイントや、自分ってダメだなあという部分はあるんでしょうか?(笑)
鈴木:そんなの、いっぱいありますから! 片付けは苦手だし、締め切りもめっちゃギリギリになっちゃうタイプ。朝も苦手ですね。親から怒られることもたくさんありますよ。立派だって言っていただくことも多いですが、ダメなところもいっぱいあると思っています。
4人きょうだいの長男として、下の子の世話をするのも好き
――ちょっと安心しました(笑)。ご家族についてもお聞きしたいんですが、下に3人の弟妹がいらっしゃるということで、きょうだいが多くてよかったことはありますか?
鈴木:いやもう、「楽しい」しかないです。最近は弟が野球を始めたんですが、僕も野球をやっていたので、一緒にキャッチボールをしています。そういうことはきょうだいがいなかったら味わえなかっただろうなと思います。
あとは舞台を観に来てくれて、「楽しかった」と感想を言ってくれたのもうれしいです。
――きょうだい仲よしなんですね。仲よくいるために心がけていることは?
鈴木:ないですね…自然体? 小さいころから、数える程度しか喧嘩していないかもしれません。喧嘩って、何か理不尽なことを、言ったりやったりしたときに起こると思うから、こちらが正当なことを言っているなら、ただ相手がつっかかってきているだけ。
下の子たちが言い合ったりしていることはあるけど、殴り合いみたいなのはないです(笑)。(きょうだいが)間違っていたら、「それは間違っているよ」って僕や両親が言えばいいだけなので、“喧嘩しないために”とか“仲よくするために”とか、特に意識はしていないですね。
――自分はどういうお兄ちゃんだと思いますか?
鈴木:まあまあ優しいんじゃないかな(笑)。
――かなり優しそうです!
鈴木:妹や弟たちのために何かをするのは好きなので。それこそ弟が野球を始めたので、必要なものを一緒に買いに行ったり、いろいろ教えたり。どこかに行ったときは一人ひとりにお土産を買っていくこともあるし。あとは、下の子たちを公園に連れていったり、ご飯を作ってあげたりすることもありますね。上の妹に関しては、もうすぐ大学受験なので、最近よくその話をしています。
――4人きょうだいだと、福さんをリーダーとしたチーム感があるというか、もはやひとつのコミュニティですよね。
鈴木:そうですね。割とうちの両親が昭和っぽいということもあって、長男は長男として育てられているので、きょうだいみんな平等だけど年功序列はしっかりとあるのかもしれないですね。僕が両親にしてもらっている部分もたくさんあるから、「しっかりしないと」というのももちろんあるし、妹や弟たちになめられるような兄だとは思っていません。
何かあったら一番に相談するのは今でも両親
――エッセイにも、「両親にしてもらっていることが多いから反抗期がなかった」と書かれていましたね。具体的に親御さんからのサポートで印象に残ってることはありますか。
鈴木:日々の衣食住に関してのサポートはもちろんですが、仕事の帰りの時間が遅いときや、疲れているときに父親が車を出してくれるなど、いつも気にかけてもらっていますね。
日々、会話もすごくしています。仕事だけじゃなく学校のことでも、何かあったら一番に相談するのは両親です。
――素敵ですね。改めてご両親の好きなところを教えてください。
鈴木:ふたりとも優しいです。しっかりと僕のことを考えてくれて、昔も今も僕がしたいようにさせてくれていますし。何をするにも、“家族で”というのを大切にしているところもいいなと思います。
――ご両親と似ているところはどんなところですか?
鈴木:ポジティブなところは母に似ているし、いろいろと考えているところは父に似ているかなと思います。父はしっかりしているので、似ているなんて言ったら「何を言っているの?」って言われると思うんですけど(笑)、僕もそういう(しっかり考える)ところは持っているのかなと思っています。
あと、父が冗談で嘘をつくときの演技力。 「 ○○だよ」と本当らしいことを言って「ウッソ~(笑)」みたいな演技がうまいんです。そこは父譲りかなって(笑)。
――福さんの演技力はお父さん譲りだったんですね。最後に、HugKum読者にメッセージをお願いします!
鈴木:子育てに関する本ではないので参考になるところがあるかわからないですが、読んで僕のことを知っていただいて、面白かったなと思ってもらえたらうれしいです。
自分には小さい弟と妹がいるから、ちょっとは子育てにも関わってきたつもりなのですが、子どもをしっかり見てあげて、しっかり関わってあげた時間がすごく重要だと思うんです。働きながらで忙しかったとしても、会話する時間、一緒にご飯を食べたりお風呂に入ったりする時間、家族として一緒に何かをする、関わる時間がとても大事だと思います。自分も親にそうしてもらったなと思うし、両親に感謝しています。
(本の中で)そんな話もしているので、ぜひ読んで、応援していただけるとうれしいです!
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