発達障害の子の言葉の育みにおすすめ!教育玩具「くるくるチャイム」の魅力を言語聴覚士・奈々先生が解説

言語聴覚士として「ことばの相談室 ことり」を主宰し、ことばの発達がゆっくりなお子さんにレッスンをしている寺田奈々さんに、ことばの療育やレッスンで定番となっている、ことばの芽ばえの時期にぴったりなおもちゃをご紹介いただきました。おもちゃを通してことばが育まれるには理由がありました。

おもちゃを通して、子どもたちの人とつながる気持ちを育みたい

「発達障害の子」とひとくくりにすることはできませんが、ことばの相談室に来るお子さんたちのなかには、新しい場面に不安をおぼえやすい、先が予測できない不安定さやドキドキするサプライズが苦手、見通しが立たない場面で本来の力が発揮できない、手先が不器用でうまく操作することが難しい、自分一人の遊びの世界に他の人を招くのが苦手―――など、多様な発達特性を持つ子もいます。

ことばの相談室のおもちゃは、そのようなお子さんたちにとっても楽しく遊べるものであることを大切にしています。楽しい遊びを通して楽しさを共有したい、一緒に遊びたい、コミュニケーションを取りたいという気持ちが育まれていくことで、ことばの育ちに繋がっていくからです。

療育で定番の「くるくるチャイム」。どんなところが優れてるの?

たとえば、「くるくるチャイム」(くもん出版)というおもちゃ。どの療育施設でも見かける定番中の定番です。公式では玉が握れる10か月ごろからと紹介されていますが、5歳や6歳のお子さんとも一緒に楽しく遊んでいます。

仕組みはシンプルで、5つの色違いの玉をトリさんの頭からぽとんと入れると中でクルクルと回転し、チーンとベルの音がして出てきます。「くるくるチャイム」のどういったところが優れているのでしょうか?

一目で使い方がわかり、いつも同じ反応が返ってくる安心感

まずは遊びのわかりやすさがあります。

「くるくるチャイム」で遊べるのは玉を入れたら出てくるというシンプルな仕組みなので、一目見て使い方が分かります。

子どもが行うワンアクションに対して引き起こされるおもちゃの反応がひとつだけで起こり方も一定なので、安心感があります。また、ボールの通る道が透明なので、クルクルとボールが回って降りてきて、あと少しで外に出る!の見通しが立ちやすいです。

一瞬だけ隠れた後にボールが出てくるので、子どもたちはボールの出口の前で待ち構えています。おもちゃの仕掛けがシンプルで分かりやすく、いつも同じ反応が返ってくる安心感と見通しが、発達特性のあるお子さんの遊びやすさに繋がっているのだと思います。

不規則なことが苦手な子も安定して楽しめる

発達特性をお持ちのお子さんのなかには、不規則(ランダム)であることが苦手な子が多く、常に安定した結果が得られることを楽しみにする子がいます。玉を入れてから出てくるまでのあいだはほんの数秒間ですが、この、「期待して待つこと」はお子さんの心の中でことばを育むために大切です。みなさんも、ワクワクすると、一人で楽しむのではなく、誰かに伝えたい!という気持ちが湧いてきませんか?期待して待ち、ワクワクを共有することが、ことばでのコミュニケーションの大切なとっかかりを作ってくれることが多いです。

玉が5つというのも、多すぎず、少なすぎずちょうどよい数です。

子どもとのコミュニケーションは、手から手へものを渡すときに生まれやすい

玉の大きさは、お子さんの手で持ちやすく扱いやすいですね。お子さんがどのように遊びたいかにもよりますが、一度に玉を5つすべて渡してしまうのではなく、ひとつずつ渡すようにしています。

ことばが芽ばえる頃のお子さんのコミュニケーションの多くは、手から手へとものを渡すときに生じます。なので、できるだけ渡す機会が多いほうが、視線を交わしたり、「もうひとつちょうだい」などと意思表示をするチャンスができたり、どちらが好きな色かな?などその子のことが分かるチャンスが増えます。

遊びのはじまりと終わりがわかることで育まれる達成感

レッスンの場面では、お子さんとはじまりと終わりを一緒に経験する、はじまりと終わりが分かることも大切にしています。遊びのはじまりと終わりがわかることが、「できた!」の達成感に繋がりやすいためです。

玉の数が限られていることで見通しを立てやすい

玉の数が限られていることで、「あと◯個」「ぜんぶ入れた」のように区切ることができ、見通しを立てる力を育てることにも繋がります。

遊び方をアレンジして、「予想外」を楽しむのもおすすめ

ちなみに、くるくるチャイムの付属品に付いている黄色い「ボール受け」は取り外して使っています。

ボール受けが無いので、ボールは机や床の上を転がっていきます。子どもが入れてくるくるチャイムから出てきたボールを大人が手で受け取ってキャッチボールのように遊んだり、ボールが入る容器をゴールとして用意したりするとお子さんは驚いて楽しんでくれます。不規則(ランダム)が苦手なお子さんであっても、少しだけイレギュラーを取り入れて、予測できるものばかりのなかで”ちょっぴり予想外”になることもおもしろいよ、と伝えていきます。

ことばの芽ばえ時期のおもちゃ選びは、カラフルで鮮やか、手で操作できるを目安に

ほかにも、「遊び方やおもちゃの反応の分かりやすさ」という点では、ボタンを押すと人形が飛び出てくるおもちゃや、吸盤が付いていて手で触れるとクルクル回るハンドスピナーなどがおすすめです。

子どもの探求したい気持ちを引き出すために、色が少ないものよりもカラフルで鮮やかなもの、電池で勝手に動くのではなく手で操作を加えるとなにか反応が返ってくるものを選ぶようにしています。ことばの芽ばえの時期、人への興味関心を育てたい時期のお子さんと、ぜひ一緒に遊んでみてくださいね。

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寺田奈々|言語聴覚士
慶應義塾大学文学部卒。養成課程で言語聴覚士免許を取得。総合病院、プライベートのクリニック、専門学校、区立障害者福祉センターなどに勤務。年間100症例以上のことばの相談・支援に携わる。臨床のかたわら、「おうち療育」を合言葉に「コトリドリル」シリーズを製作・販売。専門は、子どものことばの発達全般、吃音、発音指導、学習面のサポート、失語症、大人の発音矯正。著書に、『0~4歳 ことばをひきだす親子あそび』(小学館)、『発達障害&グレーゾーン幼児のことばを引き出す遊び53』(誠文堂新光社)がある。

イラスト/まる 写真提供/くもん出版

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