中学受験… 本気でするの?
子育てっていうのは、本当に大変ですよね…。これは、親になった誰しもが、つくづく思うこと。実感としては「何一つ、思い通りにならないのが子育て!」とさえ思ったりも…。仕事と家事に追われ、あっという間に1日は終わり、自分の時間なんてほとんど持てない。
そんな大変な子育て生活なのに、子どもが9歳になる頃には“親の受験“とも称される時期が次第に近付いてきます。親子してキリキリと胃の痛む、骨身を削るような思いをする中学受験にチャレンジするご家庭が年々増えているようです。
2024年、1都3県を中心とした私立中学などの受験率は、過去最高を更新。世の中少子化が進んでいるというのに、中学受験熱は高まっているようです。その中の一人にうちの息子も含まれていました…。
しかし、実は息子が小学3年生の2月になるまで、中学受験をさせようだなんて、これっぽっちも考えていませんでした。息子は成長が早いほうでもないですし、勉強も好きなほうではない。母親としては、明るくのびのびと育ってくれればいいと思っていました。
ですが、ひょんなことから、息子が「ママ、僕、塾に行きたいんだけど」と言いだしたのです。そんな話題は家庭の中で出たことがなかったので、私は唖然としました。「…どうして塾に行きたいの?」と半信半疑で尋ねる私。息子のこたえは「友だちが塾に通うから、もう遊べないって言われたんだ」とのこと。
息子が通う小学校は、中学受験をするご家庭が多いことは聞いていました。学年によっては、1クラスの半分以上の生徒が中学受験をする環境だったのです。そのため、小学3年生の2月には、ほとんどの子どもが塾へ通うことになります。
「塾っていうのは、友だちと遊びに行くところじゃないのよ。中学受験をしに行くところ。あなた、わかってる?」と私が言うと、「え、そうなの?」と目を丸くする息子。
こんなやりとりを3回ほど繰り返して、「中学受験をするなら、行ってみてもいいわよ」と言ったら、「うん、わかった。やったー!」と息子は満面の笑みを浮かべて頷きました。
結局、この時のことは、後々まで尾を引くことになります。この時の息子の「わかった」が「わかっていなかった」ことに気づくのは3年後の小学6年生の夏に発覚するのです……。
全国的に高まる中学受験熱
少子化が進んでいても、首都圏を中心に中学受験熱は高まっているようです。2024年の首都圏私立・国立中学の受験者数は微減したものの、52,400人と過去2番目に多く、受験率は過去最高の18.12%を記録しました。
この背景には、教育に対する関心の高まりや、社会の不安定さを感じる保護者が安定した教育を求めていることなどが影響しているようです。
私がシングルマザーになった経緯
ところで、実をいうと私はシングルマザー。日本における母子世帯数はおよそ1,195,000世帯(参照:一般社団法人日本シングルマザー支援協会)あるようで、この数字からするとさほど珍しいことではないようです。
そもそも私がシングルマザーになった経緯を、少しお話しさせていただきます。
元夫は私より5歳年下、結婚する前から私に子どものように甘えるところがあって、それがうれしくもあり、楽しい時期もあったのですが…。いざ本物の子どもが生まれてくると、実に勝手なもので煩わしく感じ始めました。「育児で大変なんだから、甘えるのはやめて!」と言って、心の中では「早く父親になってよ」とつぶやいていました。
元夫に対する気持ちが徐々に変化する中で、子どもが11か月の時に職場に復帰。私の子どもはとっても手のかかる子で保育園に慣れるまでが一苦労、慣れたら慣れたですぐに病気をもらってくる。そこに追い討ちをかけるように仕事は忙しくなるばかりで、心身ともにクタクタ、疲弊していきました。
それでも甘えてくる夫に「もう無理! 大人の面倒まで見切れない!」となり、私は30歳、子どもが2歳になる前に離婚しました。最後まで元夫は、私の求めていた父親にはなってくれませんでした。幸いにして会社員としての収入は比較的安定していたので、「子どもと2人ならなんとかなる」と思っていました。
望まぬ挑戦の第一歩が始まってしまった…
そもそも、中学受験などまったく考えもしていなかった親子ですから、その過程において様々な思い違いや勘違い、予想もしなかったことが起こることに…。そんなエピソードをご紹介します。
息子の「ママ、僕塾に行く」という言葉から、望んでもいない中学受験の渦に巻き込まれていく、私…。とりあえず息子が行きたいと言った塾に連れて行くことに。到着するやいなや「入塾のためのテストを受けていただきます」と言われ、この時点で息子は「嫌だ」と言うと思っていました。しかし、嫌がる素振りも見せず、素直にテストを受けに別室へ。
明るい表情でテストに向かう息子の姿を見て、何か嫌な予感がしました。とはいえ、入塾テストには高いハードルが設けられていると聞いていたので、「基礎学力の低い息子は、進学塾に入るのは無理だろう」と高を括っていたのです。
後日、塾から電話がかかってきました。その内容は「残念ながら入塾を認める点数には達していませんでした」というもので、「やっぱり予想通りね…」と現実を受け止めました。ところが、その後が違っていたのです。「ですが…、息子さんは正答率5%の算数の問題が解けていました。見込みがあるので、入塾を許可します」と…。
このことが、母と息子の勘違いの始まりだったのです。私も母親ですから、塾の先生から「見込みがある」と言われたら、舞い上がってしまいました。息子は息子でニンマリと笑みを浮かべながら、「ママ、僕はやればできるんだよ」と胸を張って見せたのです。その後、同学年の子たちに数週間遅れて、息子も入塾を果たすことに。
ここから、先の見えぬ長い中学受験へ、ひたすら投資する日々が始まりました。このとき、ただ一つ収穫があるとするならば、まぐれで難問を解き明かした息子の運の強さでしょう。これは、後々になって実感する出来事につながります。
実際に塾に通い始めて
息子は楽しげに塾に通い始めました。一方、私にとっては色々とやらねばならないことが増えると悟りました。たとえば、送り迎えや塾から求められることへの対応、学習への向き合い方などなど。
「親の受験」というのは、このことを言っていたのかとわかりました。私が苦労した諸々のエピソードと全寮制中高一貫校を選択した理由は、次回以降に紹介いたします。
今回の学びと葛藤《まとめ》
● 2024年の中学受験率は過去最高に
● 受験の予定はなくとも、友達につられて塾に行きたがるケースも
● 塾に行くと決めたときから、思わぬ流れに向かう覚悟も…?
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息子による手記【偏差値33からの逆転中学受験】はこちら
執筆/清宮ゆう子