終了直後に訪れる「中学受験ロス」
中学受験を終えた保護者の方々、お子さんのサポートおつかれさまでした。受験が終わって安堵している方もいれば、望んだ結果が得られずに残念に感じている方もいるかもしれません。
「第一志望合格は3割。納得できる結末に必要なこと」、これは昨年末に発売したおおたとしまささんの著書「母たちの中学受験」のサブタイトルです。終了直後、多くの親が「中学受験ロス」に陥るといいます。
中学受験終了直後、子どもたちが解放感を満喫している一方で、結果の満足・不満足にかかわらず、多くの親御さんたちがバーンアウトのような状態になります。いわゆる「中学受験ロス」というやつです。
心にぽっかりと空いた穴から中学受験の長かった道のりをふりかえると、渦中にいたときには見えなかったものが見えてきます。遠回り、落とし穴、ぬかるみ……。経験したすべてに意味があることがわかってきます。
終わってからそれに気づくのが中学受験の残酷な構造です。
(『母たちの中学受験』はじめに より)
「納得できる結末に必要なこと」とは?

終了直後の親の心境は、必ずしも晴れやかなものではありません。進学先を決めた後も、ほろ苦い想いを感じ続けている人も少なくないかもしれません。
では、納得できる結末にするためにはどうしたらいいのでしょうか。
そのひとつの方法としておおたさんは「親子で挑んだ中学受験のエピローグ(終章)を描くこと」が大切だと伝えています。
本書に登場するお母さんたちも、おおたさんとの対話を通して、直後の後悔や自責の念を吐露し、ときに涙を流し、それぞれに終了直後の想いを率直に語ってくれました。負の感情から抜け出したきっかけも話してくれています。
親子で挑んだ中学受験のエピローグを描けるまでに、実際はどのくらいの時間がかかって、どんな出来事があったのでしょうか。お母さん自身の気持ちに変化をもたらすきっかけとなった一つのエピソードを、本の中からご紹介します。
第二志望校へ進学を決めた親子のエピローグ
これは、第二志望の学校に通うことを決めた女の子のお母さんのお話です。終了後しばらくのあいだ、悔しさを感じながら過ごしていました。
気持ちが切り替わらないまま過ごした春休み
「制服探寸に行っても気分は切り替わりませんでした。春休みの家族旅行でも私はずっとツンケンしてました。なんなら入学式でも、もちろん口には出しませんが、心の中では『この学校じゃなかったのになぁ⋯⋯』と思ってました」
入学式翌日のできごと
「でも入学式の翌日、地味だけど、私にとっては衝撃的なできごとがありました。
学校から帰宅した娘がいきなり『今日ね、なんかキャサリンとまゆみんと%&を#だったんだよね』とか言うから、『ごめん。それ、誰?』って聞いたら、いきなり友達とお互いにあだ名を付け合ったみたいで、もうLINEも交換してきて。それが驚異的なスピードだったんです。娘にこんな社会性があるって、私は知りませんでした。
それを見たときに、私、やっとほっとしたというか。この子、どこに行ってもやっていける子だったんだって。それに、本人が学校を気に入っていなかったら、そういう行動も出てこないはずです」
学校を好きになる要素を見つけてくる娘

「そこから私の中で、いま娘がお世話になっているその学校の地位が一個ずつ上がっていきました。
駅からそこそこの道のりを重いリュックサックを背負って歩かなきゃいけないことを、私は勝手にデメリットだと考えていました。でも娘は違いました。『あれでギリギリだよ。あれより近かったら友達と喋る時間が足りないよ』くらいのことを言っていて。こうやってまた一点ゲット。
学校生活が始まってみると、頭髪のルールとかスマホのルールとか、かなり合理的なんです。私、そういうの好きだから。それに学校からのお知らせがウェブに集約されているのも気に入りました。
自習室があることなんて私はどうでもいいと思っていたんですけど、でも娘は、自習室でお友だちと勉強のやり方の情報交換をしてきたり、高三の先輩の受験勉強を間近で見てその気迫に圧倒されたり、いろいろな学びを得ています。校風は案外自由だし、男女の仲もすごくいいみたいだし、若い先生が多くて話しやすいとか⋯⋯⋯⋯」
好きと安心が入り混じって満たされていった
「学校を好きになる要素を娘が毎回見つけてきてくれて、私に一個一個、おみやげみたいに渡してくれて。好きっていう気持ちと安心とが入り交じった感じに心が満たされていきました。
いまようやく一学期の中間と期末が終わったところですが、そこでの取り組み方や結果を見て、中学受験での経験が彼女の血となり肉となっていることを実感しています」
(『母たちの中学受験』第四章 語りより)
どんな結果でも、親の心からの笑顔こそ子どもにとっての「サクラサク」
エピローグをすぐに描けるケースばかりではないでしょう。数ヶ月先、数年先となる場合もあるかもしれません。どんなケースであっても、中学受験を終えた保護者へ、本書でおおたさんは大切なメッセージを伝えています。
自ら塾に行きたいと言い出したって、その学校に行きたいから頑張るんだなんて言っていたって、結局のところ12歳の子どもが勉強する最大のモチベーションはほとんどの場合、親の笑顔が見たいからです。それなのに親御さんを笑顔にするほどの成績が取れなくていちばんふがいない思いをしているのは本人なんです。
そんな気持ちを秘めながら、必死に自分と戦っている気高い12歳の横顔に、愛おしさと尊さと尊敬の念が湧いてくるはずです。そのまま心の中で、力いっぱいお子さんを抱きしめてあげてください。
逆にいえば、どんな結果であれ最後に親御さんが心から笑顔になってくれれば、それが子どもにとっての「サクラサク」です。それまでの努力の全てが報われた気になれます。望んだとおりの結果が出たから笑顔になるのではありません。自分にとって大切なひとたちが笑顔になってくれているから、どんな結果にも誇りがもてるのです。
それが12歳の受験です。
(『母たちの中学受験』おわりにより)
中学受験後に読みたい『母たちの中学受験』
本書では、6名のお母さんたちの体験談のほかにも、11名の経験者に数年経ったいま、中学受験を振り返ってどう思うかについてもお話を聞いています。進んだ道で子どもたちは柔軟に、そしてたくましく道を切り開いていることがわかるはずです。中学受験ロスから抜け出すヒントが見つかるかもしれません。いますぐ読む!
『母たちの中学受験 第一志望合格は3割。納得のいく結末に必要なこと』はこちら>>
短期連載「中学受験終了組×おおたとしまさ」の対話をもっと読む





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