目次 [hide]
実は身近なところにもある野生動物の痕跡「フィールドサイン」をテーマに
永瀬可純さんの作品は、「わたしが見つけた野生動物のフィールドサイン図鑑」。休日や夏休みを使って、家の近くだけでなく、時には遠出をするなどし、さまざまな場所でフィールドサインを探した様子がまとめられています。作品には、イラストやクイズを盛り込むなど、書店に並ぶ図鑑さながらの工夫も。日本の野生動物が大好きで、その深い愛情が伝わる内容でした。
――フィールドサインをどうやって知りましたか? 何歳くらいの時でしたか?
可純さん:小学校2年生のときに「よこはま動物園ズーラシア」でタヌキとアナグマを見て、大好きになりました。可愛くて一目ぼれして、運命の出会いだと思いました。
そこからいろいろな本で調べるようになって、タヌキの「ためフン(タヌキが同じ場所で繰り返しフンをする習性のことでフィールドサインのひとつ)」を知って、2年生の秋くらいから近くの市民の森とかに探しに行きました。
そのころはお母さんにカメラを借りていましたが、クリスマスプレゼントでカメラをもらってからは、自分のカメラで撮影するようになりました。

――フィールドサインはどんなところが楽しいですか?
可純さん:どこにあるのかわからないから宝探しみたいで楽しいです。遠い場所まで行くときは少し大変です。

フィールドサイン探しが、家族旅行の目的に
――誰と探しに行くことが多いのですか?
可純さんのお母さん:主に私ですが、家族旅行の際に動物園や、野生動物に会えそうなところに行くことが多いですね。奥日光に行ったり、群馬県、埼玉県に行った事もあります。
タヌキは身近にいるので近所で探しますが、例えば鹿なら野生で生息している場所をインターネットで検索して向かいます。ムササビは高尾山にいるので、探しに行ったこともあります。
――フィールドサインはすぐに見つかるのですか?
可純さん:ひとつは見つかることが多いけど、見つからないときもあるのでけっこう歩きます。
可純さんのお母さん:実は最初に興味を持ったためフンは、探していますがまだ一度も見られていないんです。
「これを探そう!」と出掛けるのですが、自然のものなので毎回ちゃんと見つかるわけじゃなく。でも足跡は雨の上がったあとを狙っていくと、見つけられることが多いです。

――作品は写真やイラスト、地図、漫画もあってとても楽しく読みました。工夫したことを教えてください。
可純さん:写真は自分で撮って、絵も自分で描いてわかりやすくなるように工夫しました。奥日光のツアーや、高尾山のビジターセンターでのガイドさんの話も入れました。

関東地方以外の場所にもフィールドサインを探しに行ってみたい
――自宅の周りにもフィールドサインはありますか?
可純さん:はい。家の周りの室外機の上にコウモリのふんがあったり、カラスの巣もよく見たりします。
――これから見つけたいな!と思っているサインはありますか?
可純さん:タイワンリスとかムササビのフィールドサインをもっと見つけたいです。タイワンリスはなんで樹皮をかじっちゃうのかわからないから気になります。
――これから探しに行ってみたい場所はありますか?
可純さん:関東地方以外の場所に行ってみたいです。

習い事よりも、本人の好きなことにお金を使ってあげたい
動物への深い興味や愛情にあふれた内容の自由研究。読む人の興味がわくような文章や写真、可愛らしいイラストも目を引きます。そんな可純さんは、普段どんなお子さんでどんな風に過ごしているのでしょうか。お母さんにもお話を聞きました。
――可純さんは普段どんなお子さんですか?
可純さんのお母さん:友だちとお話するのが好きですが、家では絵を描いたり、手話を勉強したりと、ひとりでも楽しいことを見つけるのが好きで。どこでも楽しめるのが、いいところだと思います。
絵も大好きで、紙だけでなくタブレットに「アイビスペイント」や「クリップスタジオ」というアプリを入れて描くこともあります。

