【前回までの流れ】
●受験は偏差値だけでは測れない。大切なのは戦略と準備
●「悔しい」という気持ちこそが、次の成長へのエネルギーになる
● 失敗から学んだことを、無駄にしてはいけない
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「合格請負人」から教わる《受験戦略》! しかし、努力する息子を大きな挫折が襲う
不合格によって息子のやる気スイッチが入った
第一志望校の思考力型入試で「不合格」となってから、息子に大きな変化が見られるようになりました。
不合格通知を受け取った日は、さすがに落ち込んでベッドに潜り込んで寝てしまいましたが…. 翌日の朝、私が5時に起きた時には、すでに息子は机に向かって勉強をしていました。
これまでの息子は、やるべきことを言われてから渋々始める「受け身スタイル」。しかし、不合格の悔しさが息子のやる気に火がつき、それ以降はまるで同じ人間とは思えない変貌を遂げました。
それまでは「早く起きなさい!」とか「先生から言われたことはできた?」「塾の宿題はできてる?」と私が事細かに指図をするのが常でした。しかし、不合格通知を受けた後は、私がとやかくいう前に、行動を起こすようになったのです。
起床したらすぐに源先生から言われた課題を片付け、「終わりました」と報告。食事をした後はすぐに学校へ。学校から帰ってきたら塾に向かい、塾から帰宅後も寸暇を惜しんで机に向かうようになりました。以前の息子であれば、大概三日坊主で終わるところですが、10日を過ぎても変わることはありませんでした。
我が子ながら、これが同じ人間なのかと見まごうばかりの変わりように驚いたものです。「これがスイッチが入るということなのか…」としみじみ感じ入りました。
「シン・受験生」に生まれ変わる
息子の変化は、源先生の指導に対しても表れるようになります。
不合格の洗礼を受けるまでは、先生が算数の解き方を指導しようとすると、「でも、塾ではこの解き方でやるように言われてるよ」と言い返していました。ところが、今では一言も口答えせず、「はい!」と素直に従うように変わっていました。
また、「書いて覚えなさい、手を動かしなさい」と口うるさく言われても、「面倒くさい」という理由で手を抜いていましたが、先生の忠告を守るようになりました。その結果、息子の身の回りにある、あらゆる計算用紙の裏表は、ことごとく学習の跡が見られるようになったのです。
そんな姿を見て、源先生は「やっとスイッチが入りましたね。息子さんにとっては、不合格も必要な洗礼だったのかもしれませんね」と感慨深げにおっしゃいました。
息子は「言われる前にやるのはこんなにも気持ちいいのか」と実感したようです。そんな姿を見て、私も「シン・受験生になってくれた」と心打たれました。

初めての合格
息子はシン・受験生になってはくれましたが、母親としての本音としては(スイッチが入るのが遅すぎる。もう半年早くにスイッチが入ってくれればよかったのに…)と思っていました。
私にとって息子の中学受験の主な目的は、「息子を全寮制の中学校に入学させて、自立を目指すこと」。もし第一志望校に落ちたら、この目的が果たせない。そのために、念のため第2候補の全寮制学校も受験することにしました。
第2候補といえども、偏差値は50~55。これまでの模試の結果を考えると、息子にはレベルの高い学校であり、合格するのは容易なことではありません。
源先生には私の思いを話し、「なんとか合格するよう、ご支援ください」と深く頭を下げました。源先生は私の気持ちを汲んで、次の日にはすぐに受験する学校のホームページから過去3年分の入試問題をダウンロード。息子には「最低でも2周は解くように」と指示をしました。試験までの1週間、小学校は休み、息子は源先生の指導のもと、過去問に食らいつくようにして取り組んでいました。
幸いにして、12月中旬の第2候補の入学試験は、主要都市で行われたため、自宅から1時間ほどの場所で受験することができました。
