【発達障害の子のことばをサポートする道具】3歳からおすすめ!「わかる」「気持ちが通じ合う」と特別支援学校の先生もおすすめ!コミュニケーションを助ける「ドロップス絵カード」

子どもの発達を応援する道具を専門に扱うネットショップ「tobiraco」は今年で開店7年目。多彩なオリジナル商品と、店主がセレクトした選りすぐりの道具たちを様々取り扱っています。就学を間近に控えて、生活環境が変化する中でのお子さんのコミュニケーションに不安をいだいている保護者の方も多いのではないでしょうか。店主の平野佳代子さんに、子どものコミュニケーションを手助けする「絵カード」をご紹介いただきました。

ことばでのコミュニケーションが苦手な子のための「生活ことば」絵カード

絵カードはいろいろありますが、特別支援学校の先生イチ押しは「ドロップス絵カード」です。

「ドロップス絵カード」のドロップス(Drops)とは、The Dynamic and Resizable Open Picture Symbols の略で、言語・コミュニケーションにつまずきのある人たちのためにNPO法人ドロップレット・プロジェクトが開発したシンボルライブラリーです。

ドロップレット・プロジェクトの代表理事を務める青木高光さんは、学校法人西軽井沢学園 さやか星小学校の校長であり、障害児のコミュニケーション支援を専門として、長野県の小学校や特別支援学校で教え、教材開発やICT機器の活用に取り組んできました。独立行政法人国立特別支援教育総合研究所の特任研究員でもあります。

言葉でのコミュニケーションが苦手な子のために、物や動きなどを表したイラストで意思を伝えるツール「ドロップス」が考案されたのは10年以上前。ドロップレット・プロジェクトのサイトで、教育・医療・福祉に関する用途に限定して、基本的に無償で公開されていますので(*詳細はサイトでご確認ください)特別支援教育の現場ではとても活用度が高いツールだと思います。

子どもたちの「生活ことば」を育てるためにセレクトされた100枚

「ドロップス絵カード100」は、約2500枚ある(2024年現在)「ドロップス絵カード」の中から、とりわけ、子どもたちの「生活ことば」を育てることを指標に、監修された言語聴覚士の知念洋美さんが100のカードを厳選しました。

100枚の「生活ことば」は、次の四つに分類されています。

①  ものの名前カード(名詞)
②  比べることばカード(おおきい⇔ちいさい、うえ⇔した、など性質や位置を表すことば)
③  動作ことばカード
④  生活動作・曜日カード(おきる、ふくをきる、はをみがく、などの生活の中での動作と日曜日~土曜日までの曜日)

表面にはイラスト、裏面にはひらがなかカタカナで文字が書かれています。竹内奏子さんのイラストは、くっきりとした線とシンプルな色使いが魅力的。背景は白で余計なものが描かれていないので、わかりやすいのです。

意外と覚えにくい「動作ことば」

添付の解説書によれば、動作ことばは、名詞とちがって覚えにくいのだそうです。なぜなら、いつも同じことばの形を取らない特徴があるからです。

「すわる」を例にとると、「すわる、すわらない、すわります、すわって、すわろう…」などの活用があり、ことばの形と動作の内容が変わってきます。また、椅子に座っても、畳に正座しても、おかあさんの膝の上に乗っても、座り方がちがうにもかかわらず同じ「すわる」ということばを使います。

カードで学んだら、生活の中でおなじ言葉かけをして動作をすることで、コミュニケーションの理解が深めることが大切だそうです。

行動の見通しがつけられる「スケジュールカード」

「がっこう」→「ほうデイ」→「いえにかえる」のように順番にならべて示すことで、スケジュールカードは、1日の流れややることを理解することに役立ちます。毎日のスケジュールをカードで示すことで、見通しをもって生活することが、イレギュラーなことに対応できることにつながっていくそうです。

スケジュールが変わったときも、例えば「かいものをする」絵カードを見せながら伝えることで、子どもの中に安心感が生まれるのです。ただ、イレギュラーな時にだけ絵カードを見せるのはNGです。絵カードが不安な予告をするツールになってしまうからです。

絵カードは、子どもの心の「安心の貯金」のために使うことを心がけてください。

「言える」ことより、「わかる、通じ合う」の方が大事です

言語聴覚士の第一人者の中川信子先生もドロップス絵カードを絶賛されていて、トビラコで扱うようになったことをとても喜んでくださり、ご自身の絵カードにまつわるエピソードを教えてくださいました。

まだ、言葉を話さなかった時期のお孫さんが、冷蔵庫に貼ってあった「たつ」の絵を指さして立ち、「ねる」の絵を指さして横になることを、「ボクわかってるよ」とばかりに、ニコニコしながら何回も繰り返して見せてくれたそうです。そして、中川先生はこうもおっしゃいました。

ことばの発達は「わかるのが先、言えるのは後」です。外国語の学習も同じですよね。大人はついつい「言える」ことを求めてしまいますが、実は「わかる」「通じ合う」の方が大事。

必ずしも発語のやりとりだけがコミュニケーションではないことを教えてくれるエピソードですね。「言えないけれど、わかっている」。このことを絵カードで伝えることができれば、子どもの中に安心と自信が生まれることでしょう。

語彙が増える・生活動作とむすびつく・時間を見える化する・概念を教える~『ドロップス絵カード100』

知念洋美/監修 青木高光/考案 竹内奏子/イラスト 発行・合同出版 3歳から*100枚のカードと解説書が入っています。定価3000円+税

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教えてくれたのは

平野佳代子さん/トビラコ店主
元子育て雑誌編集者。道具で発達を支援するネットショップ「tobiraco」を運営。現場で効果のあった教材を特別支援学校の先生と商品化。商品化された教材は「トーキングゲーム」「すきなのどっち?」「見る目をかえる 自分をはげますかえるカード」「きもち.つたえる・ボード」「トライゲーム やってみたいのはどっち?」など。また医師と放課後等デイサービスとで「療育アロマ」を共同開発。「安心にまさる環境なし」をモットーに教材から生活用具まで販売。編集した書籍に、発達障害の子のためのすごい道具』(安部博志・著 小学館)、『自信を育てる発達障害の子のためのできる道具』(佐藤義竹・著 小学館)がある。

構成/HugKum編集部

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