――お子さんのやりたいことを応援してあげていますか?
可純さんのお母さん:そうですね。水彩画だけは準備や片付けの手間があるので「今日は無理…」と言ってしまうときもありますが(笑)、なるべくやりたいと言ったらやらせてあげたほうがいいのかなと。
小学校に入る前、習い事をいろいろやらせてみようと思い、私はダンスをやらせたかったのですが興味を持ってくれませんでした。
「何やりたい?」と聞いたら動物のことと言うので、ダンスをやめ、その代わりに動物に関する旅行などにお金を使ってあげようと思って。今はそれが当たり前になり、動物園など動物が見つかるところに行っています。
――フィールドサインを探すことはお母さんも楽しいですか?
可純さんのお母さん:楽しいですね。私はもともと樹木が好きなので、山に行ったら私は樹木を探し、娘は動物やフィールドサインを探しています。何時間でもそこにいられるので、パパと(可純さんの)妹は「まだ?」って怒ってることが多いです(笑)。
私自身は生物学を学んでいましたが、樹木を好きになったのは社会人になってから。動物は詳しくありませんでしたが、身近な領域ですので、一緒に楽しめて嬉しいなと思っています。
お母さんは制作しやすいように付箋を準備。あとは口出ししすぎないように我慢!
――自由研究に取り組む際、お母さんはどんな風にフォローしましたか?
可純さんのお母さん:2年生のときは初めての自由研究ということもあり、自分で文章を書くことに慣れておらず、私が横で「一番伝えたいことはなに?」などと聞きながら、1行ずつ書いていました。
前回それをやったおかげか、今回は何も言わなくても自分で書いていました。ここまで書けたことが嬉しかったですね。


可純さんのお母さん:でも、本番のレポート用紙に直接書いていくのは難しいだろうと思い、使えそうな付箋やシールをたくさん用意しました。付箋なら小さなスペースに書いて貼っていけるので、低学年でも作りやすいです。

可純さんのお母さん: 写真の印刷も私が行いましたが、あとは「見て!」と言われたら見てあげるという感じで。最初は時間がかかっていましたが、だんだん慣れてきたようでした。
――フォローする際に気を付けていたことはありますか?
可純さんのお母さん:「口をどこまで出すか」ですね。記録なので日付は書きなさいとは言いましたが、文章は本人が熱心に書いているので、「ん?」と思っても言わないように我慢しました。
私としては生物学的にこういうことを書いたほうがいいんじゃない?と思ったこともありますが、本人はその時に感じたことや印象に残ったことがあるから、それを残してあげたほうがいいのかなって。
――好きなことに対して、ご両親はどんなふうに関わっていますか?
可純さんのお母さん: 広がりをもっていろいろな興味につながるよう、フォローできたらいいなと思っています。動物のことで言うと、絵を描いたり、地理的な知識をつけたりと、違う分野のことにも広がっていけるように。例えば生息地に「西日本」という言葉があれば、西日本ってどこだろうと調べたり。
そして、なによりも本人の「好き」を大切にするのが大事だなと思いますね。
疑問を持ち、探求する姿が詰まった自由研究!お母さんのサポートも参考に
「これから見つけたいサインは?」と聞いたときに、可純さんが「タイワンリスがなんで樹皮をかじっちゃうのかがわからないから気になる」と答えたのがとても印象的でした。ただ動物が好き!可愛い!で終わらず、どうしてなんだろうと疑問を持って、実際に本を読んで調べたり、探しに行ったりする行動力がこの図鑑にもたっぷりと詰まっています。
お母さんの自由研究のサポートの仕方も、小学生でも制作しやすいように「付箋を用意する」というのは、マネしやすいアイデアです。また、口出ししすぎないように我慢する、というのは簡単なようでなかなか難しいこと。でも、本人がそのときに感じたことをそのときの言葉で書くことで、その子の気持ちが伝わる自由研究になるのだと実感したインタビューでした。
自由研究コンクール結果発表はこちら!

自由研究部門 最優秀賞のインタビューはこちら

取材・文/長男真理恵