第一志望の入試とは違って、息子からはひりひりとしたプレッシャーのようなものは感じませんでした。源先生と過去問を解いてきただけに、気持ち的にも余裕があったようです。もう1つ、大きな理由は、自分が行きたい学校の受験ではなかったことでしょう。「もし落ちたとしてもショックは受けない」という気持ちがあったようです。
息子に伝えるか否か…
受験から5日後、ついに合格発表の日を迎えました。
メールで通知されたURLをクリックして結果を確認すると…、「合格」の表記にまずはホッとしました。これで全寮制の中学に入れて、自立への道を歩ませることができると安心したのです。それと同時に、この結果を息子に知らせるべきか否か、迷い始めました。
というのも、息子の性格上、第2候補の学校とはいえ「受かった」と知れば、きっと気が抜けるに違いありません。せっかくスイッチが入って、自主的に試験勉強に取り組み始めたのに、「もう受験は終わりだ!」と思うことを私は恐れました。
そこで、源先生とも相談し、「第一志望校の試験が終わるまでは、合格したことは息子には伝えない」ことにしました。しかしながら、息子は試験結果をしつこく聞いてきました。
合格発表の日、学校から帰るなり、「合格発表を見る、すぐに見せて」と私に詰め寄ってきました。私は冷静に、「ダメだったら、あなたのことだから落ち込むでしょ。受かっていたら『もう受験勉強しなくていいんだ!』と安心してしまうんじゃない? 早く楽になりたいという気持ちがあるんじゃないの?」と言って、息子の顔を覗き込みました。
「それでも気になるよ!」と息子は食い下がる。「だったら、第一志望の受験が終わったら一緒に見ることにしない? それならいいでしょう。どうせ、あなたが行きたい学校じゃないでしょ? とにかく第一志望の受験が終わるまでは、源先生と一緒に頑張りなさい」と言って、息子の肩をポンと叩きました。
この時点で第一志望校の受験日までは、あと3週間しか残されていませんでした。
本番前夜
12月下旬ともなれば、街はクリスマスムード一色。しかし、我が家には年末の慌ただしさも、お正月もありませんでした。
例年なら、「クリスマスプレゼント、何にしようかな?」とか「ばぁばの家に行って、みんなで遊びたい」なんて言っていた息子が、今年はそんなことを一切口にしませんでした。この頃になると、第一志望の受験に向けた勉強に特化するため、集合型の塾も休み、まるで人が変わったように、ひたすら勉強に打ち込んでいました。
源先生の指導も、最終段階に突入。
あらゆる手段を用いて、第一志望校の問題傾向を探り出し、対策を講じてくれました。具体的には、過去5年分の4教科の入試問題を入手し、その情報をもとに先生が新たな問題を毎日作成してくれました。過去問そのものも、忘れた頃を見計らって5年分を3周は行ったようです。そうした先生の支援は、試験の前日まで続きました。
試験会場は自宅から遠方にあるため、私と息子は前日の早朝に家を出ました。宿泊先のホテルにチェックインしたのは午後3時。部屋に入ると同時に、息子は源先生に電話をかけて、「まだ不安なところがあるので、そこをもう一度教えてください」とお願いし、リモートで授業を受けました。夕食もそこそこに授業は11時頃まで続きました。
翌日の試験が気になった私は「もう遅いから、そろそろ寝たほうがいいのでは…?」と言うと、源先生が「そうですね。それでは明日の6時に待ってるからね」と約束し、ようやく床についたのです。
今回の学びと葛藤《まとめ》
●「不合格」は初めて子どもに突きつけられる、重い現実。「悔しい」「絶対に第一志望に入りたい」という気持ちが、息子の本当のやる気を引き出した。
● 自分で考え、自分で行動することの大切さ。 受け身から自主的な学習へと変化し、息子は“シン・受験生”へ。
● 合格の知らせは、伝えるタイミングが鍵。 成長の機会を逃さないためにも、親の判断が試される。
● 受験は戦略と準備がすべて。 受験校への徹底した対策こそが、合格への最短ルート。
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執筆/清宮ゆう子