梅雨どきは発達障害のお子さんの機嫌の悪さの相談が学校の先生や保護者から寄せられることが増える時期です。実際、私もこの時期の発達障害のお子さんを見ていると、イライラやぐずぐずする子が増える印象があります。ひとことで季節の代わり目ということで片づけるのは簡単ですが、発達障害の子にはもう少し違った印象を持つのです。
季節の変わり目に発達障害の子どもの「イライラ」が増える理由

暑さや湿度といったところでは、7月や8月の方が気温も高くなりしんどさも増すはずなのですが、その時期の方が子どもたちも落ち着いているのです。当初は「夏休み」だからかとも思いましたが、不登校の子も同じでした。
どうやらこの時期のイライラは気温や湿度に適応するための「暑熱順化」の困難さが影響しているのではないかと思います。
一般的に「暑熱順化」は発汗量増加・汗中の塩分低下・皮膚血流増大・心拍数抑制が安定するまでに7~10日ほど(寒冷順化は~14日ほど)要すると言われています。しかし、発達障害の特性の一つ「切り替えの悪さ」はこの暑熱順化にも影響し「イライラしやすい」時期が長引き、周囲の大人が困るのだと感じます。
このような場合、まず子どもを休ませることが重要です。
季節変動が引き起こす“隠れ疲労”を見逃さずに対処することが大切です

私が放課後等デイサービスをやっていた当時、この時期になると来所時からイライラし癇癪を起こしながら入ってくる子がいました。その子は活動中にいきなり寝落ちすることもあり、スタッフを驚かせることもありました。
おそらく彼女は1日の中での寒暖差、湿度の変化が激しいと、身体がついていけず、いつも以上に疲れやすいのですが、言語発達が未熟でうまく言葉にすることができないのです。
リセットルームで、情報処理能力に負荷のかかる感覚刺激を極力少なく
感覚情報処理にはエネルギーが必要です。イライラしている場合には、処理しなくてはいけない情報を減らしてあげることです。
私が運営していた放課後デイサービスでは、視覚、触覚、聴覚など情報処理能力に負荷のかかるものをできるだけ取り除くために、リセットルーム(何もない6畳の部屋、毛布や軽い掛け布団あり、室温24~26度)を提供していました。白い壁の何もない部屋に肌触りの良い無地の毛布とベッドだけです。リセットルームにいる時間は子どもそれぞれ違います。子どもによっては毛布を頭からかぶる子もいますし、毛布を丸めて抱きかかえる子もいますし、横になって顔をうずめる子もいます。対応のため、部屋の外にはスタッフを一人待機させていました。
快・不快で突然行動を起こすことがあることを理解して

リセットルームに入るときは、「休憩は、3分にする?5分にする?」と選択肢を与えます。答えられない場合は、「じゃあ、5分したら声かけるね、そのときにもう少し休憩したかったら教えてね」と言い部屋の外で待機し、5分たったら、戻るか、休憩を延長するかの声掛けをします。
子どものそのときの状態によって時間を延長するか、部屋に戻るかはさまざまです。理解力のある子の場合、自分は気持ちの切り替えに5分必要だな、7分ぐらい必要だなとわかるようになっていきます。
落ち着いているときに「イライラしたり、嫌だなと思ったらリセットルームに移動しよう」と事前説明し、練習を繰り返すことで、高学年に差し掛かる頃には、スタッフに「休憩したいです」と自分で言えるようになり、切り替えができるようになった子もいます。
発達障害の子は感情の分化も未成熟なので自分の感情を理解できないことも多いのです。快・不快のみで動き出すので、その行動は大人には唐突に感じますが、本人はこの段階では自覚できません。また、感情の切り替えの悪さは、活動だけでなく、気候や気圧、温度や湿度など自然界のことにも影響されるケースも少なくないということを周囲の大人は理解し、休憩することを認めてほしいと思います。
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教えてくれたのは

健康運動指導士、介護福祉士、保育士、公認心理師。株式会社スプレンドーレ代表。
YouTubeで「子どもの対応おたすけチャンネルMamma mia」を配信中